ECで服を購入したり、カスタムシャツをオーダーしたりするときに悩まされる問題の一つが採寸だろう。自分で採寸を行おうとしても思いの外難しく、その精度も低くなってしまうことが多いだろう。しかし、実際に試着することのできない状況では、着丈や肩幅などを無視することもできない。

今回、そんな問題を解決してくれるアプリが登場した。米国のオリジナル社(Original Inc)が展開するシリコンバレー発の、10億通りのデザインを可能にするオンラインカスタムシャツブランド「Original Stitch(オリジナルスティッチ)」は、前面と側面から全身写真を撮るだけで被写体の実寸を瞬時に測定できる身体採寸アプリ「Bodygram(ボディグラム)」の新作開発の概要を発表した。今夏ローンチ予定であるという。

肩幅や首周りなど全身40カ所の採寸を三次元的に行う

Bodygramは2017年8月、日本国内向けに初期サービスを開始した衣料採寸ツールだ。自動的にオブジェクトを認識する高機能マシンビジョンによって、シャツとともに撮影されたA4用紙と比較し、アイテムのサイズデータを自動的に読み取ることが出来る。

Original Stitchは、最新版のBodygramを初期サービスにて採用していた技術を踏襲しつつ、より高精度なコンピュータアルゴリズムを駆使した身体採寸ツールとして新しくローンチする。

前面と側面の全身写真をスマートフォンで撮影し被写体の身長と体重を入力することで、周囲の背景から被写体のみを自動で抽出し骨格を検出、肩幅や首周りなど全身40カ所の採寸を三次元的に行うことが可能だ。

誰もがスマホだけでプロの精度で測定可能

Bodygramの特徴は下記の通り。

  1. 測定テープなどの採寸器具が不要、スマホだけで採寸が可能
    Bodygramでは、手元に採寸器具が無くても、スマホ一つで高精度な測定結果を得ることが出来る。
  2. 採寸器具やテイラーのような熟練した技術が不要
    従来の採寸方法では正確な身体採寸を行う技術の取得が非常に難しく、採寸器具も扱いづらいため、結果的に採寸者ごとの誤差が発生する可能性が高いというのが現状だった。これに対しBodygramは、スマホで撮影するだけで、熟練した採寸技術や採寸器具なしに、誰もがプロの採寸者の精度で測定可能である。
  3. 採寸時の服装に対する許容度が高い
    基本的には、どのような服装であっても衣服を着たままで正確な採寸が可能(ダウンジャケット等の厚手の上着を除く)。採寸のために服を脱いだり、特殊な衣服を着用する必要もない。
  4. 採寸時の背景に対する許容度が高い
    日常的などのようなシーンであっても、屋内および屋外ともにほぼ制約なく、高精度な採寸が可能である。
  5. 採寸可能な姿勢の許容度が高い
    これまで、背中が丸まっている状態、肩の位置がずれている状態、または直立できていない状態では、従来の採寸技術による正確な採寸は不可能だった。しかし、Bodygramはこの点での許容度が向上している。
  6. スマホ写真2枚のみで採寸可能
    正面と側面の写真を1枚ずつ、合計2枚のみで全身40カ所の正確な採寸が可能である。
  7. 様々なスマートフォンに対応
    iOSおよびAndroidともに対応予定。
  8. オープンプラットフォーム制を採用
    他のブランドやショップにも幅広くライセンス供与する。

現在、Bodygramはアメリカ合衆国特許商標庁に実用特許出願中であり、本格的なサービスローンチは2018年夏を予定している。

「ZOZOSUIT」が見据える先の可能性とは

Bodygramと似たような発想のサービスとして、ファッションショッピングサイト「ZOZOTOWN」を運営する株式会社スタートトゥデイの「ZOZOSUIT」がある。これは、全身約300~400個のマーカー読み取り方式を採用した全自動採寸のボディスーツだ。全体に施されたドットマーカーをスマホのカメラで360度撮影することで、精度の高い計測が可能となる新技術を搭載している。

このZOZOSUITは2017年11月22日に受付を開始したが、たった10時間で23万件もの配送予約があり、発送日を延期する事態にまでなった。2018年5月には予約数100万件を突破。今年度中に600万~1,000万着を無料配布する予定だという。

以前、AMPでは「ZOZOSUIT」について、新戦略10のアイデアとしてその可能性を探った。

そのアイデアとは、

  1. 個人のサイズに最適化された服作り
  2. アパレル競合企業をデータで支援
  3. VR試着
  4. 化粧品業界への参入
  5. 3Dプリンターを使った服のDIY
  6. アート・音楽の領域に進出
  7. スポーツウェアの開発
  8. ヘルスケアサービスの開発
  9. 体型データに合わせた広告配信
  10. メディアコンテンツのパーソナライゼーション

である。

これらは、すぐに実現できそうなアイデアから時間を要するであろうものまであるが、AMPではファッションに軸足を置きながらもあえてさまざまな分野での可能性を模索した。

総じて言えるのは、スタートトゥデイはZOZOSUITによって、単なる「ファッションEコマース企業」という枠組みを飛び越えられるほど強力なデータを手に入れようとしているということだ。

衣料ECの新たな道を切り開く「Bodygram」

筆者もよくECで衣服を購入する。その時に直面するのはやはり、採寸の問題だ。多くの場合は簡単に、S、M、Lなどのサイズに分けられているだけだが、実際には人間の身体のサイズはそんなに類型的なものではなく、サイズも体型も人それぞれだ。とくに、ワイシャツは採寸が難しく、現状ではECでの購入はかなり難しいのが実情だ。

「Bodygram」は、その課題を一気に解決してくれる可能性がある。果たして、EC、特に衣料分野の常識を覆す強力なツールとなるだろうか。

img: PR TIMES , ZOZOSUIT