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テクノロジーの発達によって日々新たな技術が生まれたり、人々の価値観の面でも個々の多様性が重んじられるようになったりと、社会はめまぐるしく変化し続けている。社会の中核を担うようになっていくミレニアル世代は、これからの社会や働き方について、どのような考え方を持っているのだろうか。
デロイト トーマツ グループは、デロイトグローバルが行った「2018年 デロイト ミレニアル年次調査」に基づき、日本のミレニアル世代の意識に関する調査結果を発表した。
それによると、今回、日本のミレニアル世代への調査結果から、勤務先への帰属意識が一層低下し、2年以内の短期での離職を考える割合が5年以上の長期勤続を見込む割合を上回る結果となったという。
また、勤務先の選択において重視するのは、報酬に加え、従業員の柔軟な働き方や心身の健康維持を支援する取り組みであり、世界の同世代に比較し、「従業員の生活向上」を企業に対して期待する傾向が見られたという。
勤務先の選択で最も重視するのは「報酬」
この調査は、デロイトグローバルが2017年11 月~2018年1月に世界36 カ国、10,455人(日本は337人)のミレニアル世代を対象に実施した調査に基づいている。調査対象者は、1983年1月~1994年12月生まれのミレニアル世代で、学位取得者であり、主に民間の大企業でフルタイム勤務をしている者である。
まず、「現在の職場に勤務を続けると見込む期間」について聞いたところ、現在の勤務先で働き続ける期間を「2年以内」と見込む日本のミレニアル世代の割合は、2016年、2017年の過去の調査から継続的に上昇し、今回の調査で37%(世界43%)となった。それに対し、「5年以上」と回答する割合は30%(世界 28%)と減少し続けており、今回の調査では、「2年以内の短期離職を見込む」人の割合が「5年以上の長期勤続を見込む」人の割合を初めて上回る結果となった。また、離職を考えていない人の割合は14%(世界11%)となっている。
この結果から、日本のミレニアル世代は世界の同世代と同様に、比較的短期での転職を厭わない価値観を有していることが示されたとしている。同世代の人材の定着化は世界・日本企業共通の課題となってきているようだ。
上のグラフを見て欲しい。日本のミレニアル世代が勤務先の選択で最も重視するのは、世界の同世代と同様に「報酬」だった。重視すると回答した人の割合は70%となっており、世界の63%より高い水準となった。
これには、日本の同世代における経済状況に対する悲観的な見方が少なからず影響しているという。今回の調査の中で、「今後1年間に自国の全体的な経済状況が改善する」と回答する世界のミレニアル世代は45%であるのに対して、日本のミレニアル世代は22%にとどまり、また、親世代より「経済的に裕福になれる」が日本24%、世界51%、「幸福になれる」が日本17%、世界43%と期待する割合も、世界の同世代の半分以下という結果が出ている。
また、勤務先の選択においては、「柔軟な勤務時間・場所」が日本57%、世界50%、「心身の健康(well-being)実現に向けた取り組み」が日本50%、世界33%を重視する割合も世界より高く、世界の同世代よりも、企業に対して、柔軟な勤務形態や心身の健康実現に対する取り組みを望む傾向がある。
今回の調査では、当世代に対して一般的に「企業に期待する役割」も尋ねたが、その結果としても、日本のミレニアル世代においては「従業員の生活向上」が49%と最も多く挙げられ、世界の35%と比較して高い水準となっている。
一方で、自身の勤務先が実際それに優先的に取り組んでいると認識する割合は20%にとどまり、期待と現実のギャップが現れているという。日本企業は働き方改革や健康経営を強化し、同世代のニーズを踏まえた彼らにとって魅力ある職場づくりに取り組んでいく必要があると提言している。
ギグ・エコノミーへ参画する理由とは
また、世界のミレニアル世代は、短期雇用やフリーランスといった「雇用関係によらない働き方」に魅力を感じているという。これは、日本でも同様で、副業または本業としてそのような就労形態を通じてギグ・エコノミーへ参画している、または、参画を検討しうるという回答がそれぞれ55%(世界78%)、48%(世界57%)にのぼり、肯定的に受け止められていることがわかった。
