ここ何年かは動画の時代が続いている。ご存知の通り、YouTubeをはじめとしたさまざまな動画プラットフォームが現れ、それに追随するようにFcebookやInstagramなどもコンテンツの重きを動画へとシフトし始めている。
またライブコマースなど、動画を利用したマーケティング活動も盛んになってきている。
これら動画サービスの成功の鍵は、そこに使われている技術や仕組みが握っていると言っても過言ではない。使い勝手が悪いと視聴者からは敬遠されがちになるからだ。
今回、映像の中の気になる箇所にタップするだけで、視聴者の求める情報に辿りつけるというサービスが登場した。
パロニム株式会社が、インタラクティブ動画技術「TIG/ティグ」というサービスを開始。これは、映像の中の気になる箇所にタップするだけで、視聴者の求める情報に直感的に辿りつけるというパロニムが独自開発したインタラクティブ動画技術だ。
今後、国内外のさまざまな動画を活用する企業に対して、サービス・技術提供を行うことで企業ブランディング、動画マーケティング、動画広告配信に至るまで幅広く支援体制を整えていく方針だ。
ゴールドウインのプロモーション動画に採用
第1弾コンテンツは、株式会社ゴールドウインのアウトドアブランド「THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)」のプロモーション動画に採用された。
プロモーション動画内に登場する商品をタッチするだけで、商品購入ページや商品紹介ページに簡単にアクセスできる仕掛けとなっている。
「TIG/ティグ」の活用で、動画を通じて「THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)」の持つブランドロイヤリティを高め、商品特性を訴求するとともに、ユーザーをスムースに購買行動へと繋ぐ。
また、今後はゴールドウインが取り扱う他のブランドのプロモーション動画にも順次採用していく予定だ。
映像内の対象アイテムにタッチするだけ
これまでは映像の中に存在する情報を調べる手段として、検索エンジンに依存しがちだったが、TIG技術を導入した映像は、映像内の対象物箇所にタッチするだけで、予め埋め込まれた対象物情報をストックすることができる。
さらにストックしたアイテムをタッチすることで遷移先のウェブページにて商品情報や場所、人物、音楽など、さまざまな情報を入手することができるのだ。
実際にザ・ノース・フェイス「LIFE WITH FIREFLY」のプロモーションサイトにアクセスしてみた。
このプロモーションでは、山登り用とキャンプ用2つの商品カテゴリが紹介されている。アクセスした先の動画をクリックすると、山登り用とキャンプ用の二つの場面で出演者たちが、アイテムを着用している動画が再生される。右上のON/OFFボタンをONにすると、動画内で着用されているアイテムのアイテム名が表示され、カーソルを合わせると、商品のイメージ画像が現れる。
気に入ったアイテムがあった場合、その箇所をクリックすると、動画画面右端にそのアイテムがストック表示されていく。ストックされたアイテムをクリックすると、値段、サイズなどの詳細ページへと遷移し、そこから購入することができるのだ。
非常に簡単で、しかもこれまでの単なる画像での紹介ではなく、実際に着用している動画が観れるので、視聴者には非常に説得力を持つことになる。ユーザーはアイテムの背景にあるストーリーに魅力を感じることで、今までにない選択肢を獲得することができる。
また、ユーザーが検索するのではなく、動画が自動的にアイテムを紹介してくれるというのも大きなポイントだ。検索する手間が省かれており、ブランドコンセプトへの共感を得ながら購入導線を敷いているというユーザーにとって魅力的なサイトとなっている。筆者も思わず購入してしまったほどだ。
この技術は、映像を極力汚さないデザイン(UI)や、動画のストーリー性を分断させないなど心地良いユーザー体験(UX)を特徴とし、テレビや映画レベルのコンテンツにも技術提供できることを目指しているという。
また、映像に情報を付与(TIG化)する編集ツールにおいては、指定した対象物を高確率で自動追従できる画像解析・画像追従技術により、非技術者でも短時間で簡単に編集できるシステムの開発を進めている。
中国発のライブコマース。日本でも多くのサービスがスタート
では、このような動画を利用した販売体系を通し、ユーザーはどういった購買体験をしているのだろうか。
——個人が「ジャパネットたかた」になれるライブコマースは、2016年に中国で流行の兆しを見せ始めた。
2016年に中国のライブ配信利用者は3.25億人を超え、インターネット人口の45.8%が利用していることになった。中国のアリババグループのECサイト淘宝(タオバオ)の中には、1人で年間50億円売り上げた有名な張大奕(Zhang Dayi)というセレブが登場し、その存在は伝説となった。
インフルエンサーは、ライブ中継しながら、視聴者の「その洋服の着丈を確認したい」「実際の使い心地を教えて欲しい」といった質問に答えていく。
試着している人の身長もボードに書いて映像に映り込むようになっているのも特徴的で、ライブ配信を通じて、インフルエンサーに自分を「投影」してバーチャル試着を体験することができる。
中国のEコマースでは、偽物の販売が行われていることや、写真だけでは商品の質が判断しにくいという課題を抱えていた。このことが、中国におけるライブコマースの普及につながったと言われている。
また、日本でもここ最近で、さまざまな企業がライブコマース事業に相次いで参入している。
Candeeが2017年6月にライブコマースアプリ「Live Shop!」の提供を開始。同年7月には、メルカリがライブコマースサービス「メルカリチャンネル」を開始、現在は一部ユーザーのみに配信機能を提供していて、1日30人程度のユーザーがライブ配信をしている。
また2017年9月にはBASEが 、登録店舗が商品や店をライブ配信で紹介できる機能「BASEライブ」を始めた。俳優の山田孝之氏が取締役を務めるライブコマース「me&stars」が今冬リリースされる予定で、さらに東大発スタートアップのFlattがライブコマースアプリ「PinQul」を同年10月に発表したばかりだ。
ライブコマースに参入するのはスタートアップだけでない。日本のファストファッションブランドの代表格であるGU(ジーユー)も、専用アプリで音声を通じて著名人と会話が楽しめるコンテンツ「GU CURATORS ROOM」を2017年11月30日まで期間限定で立ち上げ、実験的にライブコマースを始めている。
画像から動画へ進化、拡大するEC市場
経済産業省によると、平成28年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、前年比9.9%増の15.1兆円まで拡大した。また、平成28年の日本国内のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は、インターネット技術を用いたコンピューターネットワークシステムを介して、商取引(受発注)が行われ、かつ、その成約金額が捕捉されるBtoB-ECは同1.2%増の204兆円に、コンピューターネットワークシステムを介して、商取引(受発注)が行われ、かつ、その成約金額が捕捉されるBtoB-ECは同1.3%増の291兆円に拡大している。
世のコンテンツの重要度が画像から動画へ移行しつつあり、その販売システムもまた「動画」というコンテンツを介して行われるようになってきている。今回の「TIG/ティグ」のように、視覚的、感覚的に動画視聴から購買までをワンストップで完結できるシステムは今後ECの拡大と共に広がっていくだろう。新しいマーケティング方法として確立されるかどうか期待したいところだ。
img: THE NORTH FACE , @Press