今まで、機械やロボットは人間の作業を代替するものでしかなかった側面があったが、昨今のAIの進化により、その役目はどんどん変わりつつある。
そして、それはどんどん人間にとって重要な役割を持つようになり、HR Tech(Human Resources×Tech)と呼ばれるサービスが出現するようになった。HR Techとは、企業の人材育成や採用活動、人事評価などの人事業務をテクノロジーの活用によって変える動きのことをいう。
今回ご紹介するAIを活用した人材評価ツール、「マシンアセスメント・フォー・コンピテンシー・デベロップメント」は、まさにそういったHR Techの典型的な事例の一つだ。
日本初のAIによる社員の人事評価・能力評価システム
「マシンアセスメント・フォー・コンピテンシー・デベロップメント」は、株式会社ヒトラボジェイピーが提供しているAIによる社員の人事評価・能力評価システムで、日本初のサービスだという。
「マシンアセスメント」では社員に対して、業務遂行能力の高いハイパフォーマー社員が有する行動特性・思考特性を見極めながら、社員の育成やキャリア開発、評価や選抜に活用する“コンピテンシー・アセスメント”を、ビジネス目標や経営戦略に合わせて、効率的かつ戦略的に行うことが可能であるという。
これまで社員のコンピテンシー・アセスメントの実施にあたって、人事コンサルタントなどの専門家に頼っていた企業では「マシンアセスメント」によって時間や費用を大幅に削減できるという。
同社によると、たとえば専門家による従来型の方法で、対象者一人にインタビュー型アセスメントを行う場合、大手人事コンサルティング会社で、実施からレポート納品まで約10日、費用は30~40万円程度かかるという。
しかし、「マシンアセスメント」では、まず対象者に自身の成果についてテキストに書き起こしてもらい、そのテキストをマシンアセスメントで分析する方法をとっている。
同社によると、この方法により、テキストを受け取ってから納品まで最速で1日、費用は4万円でのアセスメントサービスの提供が可能であるという。このように社員のコンピテンシーの把握、リーダー人材の発掘、選抜、人材育成のモニタリングが短い時間と安価な費用で可能となる。
現在、提供しているマシンアセスメント・フォー・コンピテンシー・デベロップメントは、自然言語処理技術をメインとした「バージョン1」だが、随時、アップデートを進め、バージョン2では対話型システムを提供していく予定だ。
採用プロセスでのスキル評価をオンラインで行えるサービスも
マシンアセスメントのみならず、このところHR Techと呼ばれるサービスが続々と登場している。他の事例としては、リクルート傘下のIndeedがPrehireを買収することで獲得した、採用プロセスにおけるスキル評価をオンラインで行える「Interviewed」がある。
Prehireは、2015年にサンフランシスコで設立されたスタートアップだ。2015年に200万ドル(約2億1,800万円)のシードラウンド調達を実施しており、IndeedもPrehireの初期フェーズで投資を行っている。
Prehireが提供する採用アセスメントサービス「Interviewed」は、プログラミングテスト、職業技能テスト、語学スキル、パーソナリティなどをオンラインで評価できるツールだ。
ジョブスキルテストには、教育、保険、製造業などの産業ごとの分類と、会計、営業、翻訳などの職業の種別ごとの分類によって、異なるテストが用意されている。職種ごとに測るべきスキルの項目が細かくカスタマイズされており、テストの中には実務に近いシミュレーションを通じてスキルを計測するものもある。
同サービスを活用すれば、求人への応募時に実務体験のシミュレーションができるため、求職者の応募職種への正しい理解を促すことができる。求人企業はシミュレーションを通じて、求職者の資格や能力などを知ることで、マッチングの精度が高まることが見込まれる。
HRTechが豊かにする企業文化
このように、HR Techはどんどん進化、拡大している。今回の「マシンアセスメント」は、まだスタートしたばかりで、どんな結果が生まれてくるのかはまだ未知数だ。
しかし、AIを利用したHR Techは今後もその領域を拡大していくのは目に見えている。このようなサービスが、企業文化を豊かにする未来は目前まできているのかもしれない。