国内ではYahoo!が展開する「Yahoo!知恵袋」が生まれたことによって、ユーザー同士の知識がネット上で共有され、情報収集・課題の解決(質問に対する回答)が容易になった。しかし匿名性が高く、誰でも情報発信できるがゆえに、情報が溢れ返り、それらを精査するリテラシーが問われているという一面もある。

海外発の実名制Q&Aサービスを展開するユニコーン企業が、昨年日本に上陸したのはご存知だろうか。世界中でサービス展開している同社が、新たな機能の提供を発表した。

同社が世界各地で展開している知識共有プラットフォーム「Quora (クォーラ)」の日本語版の『質問受付機能』が提供開始された。

各分野の専門家に質問可能。回答はネット上に知識として蓄積

Quoraは「世界中の知識を共有し、その知識を広め深めること」を使命とし、2010年より英語でサービスを開始した。2016年末より多言語での提供を始め、昨年11月にはアジア初の言語として日本語版をリリースし、以降順調に拡大している。Quora日本語版上の回答数は2018年1月時点から5倍となり、毎月20%以上増加し続けているという。

Quoraは通常AIの技術を用い、質問者と回答者のマッチングを行っているが、今回、ユーザーが能動的に自身の得意分野について回答する機会、および質問できる機会を拡大し、さらなる知識の共有を推進することを目的に、『質問受付機能』の提供を開始した。

質問受付は誰でも、どのようなトピックにおいても実施可能だ。他のユーザーから質問を受け取った後、好きな質問を選び、回答を行うことができる。回答へのリクエスト数も見ることができるため、ユーザーがどの質問に一番興味を持っているかも事前に知ることができる。

またこの『質問受付機能』によって書かれた回答は、他のQuoraの回答と同じように、ネット上で永遠にアクセス可能な知識として蓄積され、参照できるのも特徴だ。

現在Quora日本語版では「モバツイ」の生みの親であるBASE株式会社 取締役CTOの藤川真一氏や、内閣府 情報化参与 CIO補佐官を務める楠正憲氏などが参加しているが、今回新たに追加される質問受付機能を使い、宇宙、古代エジプト、政治、経営学、AIなど様々な分野の専門家も順次参加予定である。ユーザーは専門家のプロフィールにアクセスすることで質問を投稿することができる。

参加予定の主な専門家と質問受付トピックは以下の通り。

  • 宇宙飛行士 野口聡一氏 【宇宙と宇宙飛行士】
    2005年スペースシャトルSTS-114に搭乗、日本人として初めて国際宇宙ステーション(ISS)での船外活動を実施した。
  • エジプト考古学者 河江肖剰氏 【エジプトのピラミッドならびに古代エジプト】
    名古屋大学大学院 文学研究科附属 人類文化遺産テクスト学研究センター共同研究員。米国古代エジプト調査協会調査メンバー。
  • 東京都議会議員 おときた駿氏 【都政について】
    政治経済学部を卒業後、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンにて、外資系化粧品「ゲラン」の営業、マーケティングを担当。現在東京都議会議員2期目である。
  • 株式会社ドワンゴ ドワンゴ人工知能研究所所長 山川宏氏【全脳アーキテクチャ+人口知能と社会、科学技術、クリエイティビティ】
    東京大学大学院 工学系研究科 電子工学専攻 博士課程修了(工学博士)。 株式会社ドワンゴ ドワンゴ人工知能研究所所長、NPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(WBAI)代表、電気通信大学大学院 情報システム学研究科客員教授、玉川大学脳科学研究所 特別研究員など。専門は人工知能。
  • デジタルゲームのAI開発者 三宅 陽一郎氏【AIと人の将来、AIとゲーム、AIと仕事、AIの感情、AIの作り方】
    2004年よりデジタルゲームにおける人工知能の開発・研究に従事。10年以上に渡りゲームにおける人工知能開発の第一線で活躍している。
  • グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長(英語MBA)中村知哉氏【日本的経営・志】
    一橋大学社会学部卒業。米国ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。グロービス経営大学院英語 MBA プログラムの責任者として、顧客企業にて数多くのグローバル研修を手掛ける。

Quora創業者兼CEOアダム・ディアンジェロ氏は次のように述べている。

「Quoraはグローバルの月間ユニークビジター数が2億人を超えるまでに成長しました。今回の新たな機能の追加により、ユーザー体験がさらに向上します。日本のより多くの方々にQuoraに参加していただき、知識を共有し、生活に役立たせていただければと願っております」

各分野の専門家に質問可能。回答はネット上に知識として蓄積

Quoraは、あらゆるトピックについて質問することができ、全ての質問は、その質問の回答に適した人へ自動的に振り分けられる。各ユーザーアカウントは、Quora内で質問と回答の書き込み、トピックや人のフォローなど、利用を重ねるたびに最適化されていく。

また、回答者のクオリティ、コミュニティの他のメンバーから得られるフィードバック、信頼性を保証する製品の特徴に基づき、質の高い回答を担保。加えて、本名を使用するという基本方針も、回答への信頼性を高めることに繋がっているのだ。

さらに、基本方針として、「いつも思いやりと敬意を」という規約の下、礼節を持ってQuoraを利用するようユーザーの方に呼びかけている。

システム上でもこの方針をバックアップしており、機械学習、自然言語処理、パターン照合の技術を利用して、スパムや、盗用、トローリング(荒らし行為)といったユーザー体験に悪影響を与える事柄を検出・除去している。

Quora日本語版への新規登録はhttps://jp.quora.com、またはQuoraモバイルアプリから可能だ。

インセンティブがもらえるQ&A サービスも

他の似たサービス例としては、株式会社ストライドが提供している専門家に聞ける、稼げるQ&Aアプリ「Sophia(ソフィア)」がある。

これは、主にビジネスにおいて専門性を持つ識者に質問をしつつ、その質問が皆の役に立てばインセンティブが返ってくるというスマホアプリだ。最初はiOSアプリのみの提供となり、サービスの仕組みは中国の知乎などに導入されている盗み聴きモデルを参考にしているという。

使い方は、ストアからアプリをダウンロードする。そして、質問し、回答をもらい、インセンティブをもらうという単純なものである。

このインセンティブとは、質問の閲覧数が多いほど質問者と回答者それぞれに換金可能なコインのボーナスが発生する。コインは簡単に確認、換金することができる。

同社では、以下のシーンでの使用を想定している。

朝、通勤電車で仕事のインプットとして
昼、仕事中に分からないことがあった時に
夜、ネットサーフィンしていた時間に気軽に見てみる

実名での知識共有で存在意義を高める

ネット上で容易に知識を共有できる時代になったが、「Yahoo!知恵袋」に代表されるように匿名性が高く、そのため、情報の信頼性には問題が多い。ちょっとした参照には適しているが、ユーザーにとって果たしてどこまで実用性があるかは疑問である。また、匿名であるがゆえに、なかには、質問者に敵意を示すようないわゆる「荒らし」行為も横行しているのが現状だ。

しかし、それを実名で、しかも専門家となれば、自ずと信頼性や実用性も飛躍的に向上し、ユーザーにとって大きなメリットをもたらしてくれる。今後、ネットでの情報収集がユーザーにとって快適なものになる一助となるサービスへなっていけるかどうか、期待したいところだ。

img:PR TIMES,Quora