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対戦型オンラインゲームを競技として行う「eスポーツ」がオリンピック種目になるかもしれない。今年の冬季オリンピックでは、このような噂が流れた。
国際オリンピック委員会(IOC)のオリンピック専門チャンネル担当者がロイター通信の取材に、eスポーツ現象は無視できないもので、この分野をさらに深く模索していくと発言したことが、オリンピック種目入りの憶測につながったのかもしれない。
オリンピック種目入りには賛否両論があり、今後どのような展開になるのかは分からないが、eスポーツを含むゲーム市場の拡大・盛り上がりは、IOCだけでなく大手メディアや企業も無視できないものになっているのは確かだ。市場拡大にともないゲームを生業とするプロが生まれていることも興味深い。
今回はeスポーツを含むゲーム市場の活況ぶりを数字で追いつつ、アマゾンやYouTubeなど大手テック企業がゲーム市場をどのように取り込もうとしているのか、その取り組み事例を紹介していきたい。
ゲームプレーヤー数22億人、11兆円規模の市場
まずゲーム市場の全体感を見てみたい。ゲーム・eスポーツ市場を専門とする調査会社Newzooの「Global Games Market Report」によると、2017年の世界のゲームプレーヤー数は22億人、市場規模は売上ベースで1089億ドル(約11兆円)と見込まれる。前年比では7.8%の伸びとなる。
今後も約6%の伸び率を維持し、市場規模は2018年に1158億ドル、2019年に1227億ドル、そして2020年には1285億ドルに拡大していく見込みだ。
同レポートではゲーム市場を「パッケージ/ダウンロード」「ブラウザー」「コンソール」「タブレット」「スマートフォン」に分けている。このうち最大はスマートフォンで全体の32%を占めた。2番目はコンソールで、割合は31%。マイクロソフトとソニーが合わせて140億ドル以上という売上規模になったという。3番目はパッケージ/ダウンロードで23%、4番目はタブレットで10%、そして5番目はブラウザーで4%となった。
2016年比で特筆すべきは、ゲーム市場全体でスマートフォンが占める割合が29%から32%に高まったことだ。中国を含めた新興国のスマホ普及が進むことで、ゲーム市場におけるスマホ割合は今後も高まっていくと考えられる。レポートでは、スマホ割合が2018年に35%、2019年に38%、2020年に40%まで高まると予想している。
ゲーム市場の地域別割合からも、スマホの勢いが強まっていくイメージを持つことができる。
2017年世界のゲーム市場1089億ドルのうち、最大となったのがアジア太平洋で47%(512億ドル)だった。アジア太平洋は伸びしろのある新興国が多いだけでなく、世界のミレニアル世代の60%が住むとされる地域。特にインドネシアなどの新興国ではPCよりスマホの普及速度のほうが速いという特徴を持っている。
アジア太平洋に次いで割合が大きかったのは北アメリカで25%。欧州・中東・アフリカは24%、そして中南米が4%という割合だ。
国別での最大は中国で全体の25%(275億ドル)、2番目は米国で23%(251億ドル)だった。中国の巨大市場がアジア太平洋全体を引き上げているという見方もできる。
世界最大である中国のゲーム市場は今後も10%以上の伸びを見せ、2020年には337億ドル(約3兆5000億円)に達するという。世界全体における割合は26%に拡大することになる。
40%で拡大するeスポーツ市場
ゲーム市場の拡大はゲーム人口の増加につながり、それは結果的に、よりコアなゲームプレーヤーによって構成されるeスポーツのすそ野を広げることになっていくはずだ。
前出のNewzooはeスポーツ市場に関するレポート「2017 Global Esports Market Report」で、2017年のeスポーツ市場規模を6億9600万ドル(約730億円)と推計している。前年比では41.3%増と、猛烈な勢いで拡大していることが分かる。2020年の予想市場規模は14億8800万ドルと現在の2倍以上だ。
eスポーツ市場規模の算出には「広告」「スポンサーシップ」「放映権」「関連商品・チケット販売」「ゲームパブリッシャー料金」の売上額が使われている。
国・地域別の割合は北アメリカが37%(2億5700万ドル)で最大。次いで中国が15%、韓国が7%、その他が41%となった。北アメリカ市場ではスポンサーシップの比重が高く、域内市場全体の2億5700万ドルのうちスポンサーシップが1億1300万ドルを占めた。
eスポーツに限らず、スポーツが盛り上がるためにはファン・観戦者が必要不可欠だ。
eスポーツにおいては、2017年には観戦者数が前年比で20%近い伸びとなり、3億8500万人に達したと推計されている。このうち熱心な観戦者は1億9100万人、カジュアルな観戦者は1億9400万人となっており、熱心な観戦者の地域別割合はアジア太平洋が51%で最大となった。次いで欧州が18%、北アメリカが13%という結果になっている。熱心な観戦者数は2020年には5億8900万人に増える見込みだ。
2強のライブストリーミング市場
ゲーム市場、eスポーツ市場ともに急速に拡大している様子が見て取れるが、この市場機会を逃すまいとする企業は少なくない。
ゲーム市場における1つのトレンドは、ゲーム実況のできるライブストリーミングサービスや機能の導入・拡充であろう。
主要なライブストリーミングサービスは「Twitch」と「YouTube Gaming」だ。
米国発のTwitchは、もともとゲーム専用として2011年にローンチされた動画配信サイト。2015年にアマゾンに10億ドル(約1050億円)近くで買収された。現時点で、ライブストリーミングサービスのなかでは最大のユーザー数を誇る。streamlabsによると、2017年10~12月期の視聴者数は78万8000人と、2位のYouTube Gamingの30万8000人を大きく上回っている。
動画をライブ配信するストリーマー数も2万7000人と、YouTube Gamingの7000人を大きく上回る。
Twitchにはさまざま拡張機能があり、ストリーマーごとにカスタマイズすることが可能だ。「Gear on Amazon」という拡張機能では、アマゾンのアフィリエイトプログラムをTwitch内に組み込み、プロダクトを紹介・販売することができる。ゲーマーならではのPCモニターやマウス、ヘッドフォンなどが多いようだ。
一方、YouTube GamingはTwitchに後塵を拝しながらも、急速にユーザー数を増やしており、今後Twitchとストリーミング市場の2強体制を築いていくものと思われる。streamlabsによると、2017年通年でYouTube Gamingでは、ストリーマー数が343%増加したことが分かった。一方、Twitchのストリーマー数増加率は197%だった。
このほかにも「Mixer」「Facebook」「Periscope」などが追随している。
特にデジタルネイティブであるミレニアル世代やZ世代にとって、日常に溶け込んでいるといっても過言ではないゲームの世界。ゲームがソーシャルメディアのような役割を担うケースもあるという。若い世代のライフスタイルにゲームがどのような影響を与えていくのか、今後の動向に注目していきたい。
文:細谷元(Livit)