ペットを飼っている友人から「愛猫が病気で、病院へ連れていくので有休をとる」や、「飼っていた犬が亡くなってしまったので、葬儀屋に頼んで火葬して、家には仏壇を作った」という話をよく耳にするようになった。
ペットを飼っていない人からすると少し大げさなように感じられるが、飼い主にとってはそれが普通。なぜならペットは「家族の一員」だから、と言う。この新たな家族の誕生により、市場も成長している。
ペットの「家族化」が進行中
飼い主の話を聞くと、ペットは「辛いときにそばにいてくれる・だまって話を聞いてくれる存在」だと言う。何も語ることはないが、近くに寄ってきてくれる、顔を舐めてくれるなどの何気ない動作が、自分を元気づけてくれているように思うそうだ。
餌をあげたり、散歩をしたりと「自分がお世話をしないと生きていけない」と感じているからこそ、ペットに対しての責任感も生まれると友人は語っていた。
内閣府が行った『動物愛護に関する世論調査』では、少子高齢化や核家族化が進む中で、人とペットの関係はどのようになっていくと思うか聞いたところ、「家族の一員同様にともに生活する世帯が増える」を挙げた者の割合が43.3％と最も高かった。
実際に暮らしにも変化は起き始めている。「住宅が狭く、交通量が多い都会の住宅事情から、ペットの小型化と室内飼育化が進んでいます。ペットと室内で過ごす時間が増えれば、わが子のように自然と愛情が増すものです」と、ペットビジネスに詳しい三菱UFJリサーチ＆コンサルティングの北洋祐研究員は解説する。
「家族の一員」という認識が強まる中で、ペット関連の支出も伸びている。一般社団法人 ペットフード協会が行った『全国犬猫飼育実態調査』によると、1ヶ月あたりの犬猫に関する支出総額は、2016年から2017年にかけて増えていることがわかる。
また、同調査によれば、猫の飼育数は横ばい、犬は減少傾向にある。飼育数が増えていないにも関わらず、矢野経済研究所によるペット総市場関連の調査では、ペット関連市場は2011年度から順調に伸び、米国で200億ドル（約2.2兆円）、世界では700億ドルに達している。ペットの飼育数は減っているが、それを上回るペースでペットにかける支出は増加している。
もちろん、この成長市場に乗り出すプレイヤーもあとを絶たない。
増加するペットケア関連のスタートアップたち
ペット市場の成長とともに、ペットケア関連のサービスを提供するスタートアップも次々と登場している。ドックフードの宅配サービスから、散歩代行サービス、ペットの体調管理サービスまで、その種類はさまざまだ。
ドッグフードの宅配サービスには、「The Farmer’s Dog（ザ・ファーマーズ・ドッグ）」や「Ollie」などがある。愛犬の犬種や年齢に合わせ、パーソナライズされたドッグフードを自宅に届けてくれる。
ドッグフードは材料にもこだわり、USDA（米国農務省）基準を満たした健康食品を使い、キッチンで作成したフードを3日以内に届けてくれる。料金は1匹あたり平均6ドルと、通常のドッグフードと比べ高級品だが、「宅配」というメリットもあり、働くミレニアル世代から支持を得ているという。
飼い主の負担を減らし、ペットの健康をサポートするサービスも
飼い主が不在のときに面倒をみてくれる場所がない、忙しくて散歩の時間をとることができないなどの課題を解決するため、代行サービスも多く出てきている。2018年1月、ソフトバンクは犬の散歩代行アプリ「Wag!」を手掛けるスタートアップ、企業・ワグ・ラブズに出資すると発表した。その額はなんと3億ドル。
Wag!をはじめ、ペットを預けたい飼い主と、預かりたい人をマッチングできる、いわばペット版Airbnbのようなシッターサービス「DogVacay」も人気を博している。飼い主の都合で散歩に十分な時間を割けない、室内で飼っているため適切な運動量が担保できないという場合でも、このサービスがあれば運動の機会を作ることができる。
ほかにも、ペットの健康を維持するサービスも登場している。ペットの体調が優れず、検診が必要なときに、獣医が自宅まで診察・治療をしにきてくれる「Vet pronto」や、ペットに首輪型のウェアラブルデバイスを装着し、活動状況をモニタリングしながらより健康に生きるためのサポートを行う「Whistle」などがある。
ともに生きていく家族、人生のパートナーとしての役割をペットが担っているからこそ、ペットの健康にお金を惜しまない飼い主たち。パートナーだからこそ、それぞれに合った健康によい食事の提供や、快適な生活を送るためのサービスに抵抗なく投資することができるのだろう。
ペットが今後も快適な生活を送れるように、さまざまなペットケア関連サービスが登場しそうだ。