社会人にとって、仕事上でベストパフォーマンスを発揮し続けることはとても重要なことであり、それを現実のものにするために必要な働き方の工夫を必死で行なっていることだろう。その中でもパフォーマンスを上げるために重要視されているのは睡眠だ。
しかし、とかく現代人は睡眠不足に陥りがちだ。働き方改革が進んでいるとはいえ、まだまだ睡眠時間を削って働く人は多い。
テクノロジーで人々の睡眠課題を解決するSleepTech(スリープテック)事業を展開する株式会社ニューロスペースと、KDDI株式会社は、SleepTechの実証実験を開始すると発表した。
被験者はKDDI社員。睡眠改善の可視化や解析を実施
今回の実証実験ではニューロスペースが開発したAI搭載の睡眠解析プラットフォームや睡眠計測デバイス・モバイルアプリケーションを活用し、KDDI社員向けに睡眠計測・改善サービスを実施する。
また計測した睡眠データを活用し、KDDIのホームIoTサービス「au HOME」と連携、各個人の睡眠に適した温度・湿度・照度調整を行い、睡眠改善のトライアルも行うという。
この実証実験を通じて通信×睡眠の有用性を実証し、今後KDDIが提供するホームIoTサービスやヘルスケアサービスなどと組み合わせた、新たなサービスの企画・開発を推進することが狙いだ。
具体的には、KDDI社員を対象に睡眠計測デバイスおよび、その計測データから睡眠ソリューションを提示するモバイルアプリを配布するというものだ。
そして約1カ月におよぶ睡眠計測と改善行動のレコメンデーションを通じて、従業員の睡眠改善の可視化、および睡眠解析プラットフォームの有効性の実証とブラッシュアップを行う。
被検者となる社員には、「au HOME」を活用し、睡眠に適した温度・湿度・照度調整も合わせて体験してもらい、今後のサービス連携に向けたトライアルも行う方針だ。
au HOMEとは、KDDIが提供するホームIoTサービス。スマートフォンと「au HOMEデバイス」を活用して外出先からでも自宅の鍵や窓の開閉状態の確認、家族やペットの見守り、家電の操作や電気使用量、自宅にいる家族とのコミュニケーションなどが可能だ。
睡眠解析プラットフォームは、計測された個人ごとの睡眠データを、AIを活用した独自の解析技術で個人ごとに睡眠解析結果や最適ソリューション、改善データを提供するシステム基盤である。
社員の健康増進・生産性向上を志向する企業や睡眠ビジネス参入を検討する企業は、API連携を行うことで、睡眠改善データやソリューションを経営の改善や自社サービス・IoT対応製品に組み込むことが可能となるという。
ニューロスペースでは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の平成29年度研究開発型ベンチャー支援事業に採択され、同プラットフォームの実証実験の第一弾を吉野家と2017年9月から2018年2月まで行った。今後も継続的に同プラットフォームの実証実験、および正式ローンチに向け事業推進を行っていく方針だ。
睡眠満足度の向上は仕事のパフォーマンスに良い影響を
レイコップ・ジャパン株式会社が発表した「働き方改革と睡眠」に関する意識と実態調査によると、 日本人の睡眠時間の短さは世界的にも知られており、2014年に経済協力開発機構(OECD)が世界29カ国を対象に15~64歳の国民平均睡眠時間を調査したところ、韓国に次いで世界で2番目に短いことがわかったという。
これを受け、レイコップ・ジャパンでは、働き方改革が実践されている企業で働く「実践層」と実践されていない「未実践層」のビジネスパーソンを比較し、睡眠との関係を探った。
それによると、働き方改革で睡眠の量に差が出始め、睡眠満足度は向上。仕事のパフォーマンスにも良い影響があることがわかった。また、平日の平均睡眠時間を比較すると、実践層6時間12分、未実践層6時間3分となり、実践層の方が1日9分、睡眠時間が長いことも判明した。
さらに、働き方改革未実践層の3人に1人(32.4%)は今の睡眠に満足だが、実践層は2人に1人(47.0%)が満足しているという。
一方、睡眠への満足度の高い実践層は、仕事に対する「集中力」「記憶力」「注意力」「モチベーション・積極性」「充実感」など、仕事に対するパフォーマンスが未実践層よりも総じて高い。未実践層は、実践層より「疲労感」や「眠気」を感じているという。
睡眠の量と質、ビジネスパーソンの約8割が「睡眠の質」(78.0%)を重視し、現在の睡眠環境を「改善したい」(82.4%)と考えているようだ。
残念なことに、満足度では実践層が未実践層よりも高い数値を出してはいたものの、働き方改革によって睡眠の質までが改善されているとはいえないようだ。それを示す数値として、7割が「変わらない」(実践層76.4%、未実践層75.6%)と回答している。しかし、就寝前の「スマホ」(80.6%)、「夜更かし」(69.2%)、「PC」(56.9%)が習慣化しており、それらが睡眠の質の低下につながると分かっていてもやめられないのが現代人の実態だ。
この調査では、ビジネスパーソンの13.8%が睡眠の質にこだわり「何らかの対策を実践している」睡眠意識の高い“睡眠エリート”だという。“睡眠エリート”は、睡眠トラブルに対してより敏感で、今の睡眠環境にも満足していない。
また“睡眠エリート”の3割が、睡眠の質を高めるために寝るときの「温度」(29.0%)に配慮していることがわかっており、これからの睡眠改善は温度に注目だとしている。
ビジネスパーソンに必要な「良質な睡眠」
何時間眠ればベストがということは、人それぞれだろうが、人間にとって最適な睡眠時間は約8時間ということがよく言われる。人間が文明を持つ以前は、太陽が出たら起きて、太陽が沈んで暗くなったら寝るという生活スタイルだったろう。
しかし電気がとおり、インターネットやモバイル機器などが進化した現代では、仕事のみならず、生活環境自体が夜更かししがちなものとなっている。
今回の実証実験でどのような新サービスを創出するかはまだわからないが、日本人の睡眠不足を最良の形で解消してくれるものであってほしいところだ。
人生の約1/3を占める睡眠をできるだけ良質な状態でとることが、ビジネスパーソンにとってベストパフォーマンスを実現する鍵になるはずだ。
img: PR TIMES