ソーシャルレンディングは“利回り”よりも“安全性”重視。金融業界を変革する新たなマッチングサービスの実情とは?

投資と聞いてどんなものを想像するだろうか?株式投資やFX、信託に不動産投資などさまざまあるだろう。しかし、近年注目されているのがソーシャルレンディングという投資の形だ。

ソーシャルレンディング市場の規模は拡大しており、2017年国内のソーシャルレンディング市場規模は1,300億円を突破している。今回、ソーシャルレンディング比較サービス「クラウドポート」を運営する株式会社クラウドポートは、「ソーシャルレンディング投資の選び方」に関する投資家アンケート結果を公開した。

その結果、事業者を選ぶ際に最も重視することは事業者の信用度、ファンドを選ぶ際は高利回りよりも安全性重視、国内不動産案件が人気、といった傾向があることがわかった。また、ソーシャルレンディング投資の他にもさまざまな投資を行っている投資家が多く、投資家によって多様な投資スタイルがあることが見て取れる結果となったという。

お金の貸し手と借り手をインターネット上でマッチング

まず、ソーシャルレンディングとはどのような形態の投資なのだろうか。簡単に言うと、お金を投資したい一般投資家(貸し手)と、お金を必要としている人・会社(借り手)を、インターネット上でマッチングすることである。

ソーシャルレンディング事業を運営する会社は、インターネットを活用し、ウェブサイト上で資産運用したい個人から小口のお金を集め、その資金を企業に融資する。最少投資額はサービスにもよるものの、1万円と元本が少なくとも始めやすいのが特徴だ

具体的な仕組みとしては、例えば借り手に対して15%の貸出金利で融資を行い、運営会社が5%の手数料を取得すると、個人には10%の利回りが分配される。

一方、借り手企業は資金を返済する必要があるため、返済額とともに、利率(この場合15%)を毎月支払う。運営会社はこのうち、支払われた利率から数%を営業者報酬として取得し、残りが投資家への利回りとなるという仕組みで、最初は欧米においてインターネットを利用した個人間融資のモデルとして立ち上がった。それは、「貸付型クラウドファンディング」と呼ばれることもある。

日本では、個人投資家からネットを介して小口で集めたお金を大口化し、借り手企業に融資するという法人融資のかたちをとる。投資を募集する主体は、金融庁から第二種金融商品取引業の免許を取得した事業者などだ。貸金業法にもとづいた融資をし、その利息を収益とする。

2017年は一般への認知が広がり、「ソーシャルレンディング」で資産運用を行う人が増加した。クラウドポートが発表した「2017年ソーシャルレンディング業界レポート」によれば、2017年のソーシャルレンディングの市場規模は1,300億円を突破している。成長率は前年比で2.5倍となり、2014年からの調査の中で過去最高の数字であるという。

投資家は「代表者・経営陣の経歴」を最重視

今回のアンケート調査は、クラウドポートニュースにも寄稿している、投資家でもありブロガーの中田健介氏の調べによるもの。アンケート回答者はソーシャルレンディング投資家14名である。

まず「事業者を選ぶ際に何を重視しますか。」という問いには、「代表者・経営陣の経歴」を重視して事業者を選択するという人が10名で、最も多い回答となった。特に新規事業者については、代表者や経営陣の経歴が気になるという人が多いという。金融業界での十分な実務経験・実績があることなどが重要といえるとしている。

また「親会社・出資者の信用度」(8名)、「実績(営業年数・募集総額など)」(6名)を挙げた人も多かった。やはり投資家にとっては事業者の信用度が選択の第一条件となっており、厳しくチェックするという人が多いようだ。

加えて、「ファンドの利回り」を重視するという人も9名で、ソーシャルレンディング投資の高利回りに魅力を感じる投資家が多いことがわかる。

以降、「ビジネスモデル・スキーム」(5名)、「サイトのデザイン・システムの使いやすさ」(4名)、「事業者自体の経営状況(資本金・負債比率・黒字かどうかなど)」(4名)、「情報の透明性」(4名)が続いた。これらの要素も各投資家に重視されているようだ。