日本のミレニアル世代がギグ・エコノミーへ参画している/参画を検討しうる理由として、最も多く選ばれたのは「より高い収入の獲得」という項目で、日本47%、世界62%という結果だった。それ以降、「より良いワークライフバランスの実現」日本45%、世界37%、「好きな時間に働くため」日本40%、世界39%と続き、ここから経済的な便益を得ることに加え、自身のワークライフバランスを重視する傾向がうかがえるとしている。この望みが現在の会社で叶わぬ場合、ギグ・エコノミーへの参画を現実的に検討する可能性が考えられるという。
このような「雇用関係によらない働き方」の広がりを見込み、日本企業にも“優秀な人材の採用・流出防止”のために従業員への副業・兼業を容認・推進する企業も現れている。
さらには、フリーランスや副業・兼業人材を外部から活用し、労働力としての人材の確保や第4次産業革命などビジネス環境の変化に合わせて必要とされる人材を組み替えていく、新たな人材マネジメントも今後、課題になってくると分析している。
ミレニアル世代は、幼い頃からインターネットやデジタルデバイスに慣れ親しんでおり「デジタルネイティブ」と称されることも多い。しかし、第4次産業革命に対する意識に関しては、日本と世界で大きく異なる結果となった。
第4次産業革命が自身の仕事にもたらす影響について、「自身の仕事の一部もしくは全部が取って代わられる」と否定的に捉える割合は日本18%、世界17%と世界と同水準であるものの、「よりクリエイティブで、人間らしい、付加価値の高い仕事に注力できるようになる」の割合が52%と世界では過半数を占めるのに対し、日本では32%にとどまっている。
また、「何の影響もない」は日本33%、世界23%、「わからない」は日本17%、世界8%といった回答も多く、テクノロジーの進化がより良い働き方を実現するといった期待が世界に比べ低いことがわかったとしている。
このような意識の差に加え、日本のミレニアル世代のうち、第4次産業革命を迎えるにあたり「現時点で必要なスキル・知識に自信がある」が日本10 %、世界36%、「会社からスキル・知識習得に向けたサポートを受けている」が日本13%、世界36%と回答した割合も世界の同世代と比べて著しく低い結果となった。
第4次産業革命への日本企業の準備の遅れ
第4次産業革命への対応は、ミレニアル世代のみならず日本企業自体の対応が遅れているのだ。デロイトグローバルが実施した「第4次産業革命への対応準備調査(2018年1月公表)」でも、世界と比較し日本企業の準備の遅れが明らかになっている。
この調査を詳しく見ると、まず、日本91%、全世界87%と、日本及び世界の経営幹部の大多数は「第4次産業革命が社会により多くの平等と安定をもたらす」と考えていることがわかった。また企業は、社会に最も大きな影響を与えうると考えているのがわかる(日本:公開企業70%、非公開企業64%、全世界:公開企業74%、非公開企業67%)。
しかし、自社が多大な影響を与えうる課題領域は、「顧客への最良の製品/サービスの提供」、「短期的または、長期的な財務成績の向上」といった企業の従来からの役割に回答が多く集まっており、市場、教育、環境などの社会的課題に大きな影響を及ぼすと考える経営者は少数にとどまっているのだ。
特に日本の経営幹部はこの傾向が強く、「公正で開かれた市場の実現に向けた改革の推進」は日本9%、全世界24%、「商品・サービスへのアクセス向上や低価格化などを通じた未充足ニーズへの対応」は日本14%、全世界19%となり、市場環境の改善への影響についても他国企業よりも低い認識となった。
また、「最新技術は競争上の主要な差別化要因と考えるか」と尋ねたところ、日本の経営幹部の回答は「強くそう思う」が5%、「そう思う」が17%となり、全世界の回答(「強くそう思う」の20%、「そう思う」の37%)と比べて低い割合だった。
最新技術に対する考え方は、第4次産業革命に備えるために、必要な投資に対する意欲の高さを表すが、日本の経営幹部の78%は「どちらでもない」と様子見の姿勢で、グローバル市場での成長に大きく水をあけられるリスクが浮かびあがったという。
彼らにどう希望を持たせられるか
いまさらながら「終身雇用制時代は確実に終わった」と思う。ミレニアル世代の働き方への意識は「報酬」、「自由な勤務形態」などを最優先する、そしてそのためには転職も厭わないようだ。
ただ、気になるのが彼らが将来にあまり希望を持っていないということだ。彼らに希望を持たせることができる社会づくりが、企業や他世代に課せられた課題ではないだろうか。
img: PR TIMES