2018年、日本は景気に関する数字が好調だ。1月には、日経平均が一時24,000円を超えた。求人倍率も1.48と、バブル期以上の数字となっている。
雇用環境は、超売り手市場だ。「アベノミクス効果」による景気回復の兆しとして、実感している人も多いかもしれない。就職氷河期を経験しているミレニアル世代からすると、現在、就職活動を行なっているZ世代の状況をうらやみたくなるものかもしれない。
企業業績と雇用環境は、この先も好調を維持できるだろうか。時期帝国データバンク・マイナビの調査結果が出揃ったので、チェックしてみたい。
業績見通しとアベノミクスへの評価は高水準。懸念材料は「人手不足」
2018年4月12日、帝国データバンクは、「2018年度の業績見通しに関する企業の意識調査」の結果を発表した。調査は2009年3月以降、毎年実施し、今回で10回目となる。調査期間は2018年3月16日~31日、有効回答企業数は1万94社(回答率43.6%)だ。
2018年度の業績見通しについては、29.3%の企業が「増収増益(見込み)」と答えた。この数字は、2年連続で増加し、過去最高だった2014年(30.5%)以来の高水準だ。「減収減益」は1.0ポイント減少した。全体的に好調な業績が維持されそうだ。
従業員数別で見ると、1,000人超の企業では46.6%が「増収増益」と答えたのに対し、5人以下の企業では24.8%と4社に1社にとどまる。業績見通しにおける大企業と中小企業との間の「規模間格差」は前回より拡大した。規模による景況感に差が出ているという結果だ。
業績見通しを上振れさせる材料については、「個人消費の回復」が33.0%で7年連続のトップとなっている。次いで、「公共事業の増加」「所得の増加」が挙げられた。「五輪需要」「消費増税前の駆け込み需要」も、上振れ要因として挙がった。
一方、業績見通しを下振れさせる材料としては、「人手不足の深刻化」が39.3%で最高となった。次いで、「個人消費の一段の低迷」「原油・素材価格の動向」が挙げられている。労働市場がひっ迫する中、労働力の確保に対する危機感が強い。「人手不足により取引先や専門業者の奪い合いとなり、取引契約金額の上昇で収益が減少する」という指摘が聞かれた。
調査では、安倍政権による経済政策(アベノミクス)への評価についても聞いている。100点満点で平均62.4点と、前年より0.7%下がった形だが、前回63.1点、前々回60.3点、前々々回64.2点と、60点以上を維持し続けている。
評価する意見としては、「若年層の雇用改善」「デフレ脱却」「旺盛な設備投資」が挙げられている。評価しない意見では、「好影響が一部(大企業・首都圏・資産家)にとどまる」「外需・街区人観光客への依存が高い」というものがあった。ここでも、大企業と中小企業の間で、評価が分かれるという傾向が見られる。
良好な業績見通しと人手不足感の中、採用予定の状況はどうだろうか。
採用予定は、対象を広げて増加。採用基準は維持し、「体験型インターンシップ」の手法が広がる
2018年4月12日、株式会社マイナビは、「2019年卒マイナビ企業新卒採用予定調査」を発表した。この調査は、2001年(2002年卒)以来、毎年実施されている。2018年2月6日~3月4日に、新卒採用実績のある国内8,000社に、解答用紙を郵送して行われた(有効回答数は、2,136社)。
2019年卒を対象とした新卒採用の予定数は、すべての学生分類において「増やす」が「減らす」を上回った。これは前年よりも割合を増やしているという結果になる。大学(理系)では3割以上の企業が採用を「増やす(34.3%)」と回答した。短期大学や専門学校、高等専門学校、高等学校では「予定なし」がこの数年減少傾向で、「増やす」が増加している。人手不足を受けた、採用対象の広がりが見られる。
2019年卒の大学卒(院卒含む)の採用予定数は、18年の採用実績数と比較して、16.8%増を目指すという結果が出た。業種別では、「サービス」「インフラ」が高い。「金融」が唯一実績を下回るほかは、前年実績を上回る採用を目指す構えだ。
採用基準については、「前年同様」が9割近くを占める。「厳しくする」も9.4%で微増。人手不足で、採用環境が厳しい中、採用基準は緩めないという傾向がある。
採用環境については、「厳しくなる」「非常に厳しくなる」で過半数を占める。この傾向は、文系(55.9%)・理系(59.7%)で共通する。厳しくなる理由として、「母集団(エントリー数)の不足」が文理共に高かった。「応募学生の質の低下」「内定辞退の増加」という声も聞かれる。
日本は今後超少子高齢化社会に突入するため、どの企業も優秀な人材を確保することに躍起になっているのだろう。
前年より増加している採用手法は、「体験型インターンシップの受け入れ」「学校訪問」「秋採用や通年採用」などだ。「今年から導入した」採用手法でも「体験型インターンシップの受け入れ」が最多となり、企業認知向上の目的もあるとみられる。
反対に減少したのは、「学内セミナー」「学力テスト・筆記テスト(紙)」「適性検査(紙)」「エントリーシート(紙)」だった。紙を使った採用手法の減少が目立つ。
好業績と「人手不足」の中、企業の採用手法が問われる
2018年度の業績見通しは、良好だ。見通しを左右する条件としては、「人手不足」と「個人消費」の動向に注目が集まっている。好景気の実感やアベノミクスに対する評価は、大企業と中小企業で分かれる結果となった。
「人手不足」を受けて、2019年卒の採用環境は厳しい。採用予定数は、学生分類の対象を広げながら、増加傾向にある。採用基準は緩めないが、「学力テスト・筆記テスト(紙)」が減り、「体験型インターンシップの受け入れ」が増えている。
好業績と人手不足で採用が厳しくなる中、企業は、採用する学生を「紙」だけでなく「人間」全体として適性を見極め、関係を作っていく必要があるのかもしれない。
特にミレニアル世代以降、働き方へたいする考え方は今までのものとは異なってきている。しかし、ただそれを企業が受容しようとするのではなく、これからの世代の若者たちが仕事にやりがいを見つけられ、その先に何か意義のあることが仕事なのだと感じてもらえるような働き方を共に目指していくべきだろう。