一方で、「投資テーマ」(2名)、「募集されるファンド数や規模」(1名)、「キャンペーン」(1名)を挙げる投資家は比較的少なく、これらの要素はそれほど重視されていないという。また、その他の要素として「事業会社の評判、長期滞留の遅延がないかどうか」を挙げた人もいた。

投資期間が長すぎるファンドは敬遠される傾向に

次に、「ファンドを選ぶ際に何を重視しますか。」との問いには、実に12名の投資家が「投資期間」と回答した。投資期間が長すぎるファンドは、資金が拘束される期間が長く、リスクも高いと考えられることから敬遠される傾向にあるようだ。

また、2番目に重視されている要素が「担保・保証」(9名)だった。「利回り」を重視しているという投資家は4名で、意外に少ない結果となった。

また、「好きな投資テーマは何ですか」という問いには、「国内不動産」が最も人気が高く、10名の投資家が挙げた。

一方、「海外不動産」(3名)、「海外事業性資金」(1名)、「海外個人ローン」(0名)と、海外の投資テーマを挙げた人は少ない結果となっている。海外投資には為替リスクやカントリーリスクなどがあり、それが投資家に敬遠されている理由として考えられる。

「ソーシャルレンディングの利回りを高めるために行なっていることは何ですか。」という質問に対し最も多かった回答は、「利回りのよいファンドに積極的に投資する」ことだった。これは9名の投資家が実施していていたという。

また「こまめに再投資する」(8名)、「投資期間の長いファンドに積極的に投資する」(4名)、「融資実行までの期間が短いファンドを選ぶ」(2名)といった対策で資金効率の向上を図ることも多くの人が実践していることが判明した。

そして、ポートフォリオ全体の中でのソーシャルレンディングの位置づけについて質問をした。まず、「ソーシャルレンディングの他にどの投資を行なっていますか」という質問に対して最も多かったのは、「投資信託・REIT・ロボアドバイザー」(10名)と「国内株式(7名)」だった。やはり投資というと、まず投資信託や国内株式から入る人が多いと分析している。

また、近年話題の「仮想通貨」に投資している人も6名いた。ソーシャルレンディングとは同じFintechのカテゴリーで語られることも多く、興味を持つ人も多いようだ。

以下、「FX」(5名)、「外国株式」(4名)、「債券」(3名)、「現物不動産」(2名)と続いた。

最後に、「総資産のうちどの程度の割合をソーシャルレンディングに投資しているか」を聞いたところ、「80%〜100%」と回答した投資家が4名で最も多かった。しかし、投資している割合は投資家ごとに広く分かれる結果となった。

最高で総資産の90%をソーシャルレンディングに投資している人もいたが、一方で10%程度という人もいた。

ソーシャルレンディングをポートフォリオの中心に位置づけている投資家、あるいは株式など他の投資をメインで行なっており、ソーシャルレンディングを待機資金の一時的な運用先としている投資家など、それぞれ活用方法が異なる。このため、比率について大きなばらつきがあるものと分析している。

ソーシャルレンディング投資家は安全が第一

今回のアンケートでは、投資家は、事業者・ファンドの選択で、いずれにおいても安全性を第一に考えていることがわかった。

彼らは、一定の安全性の基準をクリアした上でないと投資しない一方で、その基準の範囲内では積極的に高い利回りを狙って、こまめに再投資するといった工夫をしている人も多かったという。

いずれにしても、ソーシャルレンディングは、既存の銀行や株式市場では難しかった場面での、投資や資金調達を可能にしてくれる新しいサービスといえる。これまでマッチングサービスは、「人」「モノ」「ビジネス」といったさまざまなつながりを提供してきたが、それは金融分野にも及んでいるのだ。

img: PR TIMES

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