本業のビジネスの他に、別途月10万円の収入が増えるとしたら、おそらく生活はわりと変化する部分が多い。それが趣味もかねた副業であれば、時間を費やすことへのネガティブな面も少なく済むかもしれない。そう思い、「副業」を行なっている・始めたという声もちらほら聞くようになってきた。
働き方の多様性が認められはじめ、副業解禁になっている企業も増え始めた。これからは今まで以上に自分で何をするかを決断し、実行することが求められる社会なのかもしれない。
では、実際に働く人々は副業解禁をどう受け止めているのだろうか。株式会社ホールハートは、プロフェッショナル人材の副業紹介サービス「プロの副業」から副業に関する意識調査結果を公開した。
プロと即戦力を求める企業を「副業」を通して繋ぐサービス
「プロの副業」は以前、AMPでも紹介したプロフェッショナルスキルで働きたい人材と、即戦力を求める企業を「副業」を通して繋ぐサービスだ。
働き手一人一人のライフスタイルに合わせ、「週1」や「月1」から仕事を提供する。このサービスではちょっとした小遣い稼ぎではなく、あくまでプロフェッショナルスキルを持った人材が、複数の会社やプロジェクトに参画し、さらにスキルを磨いていくという就業モデルを指す。
約4年で副業を認める企業は2倍以上に
今回の調査対象はマーケティング・広告・デジタル・PR業界で働く113名(20歳以上)で、実際に同社エージェントが直接会って調査したものになっているため、かなりリアルな回答が得られているということだ。
2014年度の中小企業庁の調査「兼業・副業に係る取組み実態調査2014年」によると、2014年当時、副業を認めている企業はまだ15%にも満たない結果だった。
しかし副業促進の動きが活発になった今、その割合は徐々に増え始めているようだ。2018年2月現在、36.3%が「現在働いている企業では副業が認められている」と回答しており、2014年に比べ、副業を解禁している企業は着実に増加傾向にあり、約4年で2倍以上に達している。
企業の「副業」に関する意識が大きく変化してきている結果だろう。ただし、現在でも「副業NG」の企業は51.3%と半分以上を占めており、旧来の考え方を変えない企業もまだ多い。
企業の側に立ってみると、確かに副業に集中されて本業がおろそかになってしまっては困る、という考え方が主流なのだろう。しかしそれは、裏を返せば本業でのパフォーマンスに影響が出なければ副業をしても構わないと言っているようなものだ。最近では副業ができるほどの能力や余裕がなければ、本業で成果を出すことも難しいと考える企業もあるため、まさに今は過渡期といったところだ。
多数が実際に取り組むまでには至っていない
では実際に副業を行っている人はどのくらいいるのか。副業が認められている企業で、実際に副業をしている人の割合は26.9%にとどまっている。副業を認めている企業であったとしても、いまだに多くの人が実行には至っていないようである。
その副業の内容はというと、サイト運営や映像制作、フォトグラファー、ライターといった技術系の仕事が多い。中には、他会社のマーチャンダイジングやマーケティング業務など、現職のスキルを活かし他社の業務を担っているケースもあった。そして少数ではあるが、飲食業などの本業とは全く違う業種を副業にしている人もいるようだ。
副業への興味は高い
この図は副業が認められていない企業のビジネスパーソンの回答で、77.6%というその多くが「副業をしたい」と回答している。自身のノウハウをもっと効率的に活かしたい、今以上の報酬を獲得したいなど、様々な理由が想定されるが、働き方の多様性を世のビジネスパーソンは受け入れており、その流れに乗りたいと思っているのだろう。
実際に副業を行っているプロも含めた、副業に対してのリアルな回答をみてみよう。
- 実際のまずは副業から経験と実績をつみ、ゆくゆくは起業につなげたい。(30代男性)
- 現在企業勤めだが、経営の感覚が磨けない。副業を通して個人事業主として仕事を行うことでそれを磨きたい。(40代男性)
- 東京にいながら、自身の地元を盛り上げ地方活性化につながるような仕事を行いたい。(20代男性)
- これからは副業ではなく複業として平行して3つくらいの仕事を行い、スキルと経験を上げていきたい。(50代男性)
- 人生80年働くには副業しかないと思っている。(30代男性)
