「スペース」に「移動手段」、そして「モノ」や「お金」に「スキル」。シェアリングサービスは様々な分野にその裾野を広げ、保有からシェアという現代の生活にフィットしてきている。デジタルネイティブであるミレニアル世代にとっては、UberやAirbnbはすでに生活の一部という状況も多いことだろう。
2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けてだけではなく、訪日外国人は年々増加傾向にあり、その市場に向けたシェアリングサービスがローンチされる。そのシェアリングの内容は「日本料理文化」だという。
現役名古屋大学生が起業したZAZA株式会社(本社:愛知県みよし市、代表取締役:永津豪)は、食を通して増加する訪日外国人に「本物の日本文化を伝える」ことを目的とした、インバウンド向け日本料理文化のシェアリングサービス「airKitchen」を4月にサービスの提供を開始する。
「airKitchen」の提供する体験
airKitchenは日本の家庭の食卓を通して交流したいと思っている訪日外国人と、そういった訪日外国人に対して家庭料理を振る舞いたいと思っている日本人のホストをマッチングさせるプラットフォームで、旅行中に現地の日本家庭を訪問し、日本人料理ホストと日本の家庭料理を一緒に作ることができる。
旅行の目的といえば、観光地を巡り、その土地土地のグルメや名産品を楽しむ、というのが今までの常識だったが、そこに「個人」や「家族」というファクターを取り入れることで新しい価値を提供しようというところだ。ショートホームステイを旅行中に気軽に行えるといった感覚だろうか。
今までの観光地を巡るだけの旅行とは違い、旅行者はリアルな日本文化や普段の日本の生活を体験することができ、日本人ホストは普段の生活の中で、様々な国の旅行者とのグローバル体験を獲得することができる。
「airKitchen」は2017年8月に日本でホスト向け登録を開始。現在は東京を中心に250人以上の日本人料理ホストが登録している。今年2月には訪日外国人向けにサービスをプレリリースし、約20か国の訪日外国人が2カ月で日本の家庭料理を体験した。
サービス利用者の満足度は高いようで、利用者からは「日本の家庭で料理を通して日本人ホストの方と交流でき、今回の旅行で一番の思い出だった。母国に帰って学んだ料理を作りたい」というコメントもあったという。
「airKitchen」の今後の展開としては、1,000人の料理ホスト登録者を2018年度中に獲得し、訪日外国人と3,500のマッチングを目指すという。さらに、日本だけではなく、アジアを中心としたグローバル展開を2020年度までに予定している。
旅行者向けのシェアリングサービス
インバウンドに限ったことではないが、旅行者に対してシェアリングサービスを提供している企業は他にもある。
旅行の際に困ることの1つといえば「コインロッカー」の確保ではないだろうか。そんな悩みを解決するのが、ecbo(エクボ)株式会社が運営する、店舗の空きスペースに荷物を預かってもらう『荷物を預けたい人』と『荷物を預かるスペースを持つお店』をつなぐシェアリングサービス「ecbo cloak」だ。
駅前などで観光客がコインロッカーを探しているという光景はよく目にするもので、そのニーズは大きなものだ。しかし、コインロッカーは大抵駅前にあるのみで、人気の観光スポットなどでは埋まっていることもしばしば。そこで「ecbo cloak」は、さまざまな店舗にコインロッカーの役割担ってもらうというサービスを提供している。
そのサービスの提供可能場所は多種多様で、カフェ、カラオケ、神社でさえもコインロッカーになる。
例えばカフェが「ecbo cloak」のサービス提供場所となっていた場合、旅行者は荷物を預けるためにそのカフェを訪れることになる。そこで旅行者はコーヒーを飲むかもしれないため、カフェ側からすると機会の創出に「ecbo cloak」が一役買ってくれるのだ。
旅行者に来店を促進するためのサービスとしても使える「ecbo cloak」は、店舗側と荷物を預けたい旅行者とのマッチングを行えるWinWinのサービスではないだろうか。
旅行の形は変遷する
携帯電話を持つようになったことで、旅行中のコミュニケーションはそれまで以上に簡単になった。それがスマートフォンに進化することで、旅先での地図や電車の乗り換えにも困らなくなった。そして多言語化が進み、今後は海外旅行での言語へのハードルもどんどん下がっていくはずだ。
このように「旅行」というものはテクノロジーの進化とともに、気軽に行けるものになってきており、旅行先で求めるものもどんどん変化してきている。
今回の「airKitchen」のように、観光スポットを巡るだけではなく、現地の人とのコミュニケーションによる文化の理解などが、今後の旅行の主流になる日がくるかもしれない。