いまや日常生活にインターネットは欠かせない。インターネットを利用する人々が大多数を占める現在、企業にとってWebマーケティングは力を入れるべき重要なものになりつつある。
しかし、デジタルトランスフォーメーションの只中である今、Webマーケティングの方法は多様化の一途を辿っており、効果的なWebマーケティングを行うには様々な障壁がある。
では、このような状況について、Webマーケティング担当者はどのような意識を持っているのだろうか。アドテクノロジー開発とインターネットマーケティング支援を行う株式会社フルスピードは、BtoB向けの顧客獲得施策を行っている企業の広告・マーケティング・広報・企画の担当者を対象にアンケートを実施した。
その結果、Webを活用した顧客獲得施策を実施する際足りないものとして、「上司・経営者の理解」、「人材(リソース)」、「自身の専門知識」、「予算」などが挙げられたという。今回は、この調査結果をもとにWebマーケティングの現状をご紹介する。
4年連続で二桁成長する日本のWeb広告費
まず、Webマーケティングへの注目度の高さや必要性についてみていこう。
インターネットが普及する以前、「広告」といえば4マス(テレビ ・ラジオ ・新聞 ・雑誌)が主流だった。ところが、株式会社電通の「2017年(平成29年)日本の広告費」によると、2017年の「インターネット広告費(媒体費+制作費)」は、前年比15.2%増の1兆5,094億円と4年連続で二桁成長となっている。
一方、「マスコミ四媒体広告費(衛星メディア関連も含む)」は、同2.3%減の2兆7,938億円と3年連続で減少している。
また、これまでマスコミ四媒体広告の利用率が高かった食品や飲料といった業種においても、インターネット広告(Web広告)の活用が進みつつあるとしている。
では、なぜWeb広告へのシフトが進んでいるのだろうか。Web広告の最大の特徴として、クリックすればその場で購入することが可能で、つまり「購買者が興味を持ったら即購入できる」ということが挙げられる。
また、従来の4大マスメディアに登場する商品やタレントは、手の届かない遠くに存在した。しかし、Web広告ではそれらがまるで隣りにいる友人のように、これ以上無いほど近くに存在するものに感じられるからだ。
このような、Web広告市場の拡大伴い、企業にとってWebマーケティングが非常に重要なものとなってきているのだ。
多くのWeb担当者が上司・経営者の理解不足を感じる
今回のアンケート調査では、まず、Web担当者が顧客獲得施策を実施する際に「足りない」と感じるものを聞いた。その結果「上司・経営者の理解」を挙げる回答が合計68.3%と最多だった。以下、人材(リソース)(31.9%)や自身の専門知識(29.0%)、予算(26.9%)、同僚・他部署の理解(22.9%)の順に回答が続いた。
人的リソースや予算など外的要因の悩みと自身の専門知識などの内的要因もそれぞれ「足りないもの」として多くの担当者が挙げており、いずれも3割前後の回答があった。
次に、Webを活用した顧客獲得施策の方法や内容について相談できる人がいるかどうか聞いた。その結果、詳しく相談できる人が全くいない(9.7%)、あまりいない(40.7%)を合わせた「相談できる人がいない」という回答は50.4%で、全体の半数を超えた。
一方、相談できる人がいる(31.2%)、具体的なアドバイスをもらっている(10.6%)を合わせた「相談できる人がいる」という回答は41.8%だった。4割以上は社内でWebマーケティングに関する相談をしたり、アドバイスを受ける体制があることがわかったとしている。
日々の仕事の中で抱えている具体的な悩みや問題とは
そして、担当している事業のインターネットを活用した顧客獲得施策に関する悩みを聞いたところ以下のような回答があった。
- 予算がない、足りない、少ない・コストがかかる
- 人手が足りない、細かな反応に対応する人的リソースがない
- 効果的な方程式のようなものがあれば良いが、各種効果要素が多数存在すると思うので一朝一夕とは行かないこと
- 他部門との連携ができていない
- 経営層の理解が進まない
- インターネット広告の効果が見えにくく、社内での理解を得られないことが多い
- インターネットを活用している世代とそうでない世代が混在していて、施策の全てをインターネット対応に切り替えられないこと
これらは、自由記述式で回答を求めたところ、Web担当者が日々の仕事の中で抱えている具体的な悩みや問題をより明らかにすることができた。前質問の、予算・人的リソース・知識、ノウハウなどの「足りないもの」についての回答は、やはりここでも多数集まった。
