フリーランスのような働き方を選択するビジネスパーソンが増えつつある現代、「副業」がこれからの働き方でのキーワードとなるようになっていくのかもしれない。政府が副業を原則禁止から原則容認という形に転換したため、2017年は副業解禁元年となった。

では、実際の副業の状況はどうなっているのだろうか。インターネット広告事業を展開する株式会社ファンコミュニケーションズは、運営する国内最大級のアフィリエイトサービス「A8.net(エーハチネット)」のメディア会員(アフィリエイト参加者)1,040名を対象に、副業に関する実態調査を実施した。

今回はこの調査結果をもとに、「副業」の実態をご紹介する。

全国の副業OK企業は前年比3ポイント増の45%

まず、所属している企業の副業可否を聞いた。その結果、所属企業が副業OKと回答した会社員は全国平均では45%で昨年末の前回調査から3ポイント増だった。

地域別では首都圏の前回比9ポイント増、中部地方の10ポイント増を中心に関東近県のOKの比率が大きく伸びたのに対し、中国・四国地方は9ポイント減、北海道・東北地方や九州・沖縄地方は2ポイント減と逆に下がるなど、地域差が浮き彫りとなったという。

近畿地方は前回とあまり変わらなかったが引き続き最も副業に厳しい結果となった。東日本エリアでは「知らない・わからない」が全体的に減っており、会社員の就業規則確認や把握意識が高まったか、あるいは企業の副業規定の明文化が進んだ様子がうかがえるとしている。

このように半年前と比較し、就業規則把握・企業の副業規定明文化が進んだ実態が明らかになっている。しかし、西日本は副業解禁が後退している。これは、東西の文化の違い、つまり仕事ということをどうとらえているかの違いが影響しているのではないだろうか。

また、アフィリエイト以外にもネット副業をしている人は全体の36%で、64%の人がアフィリエイトに一本化していた。特にアフィリエイト歴ごとで見ると1年未満の人は70%がアフィリエイトのみに取り組んでおり、元手も必要なく手軽に始めやすいことから初めてのネット副業の選択肢に選ばれやすいことが予想されるとしている。

他の副業で人気だったのはアフィリエイトに求められるのと近いスキルセットで取り組むことが出来るクラウドソーシング系。シェアリングエコノミー系は心理的ハードルまたは資本の問題からか取り組む人は数名に留まった。

いずれにしても、ネット副業が環境的にもコスト面でも取り組みやすいことがわかる。

次にそのネット副業にかける一日の平均作業時間を聞いた。その結果、1時間未満が61%を占めた。使用デバイスではWindows PCが安定の1位を獲得した。

2位と3位はMac PCやタブレットを大きく引き離してiPhoneとAndroidのスマートフォンが続き、その他OSも含めたスマートフォンのみでネット副業する人(PCやタブレット不使用)が21%にのぼるなど、隙間時間に手近なデバイスで“プチ副業”に取り組む人が多く見られたとしている。


使用しているクラウドサービスについて聞いたところ、何かしらのクラウドサービスを使用していると回答した人は52%で、最も使われていたのはアフィリエイトサイトの構築先としても多く利用されるレンタルサーバーで28.3%だった。

利用者として使ったことのある生活関連サービス・製品ではネットスーパーと食材宅配サービスの利用率が高く、生鮮食品を含め食材はネットで購入している人が多かった。家事代行サービスや時短家電の利用率はあまり高くなく、家事は自分でやる人が多いことがわかった。

学びたいのは「語学」、やりたい内容は「クリエイティブ系」

スキルアップのために既に学習をしている人は32%、これから学びたいことがある人は66%だった。

「学習中」、「今後やりたい」の両方で1位を獲得したのは語学だった。今後やりたい内容としては次いでイラストや写真、ライティングなどの「クリエイティブ系」と「プログラミング系」が並んだ。

方法としては「学習中」、「今後やりたい」いずれも「通信・eラーニング・独学」の人気が「スクール・教育機関」の約2倍となった。

投資・資産運用を聞いたところ、投資・資産運用をしている人は53%だった。1位の株式投資に続き2位と3位は僅差で保険、仮想通貨がランクインした。仮想通貨は同じように最近注目されるようになったiDeCoやソーシャルレンディングが伸び悩んだのに対し、古くからある投資信託やFXも上回る人気を獲得した結果となった。

最後に、人生100年時代において仕事を選ぶ上で最も大切にしたいことを聞いたところ、1位が楽しさで24.9%、2位が収入額で21.5%、3位が安定性で18.6%、4位が得意分野・適性で12.7%、5位がやりがいで11.5%、6位が人間関係で10.8%と僅差になった。

