Googleが仮想通貨とICOに関する広告を2018年6月から禁止にするというニュースが話題となっている。またFacebookではすでに仮想通貨関係の広告が2018年1月に禁止していたり、NEM(ネム)の不正流出が起こったりと、最近は仮想通貨についてのネガティブなニュースが多い。
しかし、本来仮想通貨は現在までの貨幣経済を電子化し、今まで以上に安心安全な取引を行えるものであるはずだ。今回、仮想通貨の本来のメリットを活かし、認定森林の支援拡大を目的とした取り組みが行われる。
森林吸収源をCO2クレジットとして認証・価値化する制度である「フォレストック認定制度」を実施している株式会社フォレストックは、森林保全活動をサポートするフォレストック認定制度のさらなる普及、拡大を目的として、今年度内を目途にICOの実施を検討していると発表した。
さらに、これまでのCO2吸収量クレジットの流通プロセスをブロックチェーンを活用して管理することにより、より高い信頼性の確立を図る。これにより、国内認定森林のさらなる支援拡大を目指す方針だ。
独自の仮想通貨「トークン」の購入で資金調達するICO
ICOとは「Initial Coin Offering(イニシャルコインオファリング)」の略称だ。日本では、新規仮想通貨公開などと訳される。仕組みを簡単に説明すると、企業が「トークン」と呼ばれる独自の仮想通貨を発行し、そのトークンを世界中の投資家に購入してもらうことで資金調達をする。
プロジェクトの起案者がインターネットを通じて多数の個人から資金調達をするという点では、ICOはクラウドファンディングに似ている。出資の見返りとして特定の商品や権利を購入できる購入型クラウドファンディングが広がっているが、ICOではトークンを購入するものだと考えればイメージしやすいだろう。
一方で、購入に用いる通貨が円やドルといった法定通貨ではなく仮想通貨であるということと、取得したトークンを株式のように売買できるということがICOならではの特徴だ。
民間では唯一のCO2クレジット認定制度「フォレストック認定制度」
フォレストック認定制度とは、日本国内森林(FSC/SGECの森林認証又は、森林経営計画認定森林)を対象としたもの。適切かつ持続的な森林管理に加え、生物多様性保全が図られている森林を認定し、森林から創出されたCO2吸収量を認証し、CO2クレジットの発行、売買流通、カーボンオフセットなどへの利用を認める制度だ。
クレジットの購入代金は認定森林へ渡り、植栽や間伐、林道の整備、林業機械の購入などに活用されるという。
国連・日本政府と並び、民間では唯一のCO2クレジット認定制度であるという。
ICO実施で森林を守るサポーターを増加させる
今回のICO実施の目的は、森林を守るサポーターの増加により、森林整備・保全の拡大および促進を図ること。
これまでは、フォレストック認定制度を通じて国内森林を支援するサポーターの多くは、企業や団体だったという。これは、個人が森林保護や生物多様性保全に関心があっても、直接的に支援・協力する手段が分からず、実行しづらいということだった。
同社では、こうした背景の中、この課題に対してICOを有効な解決手段だと考えた。フォレストック制度の認知・拡大を図るとともに、仮想通貨の購入を通じて、より簡単に森林保護のサポート活動に参加できる利便性に優れた環境を構築することで、森林保護への啓発、個人サポーターの増加を目指す。
そして、結果として認定森林への還元が増加するとともに、森林保護のサポート活動を国内森林のみならず、海外にまでに展開することが可能と考えているという。
ICOとブロックチェーンの活用を検討するにあたり、社外の有識者および専門家を交え、ICO実施後の可能性ついて議論を重ねてきた。
そして、今年度内を目処にトークンセールの実施に向けて、仮想通貨取引所を含め、アライアンスパートナー候補企業との具体的な検討、協議を開始した。
また、CO2クレジットを管理する登録簿システムにブロックチェーン技術を活用する。これによりCO2クレジットの発行、認証、管理の流通プロセスにより高い信頼性が確立する。
流通においては、CO2クレジットの購入単価を少額にすることが可能なため、個人サポーターの拡大を見込んでおり、グローバルにCO2クレジットの所有権の移転が行えるよう、アップグレードも検討しているようだ。
今後の具体的な検討内容として、認定森林に対してはクレジットの購入代金に加え、森林整備・保全の実施をマイニングとし仮想通貨の付与や、クレジットの購入企業の顧客や消費者の参加も検討する方針だ。
仮想通貨のイメージを大きく変えるか?
「なるほど、仮想通貨にはこういった活用法もあったのか」。このニュースを読んでこう思った。冒頭でも述べたが、仮想通貨は最近ではネガティブなニュースが多い。
しかし、もともとは我々の生活をより豊かにすべく、生み出されたものである。今回はこれまでのように、投資など「お金」だけを目的とするのではなく、そこに森林認定支援という人類にとって大切な目的をからめることによって、人に与えるイメージは大きく変わるのではないか。
このプロジェクトが成果を出し、仮想通貨にとっていい作用をもたらすことを期待したい。