中国ドローン市場、2020年に1兆円規模に?国家戦略「メイドイン・チャイナ2025」のインパクト

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中国のドローン市場は年率40%で成長し、2020年までに産出額ベースで600億元(約1兆円)に達する見込みだ。この数字は2017年末に中国政府機関の情報工業化部(省庁の1つ)が発表したもの。

年率40%という野心的なターゲットを掲げ、国内のドローン産業育成に向け、政府支援を増加させる構えだ。さらに2025年までには、この3倍となる1800億元に拡大するという大胆な試算も明らかにした。

すでにDJIやEhangなど、グローバル市場で強い影響力を持つプレーヤーが存在しているが、今後さらなるプレーヤーの登場とプレゼンスの高まりが予想される。

ドローン市場の先行きについて、中国がこれほど強気の予想を発表する背景には国家戦略「メイドイン・チャイナ2025」があると考えられる。

世界のドローン市場に大きな影響を与える可能性の高い「メイドイン・チャイナ2025」の概要を紹介しつつ、実際どのような取り組みが実施されているのか、その最新動向をお伝えしたい。

米国が警戒する中国の野心的製造業国家戦略

「メイドイン・チャイナ2025」は中国国務院(日本の内閣に相当)が2015年5月に発表した、中国ブランドの樹立や製造業の生産性向上、環境面での改善を推し進め、2025年までにドイツや日本に並ぶ製造強国入りを目指すとする国家戦略だ。

この戦略においては優先度の高い10セクターが選出されている。

  1. 次世代情報通信テクノロジー
  2. ハイテクマシン、ロボティクス
  3. 航空宇宙
  4. ハイテク造船テクノロジー
  5. ハイテク鉄道テクノロジー
  6. 省エネテクノロジー、新エネルギー自動車
  7. スマート電子機器
  8. 新素材
  9. バイオメディスン・高度医療デバイス
  10. ハイテク農業デバイス

これらの分野を育成・拡大していくのはもちろんのことだが、「メイドイン・チャイナ2025」が目指すのはそれだけではないようだ。

米国の政策に影響力を持つとされる米国商工会議所はこのほど発表したレポートで、「メイドイン・チャイナ2025」を通じて中国が技術のローカライゼーション・内製化、海外技術の代替、そしてグローバル市場シェアの獲得・拡大を狙っていると指摘している。

特に上記セクターに関わる研究開発をローカライズし、グローバルサプライチェーンにおける優位ポジションを築き、これまで海外から購入・買収するなどしていた技術を自国でまかなってしまおうというもの。これによりグローバル市場での競争優位を構築することが可能となる。

これを実現するために、中国国内製造企業には多大な資金的援助が実施される見込みだ。

中国の7省庁と中国人民銀行(中央銀行)が2016年に発表したレポートでは国内銀行に対して、独自ブランドを立ち上げるための金融支援や知的財産に関わる保険など、国内製造企業向けのサポートを拡充するように促した。

さらに政府主導のファンドが数多く立ち上がっており、中国メディアによればその数は800近くに上り、ファンドの規模は累計で2.2兆元に達するという。

米国商工会議所がレポート内で、こうした動きは将来的にグローバル市場に歪みをもたらす可能性があるとして懸念を示しているほど、グローバル市場に多大な影響を与える戦略といえる。

「メイドイン・チャイナ2025」各省で加速する取り組み

「メイドイン・チャイナ2025」に関わる取り組みは中国各省ですでに始まっており、その勢いは増している印象だ。

広東省広州市では2017年8月に「メイドイン・チャイナ2025」のモデル都市づくりに関する実施計画を発表。次世代情報通信テクノロジー、人工知能、バイオメディスンなどに重点的に投資を行う計画だ。国内外の有力企業を誘致するほか、市内企業への技術改良支援、金融支援、人材支援、知的財産保護など全面バックアップを行うという。

また広州市では2017年11月にスマート科学テクノロジーパーク「2025パーク」が開設。スマートエレクトロニクス、ビッグデータ、人工知能、スマート製造、新エネルギーの5つの重点分野を統合したパークとして整備が進められる予定だ。同パーク内では銀行との連携により10億元のファンドも設置される見込み。同パークで予想される年間生産高は500億元に上るという。

重慶市でも2018年2月にスマート産業パークが開設。2025年までに、スマート産業に関わる企業30社、研究機関20団体を誘致する計画。また同時にテクノロジー人材20万人を招致するという。この重慶のスマート産業パークには中国の有名人工知能企業アイフライテック(iFlytek)がすでにオフィスを開設している。アイフライテックは同パークを拠点に観光、教育、司法分野などのスマート化事業に取り組むほか、人工知能専門大学を重慶市と共同で開設する計画だ。

人工知能に関しては北京でも専門産業パークが建設される計画もある。新華社通信によると、同パーク建設には138億元(約2,300億円)が投じられるという。400社ほどの企業を誘致し、500億元の年間生産高が見込まれている。

このほかにも「メイドイン・チャイナ2025」に関わる取り組みは頻繁に地元メディアに取り上げられており、今後さらに増えてくる見込みだ。

テクノロジーの進化スピードが指数関数的に増しているといわれる現在、もしかするとグローバル経済におけるパワーシフトのスピードも加速しているのかもしれない。日本もキャッチアップする姿勢が重要になってくるのではないだろうか。

img: Unsplash

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