高度経済成長を体験した団塊の世代やX世代とは異なる消費観を持つミレニアル世代。これまで買うのが当たり前と思われてきた自動車や家も買い控える傾向がある。
お金について、ミレニアル世代は他の世代と少し違った考え方を持っているようだ。たとえば米国のミレニアル世代は、X世代や団塊の世代に比べ、お金に関する明確なゴールを設定しているが、最新ガジェットや服に使ってしまう傾向が強いなどの特徴がある。
今回は米ミレニアル世代のお金にまつわるデータを見ながら、この世代がどのようにお金と向き合っているのか、その実態を探ってみたい。
仕事と収入は減り、借金は多い。前途多難なミレニアル世代
ミレニアル世代に注目が集まる理由の1つは、他の世代に比べ数が多く、経済・社会的なインパクトが大きいと考えられているからだ。米国では、2015年時点でX世代6100万人、団塊の世代7700万人に対して、ミレニアル世代は9200万人と最大の世代グループとなった。
消費やお金に関して、他の世代と比較した米ミレニアル世代の特徴は、所得の減少、債務の増加、それにともなう消費の優先順位の変化だ。
ゴールドマン・サックスによる米労働統計局データ分析によると、ミレニアル世代のなかでも特に若い世代で就労機会と収入レベルが下がっており、2000年から収入中央値は下がり続けていることが分かった。
一方で、学生ローンを含む債務額は増加傾向だ。米国に住む25歳の学生ローン債務額中央値は2003年は約1万ドルだったのに対して、2013年には2万ドル以上と倍増している。
就労機会と収入の減少、そして債務増加に直面しているミレニアル世代は、家を買うという選択肢の優先順位をかなり下げているようだ。ピュー・リサーチ・センターの調べでは、米国の18〜31歳の層で家を持っている割合は、1968年には50%以上だったが、2012年には20%まで減少していることが明らかになっている。
自動車社会と呼ばれる米国だが、ミレニアル世代は自動車購入の優先順位も下げている。ゴールドマン・サックスが実施した調査では、ミレニアル世代の30%が自動車を買う計画はないと回答。また25%が重要だが優先度合いは低いと回答しているのだ。自動車が絶対必要だと回答したのは15%にとどまっている。
変化の激しい時代を生き延びる、ミレニアル世代のお金の扱い方
このような状況下にある米ミレニアル世代はどのようにお金と向き合っているだろか。
バンク・オブ・アメリカが23〜37歳のグループを対象に実施した調査(2017年版)では、ミレニアル世代はX世代や団塊の世代と同じくらい資産管理をしっかり考えていることが明らかになった。
貯蓄をしている割合はミレニアル世代が63%だったのに対して、X世代64%、団塊の世代75%と、特に大きな差は見られない。また、お金を使う前に予算を組むという割合は、ミレニアル世代が54%、X世代54%、団塊の世代57%とこちらも大きな差はなかった。バンク・オブ・アメリカは、米国ではミレニアル世代は貯蓄を含めた資産管理に興味がない・下手と見られていたが、調査結果を踏まえると他の世代とあまり変わらないと指摘している。
この調査では、ミレニアル世代の貯蓄額がこの数年で改善傾向にあることも明らかになった。2015年、1万5000ドル(約160万円)以上の貯金をしているミレニアル世代の割合は33%だったが、今回調査では47%に増加。さらに10万ドル(約1070万円)以上を貯金している割合は、8%から16%に増加した。
こうした結果となった背景にはミレニアル世代のお金に関わるストレスが大きく関わっているようだ。
ミレニアル世代の間で、お金に関わるストレスでもっとも割合が多かったのが35%の「十分な貯蓄がないこと」だったのだ。貯蓄の目的は「いざという時のため」が64%でもっとも多く、次いで「老後の蓄え」49%、「家の購入」33%だった。
変化の激しい時代、何が起こるか分からないという先行き不透明感を強く感じており、それが貯蓄の増加につながっているようだ。
Charles Schwabの調査でも、ミレニアル世代の特徴が顕著に現れている。
資産運用などお金に関わる計画を立てているかどうかという質問に対して、ミレニアル世代は74%が計画を立てていると回答した一方で、X世代は62%、団塊の世代は58%だったのだ。また、計画を資産運用のプロに任せているという割合は、ミレニアル世代が72%、X世代が64%、団塊の世代が65%となった。先行き不透明な時代、資産管理の重要性をミレニアル世代がもっとも認識しているといえるのかもしれない。
Charles Schwabの調査で明らかになったミレニアル世代の特徴
タクシーやUberをよく使う割合は、X世代29%、団塊の世代15%だったのに対して、ミレニアル世代は53%と圧倒的に多い。Uberなどデジタルサービスへの適応力が高いということに加え、自動車を持たない世代だからこそタクシーやUberをよく利用しているとも考えられる。
最新のガジェットに関しても、ミレニアル世代の76%がよく購入すると回答。一方で、X世代は66%、団塊の世代は49%にとどまる結果となった。また、必要ではない服に関しては、ミレニアル世代の69%が購入してしまうと回答している一方で、X世代は53%、団塊の世代は45%にとどまった。
将来の心配から資産運用計画を立て、貯金をしているミレニアル世代だが、ガジェットや服はついつい買ってしまうようだ。もしかすると、家や自動車といった大きな買い物を控えているために、ある程度の余裕ができ、その余剰分でガジェットや服を買っているのかもしれない。
ミレニアル世代はお酒やタバコの消費が他の世代に比べ少なくなっているという調査もいくつかある。就労機会と収入が減少するなかで、やっと貯めた資産を不健康になるために使うのは控えたいと考えているのではないだろうか。ウェルネスを高めるための支出も増えているといわれている。ミレニアル世代のお金との向き合い方がどのように進化していくのか、今後も注目していきたい。
文:細谷元(Livit)