なかでも人的リソースについての回答は特に多く、どの担当者もWebマーケティング施策を担当する人員の少なさと期待される効果のギャップに頭をかかえていると分析している。また、経営者・上司の理解不足だけではなく、他部署や同僚との連携に悩んでいるといった、社内の課題についての回答も散見されたとしている。
また、これらの悩みの解決策について、以下のような回答結果が得られた。
- 有効な手だてがない
- 現時点では解決策を思いつかない
- 解決できるような問題ではないと思う
- 自分ではどうすることもできない
- 上司が代わるまで待つ
- 専門知識のある人材の採用
- 根本から施策の手段、方法を変える必要があるように思う
- 経験を積む
- 事前の準備、十分なリサーチ、社内における多方面での根回し活動など
- SEO対策、人的リソースの増加または個々の生産性向上
- 予算の拡充
- 他社成功事例の研究と分析
- 社内関係者と協議し効果的なコンテンツを増やす
- 展示会などへの積極的出展
- アウトソーシング先の選定もより重要視していかなくてはならない
- 代理店に依頼する
- 外注化・外部の知恵を借りる
- 外部業者と連携し、集客を図る構造の見直し、見せ方の工夫
- これといって悩み事は、現時点では無いですが、あればwebの代理店に相談している
現状では解決策がないと半ばあきらめているような様子が見られる一方で、なんとかして解決の糸口を見つけようと試行錯誤している様子が伝わる回答も多数得ることができた。
また、個人の力量や社内の協力だけでは解決できない悩みや課題を、代理店など外部に相談することで解決しているという回答も多かった。専門知識不足や人的リソース不足の問題を理解し、効率よくサポートする役割の代理店や外部業者は、悩めるWeb担当者達の心強いサポート役となっているようだとしている。
アウトソースの上手い活用が顧客獲得につながる
最後に、インターネットを活用した広告・宣伝・販売促進を広告代理店などにアウトソース(一部含む)しているか、と聞いたところ回答者のおよそ6割(60.9%)が、インターネットを活用した広告・宣伝・販売促進を広告代理店などにアウトソースしていることがわかった。
この結果と、同社が行った「現在行っているインターネットを活用した顧客獲得施策の効果に満足していますか?」という質問の結果を照らし合わせたところ、「満足している」回答者の中でアウトソースしていると答えたのは29.4%、アウトソースしていないと答えたのは14.2%だった。アウトソースを活用しているかどうかで満足している割合に約2倍の差があらわれたという。
特に専門的な知識やノウハウが必要なWebマーケティングを実施する際は、代理店などのアウトソースをうまく活用することが、担当者本人だけでなく企業や経営者も納得のいく顧客獲得施策を実施するための問題解決方法の一つになると考えられるとしている。
67.9%の企業が運営・制作をアウトソーシング
このようにアウトソーシングの活用が大切なことがわかったが、実際コンテンツマーケティングでのアウトソースはどんな状況なのだろうか。
オウンドメディアの制作、運営代行を行うAppmart株式会社が実施した「2017年のコンテンツマーケティングに関する調査」によると、現在67.9%の企業が運営・制作をアウトソーシングしていることがわかった。
また、アウトソーシングの月間の運営費用が100万円以上の企業は31.9%もあり、最もコストがかかるとしている企業は23.6%に上った。
そして、成果を感じる時期については、6カ月 26.9%、1年経過が19.9%、合計46.5%と実に約半分の企業が1年で成果を実感していることがわかった。
しかし、一方で2年以上とたたないと実感できていない企業もあることもわかった。
世代交代が進む中でどう生き残るか
この調査から、今後のWebマーケティングの課題は、「上司・経営者の理解不足」、「人手不足」、「相談できる人がいない」といったように「人」に関することが多いことがみえてきた。その解決策として、現状ではアウトソーシングを利用することが多いようだ。
また、インターネットを活用している世代とそうでない世代の混在による施策の不統一という課題もみえてきた。この解決策の一つとして「上司が代わるまで待つ」というものがあるが、これが若い世代の本音だろう。これから、いわゆるデジタル世代が台頭し、非デジタル世代との世代交代が進む。Webマーケティングにおいて企業の成否が問われるのはこれからかもしれない。
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