社員の生産性向上のため、健康管理が求められるようになってきた現代、昼寝が推奨されている企業があることをご存知だろうか。国内ではGMOインターネットグループ、世界ではグーグルやナイキなど、名だたる企業が社員への昼寝促進の施策を導入し、社員のメンタルヘルスケアに力を入れている。

このように世界的に健康経営への意識が高まる中、政府は従業員への支援ツールに補助金を出すことを発表した。株式会社O:は、経済産業省が推進するサービス等生産性向上IT導入支援事業」において「IT導入支援事業者」に認定され、日本初のスマートフォンとブラウザによる睡眠コーチング&分析サービス「O:SLEEP」がITツールとして登録されたと発表した。

スマホとブラウザによる睡眠コーチング&分析サービス

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者が自社の課題やニーズに合ったITツール(ソフトウエア、サービスなど)を導入する経費の一部を補助することで、中小企業・小規模事業者の業務効率化・売上アップをサポートするもの。

今回、IT導入補助金対象となった「O:SLEEP」は、日本初のスマートフォンとブラウザによる睡眠コーチング&分析サービスだ。

スマホ経由で従業員に睡眠コーチングを実施し、ブラウザの管理システムではアプリから取得したデータをもとに、生産性の低下度合・損失コストやメンタルヘルス不調状態を可視化し、組織の問題点/改善点を抽出、改善施策を提示することで企業を支援する。

「O:SLEEP」は1ユーザーIDあたり、月額980円(税別、別途管理画面費用発生)から利用可能で、2018年3月18日の「睡眠の日」にリリースされた。

6月1日より、運輸業界(バス・タクシー・ドライバー)にて施行される『睡眠情報の記録の義務化』を支援するため、iPhoneのみで睡眠状況を自動取得・記録し「睡眠にリスクを抱えている運転手や管理者」を直接支援、安全運転を促す機能を追加した。

一部の運輸系企業では運転手の睡眠状況管理を口頭で行なっている、現状では運転手が自身の睡眠時間を把握・記憶できていない。また、虚偽報告が行われうる様子も散見されるように、口頭管理のみでは「睡眠不足に起因する事故防止」の根本的な対策になっていないと言える。これに対し、「O:SLEEP」は「客観的な睡眠状態把握」が可能となる。

今後、公的な規制がかかると考えられる『睡眠情報の記録と管理』は目先の対策(口頭)だけで終わらせることなく、具体的な対策までを早期から行い、現場に「睡眠の重要性」「睡眠と事故の関係」を啓発していく方針だ。

ビジネスパーソンの13.8%が“睡眠エリート”

実はあまり知られていないかもしれないが、日本人の睡眠時間は世界的にみても短いという。2014年に経済協力開発機構(OECD)が世界29カ国を対象に15~64歳の国民平均睡眠時間では、韓国に次いで世界で2番目に短かかった。

では、睡眠における改革を意識している人としていない人では、どれだけの差が出ているのだろうか。レイコップ・ジャパン株式会社が日本のビジネスパーソン1,000人に実施した「働き方改革と睡眠」に関する意識と実態調査結果によると、ビジネスパーソンの13.8%が睡眠の質にこだわり、何らかの対策を実践している睡眠意識の高い“睡眠エリート”であったという。

そして、この約3割が、睡眠の質を高めるためには寝るときの「温度」(29.0%)に配慮していると回答していたのである。

これからの睡眠改善は寝具や照明はもちろん、温度にも注目していく必要がありそうだ。

この調査結果からは、働き方改革と睡眠時間では、働き方改革によって睡眠の量に差が出たことが判明している。働き方改革を実施している層では、睡眠満足度は向上しており、結果として仕事のパフォーマンスにも良い影響を与えていたことがわかったのだ。

そして、仕事に対する“集中力”、“記憶力”、“注意力”、“モチベーション・積極性”、“充実感”など、仕事に対するパフォーマンスや意欲が未実践層よりも総じて高いのが特徴としてみられた。

また働き方改革と睡眠の質の関係では、残念ながら多くの人が睡眠の質の改善にはいたっていないことが判明したが、82.4%のビジネスパーソンが現在の睡眠環境を改善したいと考えているようだ。

「健康経営」に最も重要な睡眠改善

厚労省eヘルスネットによると、「不眠症は国民病」と呼ばれているという。成人の5人に1人が不眠で悩んでいるデータがある(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-001.html)。また、睡眠状態は従業員の「心の健康」や生活習慣病に強く関わっている。

また、前述したように、睡眠問題は生産性低下の大きな要因の1つでもある。経済産業省が発表した「企業の「健康経営」ガイドブック ~連携・協働による健康づくりのススメ~ (改訂第1版)」によると、企業の健康関連総コストの割合は、従業員の生産性低下が約78%(1人あたり56.5万円/年の損失)となっており、睡眠やメンタルが特に強く影響を与えていることがわかっている。

このように、睡眠問題改善は「健康経営」の最も重要な課題と言える。「O:SLEEP」がビジネスパーソンの睡眠改善にどこまで寄与できるかも注目したいところだが、企業ごとに働き方改革の目的をしっかりと定義した上で、社員の生産性を向上させるための改革を怠らないということを推進するべきかもしれない。

img: PR TIMES