寄付は社会を改善する手段。ブロックチェーン技術によって寄付は日本で文化として根付くか

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東日本大震災などの大きな震災に見舞われた時、私たちは被災者を想って寄付をする。それは世界中から集まるものでもあるし、世界で同様のことが起こった時はもちろん日本からも寄付が送られる。

しかし、そういった場面以外での寄付という行為はおそらく私たちの生活には馴染んでおらず、稀な行動として取られることが多いだろう。ただ、欧米では寄付という行為は「ノブレス・オブリージュ」の言葉にも表れるように、持てる者の義務として当たり前の行動になっている。

日本で寄付という行為がいまいち根付かない原因の一つして、「実際に寄付が届くのかよくわからないから」、あるいは「めんどうだ」ということがあるのではないだろうか。

では、インターネットで簡単に寄付ができ、さらに成果報告や助けられた人からの声が届くとなったらどうだろうか。

株式会社ナノコネクトは、ブロックチェーン技術(分散型台帳技術)を活用して、寄付市場の透明化・活性化と寄付の成功体験を共有するコミュニティを作り上げる寄付プラットフォーム「donaプラットフォーム(donaPF)」の構築に向けた技術の基礎研究を終え、システムの開発に着手したと発表した。2018年中にリリースを予定している。

ブロックチェーン技術で「寄付金の流れを透明化」

donaPFは、ブロックチェーン技術を活用した日本発の寄付プラットフォーム。(ホワイトペーパーはこちらから)

donaPFの中核となるブロックチェーン技術は、高い透明性や信頼性をインターネット上で確保できることから多くの分野で活用が期待されている。

donaPFではこのブロックチェーン技術の特徴を生かし、「寄付金の流れを透明化」する。

また、「寄付先に対する情報、評価、寄付の成功体験を共有するコミュニティを構築」することで、寄付市場への関心と理解と共感を広め、寄付を「よくわからないまま金銭を投じ、自己満足を得る手段」から「支援する活動を自ら選び、成功体験を実感し、互いに共有しながら社会を改善していく手段」に変えるための新たな寄付モデルを生み出す。

用途を明確にした支援活動への寄付が可能に

donaPFには、以下の3つの特徴がある。

不信感を取り去り寄付市場を活性化

支援活動に対して用途を明確にした寄付が公開されることで、寄付金の流れを透明化する。これにより、社会貢献に関心はあるが寄付先の団体・NPO法人に対する不信感が妨げとなった潜在的な寄付者の寄付活動を促すことで、寄付市場の活性化を行う。

また、現状ではNPO法人の活動内容を判断できず、大きな団体の知名度のみで集金が行われている。NPO法人と寄付者、寄付者同士が相互に支援活動の情報をやり取りし、活動内容を評価するコミュニティを構築することで、支援団体の信頼性向上を図る。

そして、個人寄付の規模は増えつつあるが、頻度は少なく災害時の復興支援の側面が強い。非常時の助け合いだけでなく、寄付を「社会を変えていく手段」「社会に対する投資」として継続的で身近なものに変え、寄付市場の拡大を目指す方針だ。

このプロジェクトのロードマップは、以下のとおり。

次のトレンドは利益の寄付?

先日、AMPでは、社会的課題に事業を通して取り組む「ソーシャルベンチャー」を取り上げた。これらの企業が、扱う問題はホームレス支援や子どもの教育、ゴミ問題などさまざまだ。中には、事業で得た利益をすべて寄付に回すという形態もあるという。

米国ビジネス誌「Fast Company」ではそうした事業体を「philanthropic enterprise(フィランソロピック・エンタープライズ)」と呼んで取り上げている。

フィランソロピックの元は「Philanthropy」、一般的には企業による社会貢献活動の総称を指す言葉だ。NPOやソーシャルベンチャーのように活動を通じた直接的な課題解決よりも、利益の寄付による社会貢献に重きが置かれる。

「philanthropic enterprise」の例としてニューヨークのヴィーガンレストラン「P.S. Kitchen」がある。ここでは「貧困のサイクルを断つ」ことをミッションに掲げ、利益はすべてチャリティーに寄付、ホームレスを従業員として雇用している。提供する料理も環境に配慮した食材が中心だ。

通常、貧困問題やホームレス支援に携わるNPOやソーシャルベンチャーは、住居や雇用の提供、就学支援など、社会課題を直接的に解決する活動を行う。得た利益は事業の継続や拡大のために活用される。

しかし、「P.S.Kitchen」は、環境への配慮やホームレスの雇用など、社会的責任を果たす動きはするが、それらが事業の中心に据えられるわけではないという。

同社はあくまで事業で得た利益をチャリティに寄付することにより、社会にポジティブなインパクトを与えることを目的としているのだ。

また、純利益をすべて寄付するという企業もある。米国のコンサルティングファーム「Impact Makers」を経営するMichael Pirron氏は、紹介動画のなかで自身のビジネスモデルは「フィランソロピーを従業員にも民主化する」ものだと話している。

一般人も寄付しやすい社会づくりに

冒頭でも述べたが、国内外の災害時には、世界中から寄付が寄せられる。しかし、日本で話題になるのは、著名人がいくら寄付したかということに終始してしまうことが多い。

多くを持っている者が困っている人を支援する、これは当然のことだと考える人は多いだろう。しかし、一般人だったとしても、支援できるものはすべきであろう。今回のdonaプラットフォームは寄付を従来の「自己満足の手段」から「社会を改善していく手段」に変えるという。その成果を期待したい。

img: PR TIMES

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