今や「働き方改革」という言葉は、どんな分野でも日常的に使われるキーワードとなっている。それは、大企業から中小企業、果ては個人経営事業にまでも広がっている。

しかし、その認知度は高くても、実際にはどれほどの改革が進められているのか、不透明な部分が多い。

BIGLOBEは、長時間労働対策や副業をはじめとする「働き方改革に関する意識調査」を実施。この調査によると、働き方改革で既に導入されている制度は「長時間労働対策」が4割弱で、一方で最も導入率の低い制度が「副業・兼業の許容」であるということがわかった。

日本では長時間労働対策の導入率が最多

この調査は、インターネットの利用者のうちスマホを所有する全国の20代~50代の社会人男女800人を対象に、アンケート形式で実施したもの。それぞれの年代カテゴリは各200人ずつ、性別カテゴリは400人ずつ抽出している。調査日は2018年3月7日~3月9日。

まず、既に導入している制度を確認している。1位はノー残業デーや週40時間労働上限などを対象とした「長時間労働対策」で38.6%。次に育児・介護休暇や時短勤務などを対象とした「育児・介護と両立しやすい環境づくり」(37.0%)、「フレックス制」(32.1%)と続いている。

「長時間労働対策」は、ミレニアル世代である20代の男性が94.5%、女性が93.1%と最も高く、男女ともに年代が上がるごとに導入希望の数値は下がっていく。長時間労働に対する懸念は、特に若年層に強いことがわかった。ミレニアル世代の求める働き方が、今までのような長時間の労働をよしとするようなものとは異なってきていることが浮き彫りになっている。

一方、働き方改革で最も導入率が低かった施策は、「副業・兼業の許容」で11.8%。続いて「裁量労働制」(17.1%)、「リモートワーク」(21.0%)という結果となった。

改革の実施は、まずは労働時間の削減から行われているようだ。これは、働き手の心身の健康面から言えば当然のことかもしれない。一方で、一番導入率が低かったのが副業に関することだったということは、まだまだ日本では雇用側のサブビジネスに関する理解度が低いのかもしれない。

また、「働き方改革で実施してほしい制度をお答えください」と質問したところ、「導入してほしい」「どちらかというと導入してほしい」の合計は、5営業日以上の連続休暇取得などを対象とする「休日・休暇取得ルール改善」が90.8%で1位だったことで、有給休暇を連続的に取得することが容易ではない実態が明らかとなっている。

続いて、「育児・介護と両立しやすい環境づくり」が90.1%で2位、「副業・兼業の許容」が87.1%で3位と続いている。

連続休暇については、これまでもよく比較の対象となるように、欧米の企業では当たり前であったが、日本でもその要求が強まっているようだ。また、雇用側とは反対に、働き手の副業への関心が強いことがみてとれる。

導入希望が最も高い「副業・兼業の許容」

「働き方改革として導入してほしい制度をお答えください」と質問し、性年代別に分析したところ、「導入してほしい」「どちらかというと導入してほしい」の合計は、「副業・兼業の許容」は40代男性が93.6%、続いて30代男性(89.7%)と高い数値を示した。

また、20代女性も89.4%と同世代の男性を上回る結果となった。

副業に関しては、40代男性のほとんどが導入を求めている。これは、本職や収入に余裕が出てくる世代だからだろうか。また、20代女性が高いことも注目される。これは、産休や育児時に空いた時間を使って稼ぎたいということなのだろう。

「育児・介護と両立しやすい環境づくり」への期待は、20代女性(96.6%)、30代女性(93.5%)を中心に全体的に高いものの、50代では女性が94.9%と高い数値である一方、男性は80.0%と大きく数値が下がる結果となった.

50代男性の期待が少ないのは、この年代では子育てが一段落しており、また、親世代の介護はまだ配偶者に任せるケースが多いからだろう。

徐々に変化する企業の副業への意識

こうしてみると、日本ではまだ雇用側の副業に対する意識が低いことがわかる。しかし、働き手側の関心は高い。

では、実際に副業解禁された企業の働き手はこれをどう受け止めているのだろうか。以前、AMPでも取り上げた株式会社ホールハートが運営するプロフェッショナル人材の副業紹介サービス「プロの副業」の調査からみてみよう。

副業を認めている企業の割合は徐々に増え始めているようだ。2018年2月現在、36.3%が「現在働いている企業では副業が認められている」と回答しており、2014年に比べ、副業を解禁している企業は着実に増加傾向にある。

企業の「副業」に関する意識が大きく変化してきている結果だ。ただし、現在でも「副業NG」の企業は51.3%と半分以上を占めている。企業の側に立ってみれば、副業に集中されて本業がおろそかになってしまっては困る、という考え方が主流なのだろう。

では実際に副業を行っている人はどのくらいいるのか。副業が認められている企業で、実際に副業をしている人の割合は26.9%にとどまっている。副業を認めている企業であったとしても、いまだに多くの人が実行には至っていないようである。実行している人の副業内容はサイト運営や映像制作、フォトグラファー、ライターといった技術系の仕事が多い。

また、副業が認められていない企業のビジネスパーソンの77.6%が「副業をしたい」と回答している。自身のノウハウをもっと効率的に活かしたい、今以上の報酬を獲得したいなど、さまざまな理由が想定されるが、働き方の多様性を世のビジネスパーソンは受け入れており、その流れに乗りたいと思っているのだろう。

真の働き方改革の実現へ

今回のBIGLOBEの調査から、働き方改革についてはまだ、企業側と働き手側に意識にズレがあることがわかった。

これからミレニアル世代もどんどん社会に出てくる。このズレを正し、企業、働き手がともに同じベクトルでビジネスを進められる環境の構築こそが、真の働き改革の形なのだろう。

img: @Press