「楽しさ」が「収入」を上回っており、この結果からも近年の働き方への意識が変化していることがみてとれる。

この質問の選択理由は以下の通り。

  1. 「楽しさ」を選んだ理由
    ・昔と違い機械でさまざまなことが出来る時代になったので、せっかくなら楽しいことを仕事にしたい(30~34歳/その他職業/女性/北海道)
    ・お金は稼げば取り戻せるが時間は有限。楽しいと思えることに時間を割きたい(45~49歳/自営業/男性/兵庫県)
  2. 「収入額」を選んだ理由
    ・1人ではなく背負うものができると、生活に1番大事なものだと感じる(30~34歳/会社員/男性/静岡県)
    ・ある程度の収入があってこそ生活も成り立ち、人間らしく楽しさも感じて生きていける(25~29歳/会社員/女性/神奈川県)
  3. 「安定性」を選んだ理由
    ・何があるかわからないからこそ、少しでも安定が必要(30~34歳/会社員/男性/千葉県)
    ・今現在だと収入とも思うが、100年と考えるとやはり安定していたほうがいい(25~29歳/主婦/女性/福岡県)
  4. 「得意分野・適性」を選んだ理由
    ・適性でない職業で身をすり減らす働き方はもうやめるべきだと思う。時代に合っていない(30~34歳/自営業/男性/埼玉県)
    ・収入は追えば際限なく、やりがいを求めるのも精神的にきつい。得意分野でのんびりと働きながら暮らせれば楽しいと感じられる(55~59歳/その他職業/女性/東京都)
  5. 「やりがい」を選んだ理由
    ・やりがいがあれば楽しさと大変さのバランスが取れ、継続した収入につながる(40~44歳/会社員/女性/大阪府)
    ・仕事=社会とどう関わるかということだから(45~49歳/会社員/男性/東京都)
  6. 「人間関係」を選んだ理由
    ・人との繋がりで、人生は変わると思うから(35~39歳/会社員/女性/福岡県)
    ・他のことは自分の努力や我慢で改善が見込めるが、人間関係はそうはいかない(35~39歳/会社員/男性/千葉県)

副業解禁企業は約4年で2倍以上に

ここで、別の調査をご紹介しよう。プロフェッショナル人材の副業紹介サービス「プロの副業」が行った副業に関する意識調査である。この調査対象はマーケティング・広告・デジタル・PR業界で働く113名(20歳以上)で、実際に同社エージェントが直接会って調査したものになっているため、かなりリアルな回答が得られているということだ。

それによると、2018年2月現在、36.3%が「現在働いている企業では副業が認められている」と回答しており、2014年に比べ、副業を解禁している企業は着実に増加傾向にあり、約4年で2倍以上に達している。

企業の「副業」に関する意識が大きく変化してきている結果だろう。ただし、現在でも「副業NG」の企業は51.3%と半分以上を占めており、旧来の考え方を変えない企業もまだ多い。

企業の側に立ってみると、確かに副業に集中されて本業がおろそかになってしまっては困る、という考え方が主流なのだろう。しかしそれは、裏を返せば本業でのパフォーマンスに影響が出なければ副業をしても構わないと言っているようなものだ。最近では副業ができるほどの能力や余裕がなければ、本業で成果を出すことも難しいと考える企業もあるため、まさに今は過渡期といったところだ。

では実際に副業を行っている人はどのくらいいるのか。副業が認められている企業で、実際に副業をしている人の割合は26.9%にとどまっている。副業を認めている企業であったとしても、いまだに多くの人が実行には至っていないようである。

その副業の内容はというと、サイト運営や映像制作、フォトグラファー、ライターといった技術系の仕事が多い。中には、他会社のマーチャンダイジングやマーケティング業務など、現職のスキルを活かし他社の業務を担っているケースもあった。そして少数ではあるが、飲食業などの本業とは全く違う業種を副業にしている人もいるようだ。

本業で稼ぎ、副業で楽しむという生き方

このように、副業に対する意識は確実に変わってきている。今ではほとんどのビジネスパーソンが、パソコンやスマホをプライベートで所有しているため、ネット副業などへのハードルは低く、取り組みやすいはずだ。

また、副業の動機が「楽しさ」を求めることが最多だった背景には、テクノロジーの進化による働き方の多様性が実現してきていることにあるだろう。お金を稼ぐのは本業で、楽しむの副業で、という生き方がこれから増えてくるかもしれない。

img: PR TIMES