- 自社ではなかなか学ぶチャンスがないような事を学び、社外で何が起きているかを実際に感じて本業でも活かせるようにしたい。(20代男性)
- 現在の会社で2年後に新規事業を立ち上げたい。まずはスモールスケールで自身で副業として行い、本業での事業立ち上げに活かしたい。(20代男性)
これらの声から、彼らの求めるものはスキルアップ、年収アップ、人脈づくりや経験の蓄積、そして地域活性化ということがみてとれる。「副業」に求めることは人それぞれだが、自身の成長や社会に対する貢献など、ポジティブな理由が多くを占め、仕事に対する意欲の高さが伝わってくる。
副業をしない人。情報不足が原因である可能性も
「副業が認められている企業で副業を行っていない人」の残業時間を調査してみると、当たり前だが個人によってその差はバラバラだ。それは有休消化率に関しても、同様だった。逆に「副業をしている人」の残業時間、有休消化率に違いがあるかというとそうではなく、こちらも個人による差は大きいようだ。つまり、“本業の忙しさだけが副業をしない理由”ではないことがわかる。
すでに大きく成長している転職市場とは違い、まだまだ副業を紹介する機関は多くない。副業が認められていても実行にいたらない人が多いのには、こうした情報不足が原因である可能性も考えられるとしている。確かに副業をやりたいと思っていても、何から始めればいいのかわからず、調べてみても儲かる副業をうたった怪しげなサービスの紹介などが出てくることも多い。
今回のプロの副業のように、今後副業を事業としたサービスは増加していくだろう。その相乗効果によって、さらに働き方の多様性のスピードは加速すると思われる。
「エン転職」の大規模調査では88%が「副業に興味あり」
この調査とは別に、もっと大規模な副業についての調査もある。エン・ジャパン株式会社は、同社が運営する総合求人・転職支援サービス「エン転職」上で、「副業」についてアンケートを行ない、現在正社員で勤務する20~40代の5,584名から回答を得た。
この図をみると、88%が副業に興味を持っており、そのうちの83%が「収入のため」に副業を行いたいと思っているようだ。
その中でも実際に副業経験のある人は、33%。業種をみてみると、6割が接客系のアルバイトを経験している。手軽に始められるポイントサイトや、近年新たなビジネススタイルとして根付きつつあるクラウドソーシングなどがあがっている。今はまだ1%だが、おそらく今後はシェアビジネス(シェアリングサービス)がその割合を増やしていくことだろう。
こうしてみると、副業をすることへの意識は高く、副業内容をみても簡単に始められることが多いが、実際に実行に移している割合が少ないのにはどんな理由があるのだろうか?
これは副業をする際の難しさ(難しそうだと思う)を聞いた結果だが、第1位は「時間管理」。副業に割く時間を捻出しなければならないと考えた場合、いかに本業を効率的に行うかが鍵になってくる。副業はしたいが、今でも本業が大変なのに、これ以上効率化を行うことは難しい、と断念してしまうビジネスパーソンも多いのだろう。
今回のプロの副業のように、その人のプロフェッショナル性を活かした副業の選択肢が増えていけば、本業との相乗効果も生まれるかもしれない。ただし、そこで立ちはだかるのが企業の「副業禁止」だろう。副業を認めている企業でも、本業で得たノウハウを活かした副業は認めていないところも多いようだ。
しかし、本業で得たノウハウによって副業を成功させ、その成功体験によって得たノウハウを本業へ活かす、そんなサイクルを描けるのであれば企業もビジネスパーソンも副業先もWinWinになれるのではないだろうか。
今後盛り上がっていくであろうこの業界は、このサイクルを描ける選択肢を用意することが重要になってくるのかもしれない。
副業という人生を見つめ直す選択肢
終身雇用制や一つの企業に生涯をささげるといった働き方は、もはや通用しない時代になってきた。これからは、働き方の選択肢も増え、その中から、その人のライフスタイルに合った働き方を選択する時代だ。
副業もその一つ。プロの副業の調査では、「人生80年働くには副業しかないと思っている。」との声があったが、まさにその通りだ。これからどんどん高齢化が進むにつれ、定年後の身の振り方としての選択肢の一つとして、今から副業でスキルを磨いておくという生き方も視野に入れていく必要があるかもしれない。