「eスポーツ」のプロリーグが、日本で盛り上がるかもしれない。eスポーツとは、複数のプレイヤーで対戦するオンラインゲームを、競技・スポーツとして行うものだ。
ミレニアル世代・Z世代といった、デジタルネイティブな若者がグローバルで増加している今、オンラインゲームでの対戦は一般化し、オリンピック種目の候補にもなった。海外では、試合をテレビで放送することもあるようだ。
Newzooの調査によると、eスポーツのグローバルでの市場規模は、2017年で6億9,600万ドル(約730億円)。国・地域別の割合では北アメリカが37%、次いで中国が15%、韓国が7%となっている。日本での浸透はこれからのようだ。
そこで eスポーツ浸透のきっかけとして注目したいのが、「Z LEAGUE(Zリーグ)」だ。
日本における「eスポーツ」のプロリーグ、「Z LEAGUE(Zリーグ)」開催
2018年5月4日、一般社団法人日本 eスポーツリーグ協会(JeSA)は、2019年度から「Zリーグ」を開催すると発表した。日本 eスポーツリーグ協会(JeSA)は2018年度に発足した eスポーツの競技運営団体だ。「ユーザーフレンドリーシップを重視し誰もが楽しめる」ということをコンセプトに、eスポーツの魅力を伝える活動を行う。
そのJeSAが「Z LEAGUE」開催の準備を進めている。Z LEAGUEでは、日本各地のクラブチームが1年を通してリーグ戦を戦い、優勝を目指す。現在、クラブハウスの申し込みを募集している。公式サイトの完成までは、JeSA公認のSNSアカウントから情報の発信をしているようだ。
プロリーグの運営にあたり、JeSAは独自の「プロライセンス制度」を導入する。発行するライセンスは「シューティング」「格闘」「MOBA/RTS(リアルタイムストラテジー)」「レーシング」の4種類。「チャレンジ」と呼ばれるプロライセンス獲得戦で、規定の順位以上を出した個人・チームに対してJeSAのプロライセンスが発行される。
プロライセンスを取得すれば、JeSAの“プロ選手”として登録され、賞金のかかった大会への参加が可能となる。
Z LEAGUEでの試合には、一つの特徴がある。クラブチーム同士で全5戦を戦うが、すべて異なるゲームタイトルを使用することにした。一般的な eスポーツの大会では、一つのゲームタイトルに絞って開催される。これでは、特定のゲームタイトルそのものへのファンだけが盛り上がることになってしまう。クラブチームや、プロゲーマーその人へファンの注目を集める仕組みとして、この「トライアスロン方式」を採用したようだ。
ファンや観戦者を巻き込む仕掛けも、いろいろ用意されている。競技種目となるゲームタイトルは、視聴者による投票で絞り込みが行われる。「Z LEAGUEの公式チャンネル」では、月に一度クラブチームごとの「企画生放送」を行う。視聴者からの「いいね」の数を競う、という企画も予定しているようだ。
また「クラウドファウンディング」の形で、個人がクラブチームの共同オーナーになるシステムも導入する。各クラブチームに対してファンドを設定し、サポーターからの資金を募る。資金はチームや選手の力になり、成績によってはサポーターにも利益が還元される可能性もある。
日本ではこれから盛り上がりそうな eスポーツだが、グローバルでの市場規模や観戦者数はどういった分布を見せているのだろうか。
グローバルおよび日本における「eスポーツ」の現状
冒頭でも紹介したが、Newzoo(ゲーム・eスポーツ市場専門の調査会社)の eスポーツ市場に関するレポート「2017 Global Esports Market Report」では、2017年の eスポーツ市場規模が、6億9,600万ドル(約730億円)と推計されている。この数字は、前年比41.3%増と大きな伸びを示す。国・地域別のシェアを見ると、最大が北アメリカで37%(2億5,700万ドル)、続いて中国が15%、韓国が7%、その他が41%となっている。
eスポーツの市場を構成するのは、「広告」「スポンサーシップ」「放映権」「関連商品・チケット販売」「ゲームパブリッシャー料金」の売上額だ。日本で eスポーツの市場規模が小さいのは、プロの存在が少ないことによるのかもしれない。
プロスポーツに欠かせない「観戦者」の数についても調査が行われている。2017年のグローバルでの eスポーツ観戦者数は、3億8,500万人と推計される。これは、前年比で20%近い伸びを示す数字だ。「熱心な観戦者」「カジュアルな観戦者」という視点では、それぞれ1億9,100万人、1億9,400万人と半々だ。
「熱心な観戦者」についてくわしく見ると、地域別でアジア太平洋が51%と最大、次いで欧州が18%、北アメリカが13%という結果になった。市場規模のシェアとうって変わり、アジア太平洋地域での盛り上がりが注目される。
日本での eスポーツは、まだまだ浸透していないとみられている。しかし、日本を含むアジアを中心としたプロリーグも存在する。「クラッシュ・ロワイヤル(クラロワ)」の、公式 eスポーツ「クラロワリーグ」では、「クラロワリーグ アジア」が開催されている。1stシーズンは4月27日に開幕した。日本4チーム、韓国4チーム、東南アジア4チームが参戦し、4カ月にわたり開催されるリーグだ。日本からも、16人のプロ選手たちが参加する。
「クラロワ」は、モバイルゲーム開発会社Supercellによる、リアルタイム対戦型モバイルカードゲーム。187の国で楽しまれ、Appleが選ぶ2016年iPhoneベストゲーム「Best of 2016」や、App Apeが選ぶ「Game of the year 2017 優秀賞」に選出されている。
日本に「eスポーツ」は浸透するのか。デジタルネイティブの関心をひきつけられるかが鍵
他国と比べ、日本での「eスポーツ」の盛り上がりはこれからのようだ。eスポーツの市場規模を拡大するためには、プロリーグの開催と、それにともなう観戦者の増加が必要と考えられる。
日本では、今年に入って「日本 eスポーツリーグ協会」が設立され、2019年度からの「Z LEAGUE」開催準備を進めている状況だ。プロライセンス制度を導入し、クラウドファンディングによるサポーター制度を取り入れるなど独自性も出している。
eスポーツが野球、サッカーにつづくプロリーグとして盛り上がるためには、オンライン対戦ゲームに自信がある・興味がある世代の関心を、いかにひきつけるかが、鍵となるのかもしれない。
img: ValuePress!