今、「IT化」によるイノベーションが各業界で進められている。「IT化」というと、情報通信産業や金融など、第3次産業に目が行きがちだが、第1次産業・第2次産業においても、注目すべき動きがある。

第2次産業には、「建設業」が含まれている。日本の建設業界は、年間50兆円が動く巨大市場だ。人材不足や技能労働者の高齢化、過酷な労働環境など課題も多い。テクノロジーの導入による解決が期待される業界でもある。

国土交通省では、「i-Construction(アイ・コンストラクション)」と呼ばれるプロジェクトを推進している。これは、建設現場へICTを導入することで、生産性向上を図るプロジェクトだ。ICTや3次元データ等を活用し、2025年までに建設現場の生産性を2割向上するという数値目標を掲げている。

建設現場での作業は多岐にわたるが、今回登場したのは、「工事写真」の管理をAIによって効率化するソフトだ。

膨大な工事写真の仕分け・分類の工数を削減するAI、「写真の達人」

2018年3月22日、株式会社アウトソーシングテクノロジーは、工事写真管理ソフト「写真の達人」に、AIによる画像仕分け機能を追加した。

アウトソーシングテクノロジーは、R&D(研究開発)に特化した「機械・電子・電気・ソフトウェア」の技術者特定派遣・および開発請負いを行っている企業。「写真の達人」は、「国土交通省 デジタル写真管理情報基準」および「工事写真の撮り方」、に対応した工事写真管理ソフトだ。

建築工事においては、完成後に地中や仕上げ材の裏などに隠れて、見えなくなってしまう部分が多い。そのため、部材や施工が適切だったか、工事の工程や進捗状況を証明する必要がでてくる。記録としての膨大な「工事写真」が発生し、それを管理することが重要となる。

今回AIが導入された「写真の達人」では、「工事写真」の管理を大幅に自動化する。

1つは、「不具合写真の自動検出」だ。現場で撮影した工事写真のうち、失敗した写真をAIが自動検出し、「不具合写真」に自動で仕分けされる。ぼやけてしまった写真、輝度が明るすぎる、または暗すぎる写真を判別できる。また、重複する写真を、「類似写真」として検出する。AIが間違って、人間が手動で戻した場合は、学習を行い精度を上げることも可能だ。

他に、AIが写真の「撮り忘れ防止」を自動化してくれる、という機能もある。写真撮影計画に、撮影箇所に対する撮影枚数や、撮影位置などを登録しておくと、撮影漏れの写真を検知してアラート通知する機能だ。

このような、建設×ITで、建設業界の課題解決に挑むテクノロジーは「Con-Tech(コンテック)」と呼ばれ、多くのスタートアップが参入している。

建設業界に「Con-Tech(コンテック)」で進出するスタートアップ

建設業界では、テクノロジーによる課題解決のニーズが多い。グローバルで見ても、この4、5年で年間のCon-Techスタートアップへの投資件数は倍近くになり、投資金額は約5倍に増えている、というデータも存在する。

建設業界の“職人不足”問題に取り組むサービスとしては、「助太刀くん」や「ツクリンク」がある。直接繋がりのない発注者と職人を繋ぐプラットフォームで、今ある人的リソースを最大限に活かす。

「助太刀くん」は、TechCrunch Tokyo 2017のスタートアップバトルで審査員特別賞を受賞した東京ロケットが運営している。

またその他にも、「ANDPAD(アンドパッド)」「Photoruction(フォトラクション)」「stacc(スタック)」といった、建設業界に特化した業務改善ツールだ。工程表や工事写真の管理、現場のコミュニケーションなどをアプリ・クラウドを通じて行う。

スタートアップバトルでファイナルに進んだ「truss(トラス)」は、断熱材や窓、屋根材といった多様な“建材”をweb上で検索、比較できるサービス。分厚い紙のカタログの中から、建材をリストアップしていた作業を軽減する。

建設業界にも、Web・アプリ・クラウド・AIといったテクノロジーが適用され、「Con-Tech(コンテック)」化が進んでいる。

課題を抱える産業の領域は広く、テクノロジーの適用が待たれる

現在、さまざまな産業でIT化が進んでいる。人手不足が大きな問題となっている時代には、テクノロジーの導入による効率化が一番の処方せんと考えられる。

今回見てきた、建設業界にITを導入する「Con-Tech(コンテック)」では、AIによる工事写真管理の自動化、アプリによる現場でのコミュニケーション、Webを介した職人のマッチング、クラウドによる施工管理などが見られた。

業界に特化した形ではあるが、テクノロジーによるソリューションとしては、広く見られる形態だ。これからは、より広い領域でテクノロジーによる課題解決を実現する「スタートアップ」が、今よりもさらに多く登場することが期待される。

img: @Press, stacc