Airbnbでも埋められなかったミレニアル世代のニーズとはーー期待集まる「YotelPad」

TAG:

アメリカの調査会社Gallupが2017年に発表したレポートによると、アメリカ国内で働く会社員の「43%」がリモートワークをしているという。

通信インフラの拡充によって離れている相手と容易にコミュニケーションを取ることが可能になり、一斉に通勤し、同じオフィスで働くというワークスタイルが過去のものになりつつある昨今、場所にとらわれず働くリモートワーカーが若年層、特にミレ二アル世代を中心に増えている。

それに伴い、今新たな商機が生まれている。単なる観光ではない、暮らすように旅する「長期滞在者向け宿泊施設」への需要が高まっているのだ(ここでの「長期滞在」とは2~3日以上のこと)。彼らのニーズは、ホテルでもAirbnbでも埋められていないのだという。

このトレンドに先鞭をつけ、市場拡大を牽引しているのが英ロンドンに本拠を置くホテル会社「Yotel」。2018年1月に「ホテルとAirbnbのハイブリッドホテル」を謳う新形態のホテル「YotelPad」の事業を開始すると発表し、期待と注目を集めている。

以前AMPでもスリープポッドの紹介記事でも一例として取り上げたが、今回はYotelPadについて詳しくみていこう。

ホテルとAirBnbの「いいとこ取り」


ホテルの快適さとAirbnbのようなでスタイリッシュな「YotelPad」の部屋

YotelPadが、ホテルとAirBnbの「ハイブリッド」を謳うのは、ホテルならではの「サービス」、Airbnbならではの「リーズナブルさ」の双方を提供しているからだ。たしかに、サービスで民泊を提供するAirbnbはホテルに劣るし、しかしホテルだと長期滞在の場合、費用がかさんでしまう。

では、YotelPadの部屋の中身を見てみよう。スタンダードな部屋は約6坪~16坪、それ以上大きな部屋でも6人が上限と、平均的なホテルの部屋よりもかなり小さい。部屋を小さくすることで、都市部に出店しつつも一部屋当たりの価格を低く設定できるという。

各部屋には、風呂や収納スペースはもちろん、プライベートキッチンも完備。自動で調節・折り畳みが可能なスマートベッドも。共有スペースには、24時間利用可能のジムにアマゾンからの商品を受け取ることができるアマゾンロッカーやランドリーもある。


スマートベッド

Yotelのもともとの強みである「IT」は、YotelPadでも大いに活かされる。専用アプリでチェックイン・チェックアウトができ、またそれ自体がスマートロック、つまり部屋の鍵の役割も果たす。軽食などルームサービスのオーダーができる他、照明、音響や空調の調節も可能だ。

特徴的なのは、アプリで家具の配置や組み合わせをカスタムオーダーできること。ベッドが必要なければ撤去し、日中は部屋をオフィスとして、夜にはラウンジとして使用してもいい。わざわざフロントに問い合わせずとも済ませられるその使い勝手は「バーチャルコンシェルジュ」のようだ。

今後この機能は、Amazon Alexaのように音声入力・応答にも対応予定という。


壁には「Technowall」が埋め込まれている。音楽や動画のストリーミングも簡単に行える。

さらに、Yotelが提供するロイヤリティプログラムでは、顧客データを収集し、それをもとに顧客が望むであろう部屋のカスタマイズを提案してくれる。Airbnbのような自分好みのステイを、ITを駆使し、ホテルのサービスのように快適に実現してくれるのだ。

Airbnbでも埋められなかった「ミレ二アル世代のニーズ」

YotelPadがなぜ、宿泊者たちからの期待、そして旅行業界からの注目を集めているのかーー。その背景について、YotelPadの共同デベロッパーであるPeplay ResortsのTodd Patrickマーケティング部長は、「これからは小さい部屋の時代」だと話す。

ミレ二アル世代を中心に、若い人たちの多くは地方や郊外から都市部へ流入。しかし、都市部の不動産は高額。そのような背景から、部屋は小さくとも移動などに便利で、彼らの多様なライフスタイルに応える「効率性」を重視する部屋へのニーズが高まっているという。

旅行業界のパイオニアといえば、Airbnb。たしかに、リーズナブルな価格で民泊できるメリットはあるものの、パーソナライズされたサービスやアメニティーの提供は原則なし。YotelPadがAirbnbに勝る、効率性への揺り戻しがきているのかもしれない。


宿泊客同士がコミュニケーションできる共有スペース

YotelPadは、「旅先でのコミュニティー形成」という潜在的なニーズも埋めようとしている。宿泊客同士がコミュニケーションを取れるよう、共有スペースには、ゲストを呼んでのパーティーや打ち合わせなど多目的に利用できるクラブルームやホームシアターを設け、充実させる。

YotelPadは2019年中、アメリカのユタ州 Park City を皮切りに、マイアミ、欧州と中東に3カ所のオープンを控えている。長期滞在者向けホテルを手掛ける Starwood Capital から2,500万USドル(約27億円)の調達にも成功し、今後も新規出店を計画。

Yotel社のCEOであるHubert Viriot氏は、「この業態はホテルと住居の最強のハイブリッドであり、その柔軟性は多くの可能性を秘めている。今後Yotel全体の収益の柱となるだろう」とSkiftのインタビューで明るい見通しについて語っている。

暮らすように好きな国を旅しながら働く人は今後ますます増えていくだろう。そんな人たちの「ちょうどいい」をYotelPadは見つけたのかもしれない。日本上陸も待たれる。

Yotelサイト内、「YotelPad」開始のアナウンスページ

執筆:橋本沙織
編集:岡徳之(Livit

モバイルバージョンを終了