少し前の日本の働き方と現在の働き方を比較した場合、あなたはどの程度変化があると感じるだろうか?副業を解禁する企業が増加したり、裁量労働制やフレックスタイム制を取り入れる企業、中にはワーケーションを取り入れる企業もある。
このように「働き方改革」推進の成果は、ある程度世の中に浸透してきたといえる。では、その実情や働き手はこの変革をどう感じているのだろうか?
エン・ジャパン株式会社は、同社が運営する「入社後」までを見据えた日本最大級の総合求人・転職支援サービス「エン転職」上で、ユーザーを対象に「働き方改革」についてアンケートを実施、6,768名から回答を得た。
43%の企業が「働き方改革」に取り組む
まず、「今いる会社では、働き方改革に取り組んでいますか?」と聞いたところ、43%が「取り組んでいる」と回答した。在籍している企業規模が大きくなるほど、取組比率は上昇する。100名以下では27%、1,001名以上では66%という大きな乖離がみて取れる。
また、「自社が働き方改革に取り組んでいる」との回答者に、具体的な取り組みを質問した。第1位は「ノー残業デーや深夜残業禁止など、長時間労働の見直し」(69%)、第2位は「有給休暇取得の推進」(48%)、第3位は「業務プロセス改善やツール導入など、仕事の進め方の見直し」(29%)だった。
規模別で取組比率にギャップが見られた項目は「有給休暇取得の推進」や「女性管理職登用など、女性活躍の推進」だった。
大企業ほど、働き方改革を進めており、規模が小さくなるほど働き方改革に関心がないことが分かる。企業は大きくなればなるほど、組織や業務体制が複雑になるため、改革の必然性を感じることが多いのだろう。
必ずしもメリットばかりではないことも
次に、「会社の働き方改革に対する取り組みで、あなたの働き方は変わりましたか?」ときくと「変わった」が22%、「変わらない」が51%という結果になった。企業規模別の大きな差異は見られなかった。
「変わった」との回答者からは、
- 「長時間労働の見直しにより、部署の雰囲気および自身の仕事に対する姿勢がより効率的になった。また、周りの残業状況を気にせずに退勤しやすくなり、プライベートの予定を立てやすくなった」(26歳女性、101~300名の企業)
- 「裁量労働制が採用されたので、勤務時間の自己管理幅が増えました。深夜の会議があった翌日はゆっくり出勤するなど、私自身の裁量でコントロールしてもいいようになっている」(43歳男性、1001名以上の企業)
というコメントがあった。
一方で、
- 「会社の新たな政策にのっとって、まるで公務員のように必ず定時上がりをする社員の分まで仕事をしなければいけなくなった。残業時間もさらに増えている」(30歳男性、100名以下の企業)
- 「残業が出来なくなり、家での仕事が増えた」(38歳男性、1001名以上の企業)
という声も見られた。
働き方の変化は、なにもメリットばかりではないことがわかる。残業時期案がさらに増える、あるいは残業禁止で、仕事持ち帰りといった新たな課題も無視できない。
改革しても制度や仕組みが現場の実態に合っていないケースも
会社の働き方改革に対する取り組みで、自身の働き方が「変わらない」「どちらとも言えない」との回答者の理由は、第1位「制度や仕組みが、現場の実態に合っていないため」(48%)、第2位「担当している仕事の量が多いため」(39%)、第3位「できた制度や仕組みを実際に使う機会がないため」(31%)だった。
これについては、
- 「営業職で外回りが終わる時刻が定時近くになってしまうため、ノー残業デーや早上がりなどがしにくい」(23歳男性、1001名以上の企業)
- 「上層部が躍起になって改善を進めようとしているが、業務量が変わらず人不足のため全く改善されない」(24歳男性、101~300名の企業)
- 「残業を無くすということだけを強調するだけで、業務分担の見直しや効率化のための仕組み作りなどを実施していない」(29歳男性、1001名以上の企業)
- 「本社は取り組まれているが、現場では人員不足や業務負担が大きいのが実状で、浸透するには時間を要すると感じるし難しいと思う」(30歳女性、301~500名の企業)
などの声が挙がっている。
このように改革を行なっていたとしても、制度や仕組みが現場の実態に合っていないケースもあるようだ。企業上層部の判断だけではなく、現場がうまく回るような最良の仕組みづくりを必要としている。そこには最大限の効率化と、それによるパフォーマンスのアップを目指す必要があるだろう。
個人に必要なことは仕事の進め方や取り組み方の工夫
「働き方改革について、個人でできること」を質問すると、第1位「仕事の進め方や取り組み方を工夫していく」(56%)、第2位「周囲と協力する体制を作っていく」(44%)、第3位「効率化に対する意識づけを行う」(39%)だった。
具体的には
- 「自分しか出来ない仕事を増やしていくのではなく、もし自分がいなくなってもすぐ対応できるような環境作りをしていくべきだと思う」(25歳女性、301~500名の企業)
- 「所属長が各々の業務負荷を見極め、適切に分散させると共に、個人では効率的に業務を遂行する必要がある」(29歳男性、501~1,000名の企業)
- 「知識を深めれば、仕事の効率を上げることもでき、仕事の進め方や取り組み方にも工夫ができると思う」(34歳女性、1,001名以上の企業)
というコメントが挙がっている。
個人でできることの1位は、「仕事の進め方や取り組み方を工夫していく」ことで約半以上の人がそう考えているようだ。しかし、この工夫についても個人を優先するのではなく、職場の環境や体制を配慮したものが必要だ。
働き方改革の1つフリーランスの活用とは?
働き方改革の1つに、企業がフリーランスを活用する方法がある。しかし、現状では、フリーランスは数が増えているにも関わらず、企業におけるフリーランスの活用は進んでいない。経済産業省の調査では、およそ47.6%の企業が「現在活用しておらず、今後の活用も検討していない」と回答した。
理由としては「費用対効果が不明」が28.2%と最も高く、「技術・ノウハウ・機密情報等の流出懸念」が23.3%と続いた。
さらに「適切なフリーランス先が見つからない/相談相手がいない」や「活用領域が限られており、効果が小さい」「個人への契約締結に対する不安(社会的信用力の不安)」がそれぞれ17%となっている。
それとは別に、リクルートワークス研究所が発表した機関レポート「フリーランスがいる組織図の描き方」では、企業はフリーランスの活用を進める必要があるとしている。
レポートでは、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授の高橋俊介氏は、その理由として、慢性的な労働人口の減少、特に専門的なスキルを持つ人材の不足を指摘している。
たとえば、IT分野の高スキル人材ほど「一つの企業に束縛されるのを嫌って独立したり、フリーとして働いている」傾向があるうえに、彼らを正社員雇用するには高額な報酬が必要だからだという。
また、高橋氏はビジネスモデルの「擦り合わせ型」から「組み合わせ型」への変化を指摘し、“勝てる”ビジネスをつくるためにもフリーランスの活用が不可欠であるとしている。
企業、働き手それぞれにメリットをもたらす改革を
今回の調査では、「働き方改革」は着実に浸透していることが分かった。しかし、その一方で新たな課題も出てきている。
これからはミレニアル世代が働き手の中核を担う。ミレニアル世代の仕事に対しての価値観や考え方は今までのものとは異なっているため、企業は彼らをどううまく活用するかが問われることだろう。企業、働き手それぞれにメリットをもたらす改革こそが、真の「働き方改革」なのだ。
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