女性活躍社会ということが叫ばれてからは久しく、その成果としてビジネスの現場で活躍する女性が一時期よりもかなり増えてきた、という実感値をあなたはどれほど持っているだろうか?
たしかに「イクメン」や「主夫」といったライフスタイルが浸透しつつある今、女性が働きやすい環境は我々の生活の中でも醸成されてきているのかもしれない。しかし、世界基準でみた時に日本の女性の社会進出はどれだけ進んでいるのだろうか?
残念なことに、世界基準で見た日本の中堅企業の「経営幹部の女性比率」はなんと世界最下位であることがわかった。
太陽グラントソントンは、グラントソントン加盟主要35カ国が実施する世界同時調査の一環として、2017年11月~12月に非上場企業を中心とする中堅企業(従業員数100人~750人)経営者の意識調査を実施した。その結果、日本の中堅企業における「経営幹部の女性比率」は5%で調査対象国中最下位だった。
経営幹部に一人も女性がいない中堅企業が69%も
世界35カ国の中堅企業経営者に、「自社の経営幹部の女性比率」について尋ねたところ、全調査対象国の平均は24%と前回調査よりわずかに低下、経営幹部における女性比率の平均が約4分の1であることが分かった。
調査を開始した2004年(全対象国平均19%)に比較すると改善傾向にあるものの、そのペースは非常に緩やかなものとなっていることが明らかになった。
日本の中堅企業における「経営幹部の女性比率」は5%で、2004年の調査開始以来、最低レベル(2012年も同じく5%)、調査対象国中唯一の1桁の数字となった。また、2004年の調査開始以来の14年間、日本は全ての調査で最下位となった。
世界の対象国全体の平均値を見ると、わずかながらでも改善傾向にある中で、日本の今回の結果は初回調査(2004年調査で8%)を下回る数値となっており、世界の潮流とは相反する現状が明らかになった。
さらに経営幹部に一人も女性がいない中堅企業も日本が69%と最も多く、日本の調査対象企業の7割近くで女性経営幹部が不在であることが示された。
国別に見ると 「経営幹部の女性比率」が今回最も高かったのはフィリピンで47%と女性が経営幹部の半数近くを占めることが分かった。
その他、主要国では中国が31%(前回調査31%)、米国が21% (同23%)、英国が22% (同19%)となり、前回調査からの大きな変動はなかった。また地域別に見るとEUの平均は27%となり2017年の調査結果(26%)とほぼ変わらなかった。
ASEANの平均では前回の調査結果の36%に対して今回は39%とわずかながら改善が見られたとしている。
日本の中堅企業の女性進出の2つの問題点
この調査結果について、SMBC日興証券金融経済調査部 米国担当エコノミストの尾畠未輝氏は、中堅・中小企業への浸透が遅れていること、女性活躍が「女性労働力の増加」にとどまり「女性管理職比率の上昇」へ繋がっていないこと、の2つの問題点を挙げている。
一つ目については、大企業の取り組みを見習うべきだとしている。内閣府男女共同参画局の調査によると、2017年の上場企業における女性役員数はアベノミクス開始前(2012年)と比べ2.4倍以上に増加したという。
全役員数に占める割合は依然として低水準である点は否めないものの、それでも2012年の1.6%から2017年には3.7%へ上昇した。今回の調査結果は、大企業と比べて人繰りや資金繰りに余裕のない中堅企業での、女性活躍促進の難しさを浮き彫りにしている、とした。
二つ目については、女性活躍促進が新たな局面に入ったことを示唆しているとしている。
2017年の25~44歳女性就業率は74.3%となり、アベノミクス開始時に掲げられた「2020年に73%(2012年は68%)」という数値目標を既に達成した。
しかし、「25~44歳女性人口」が減少している中、25~44歳女性就業者数は2012年の113.5万人から2017年は112.9万人へ小幅に減少した。このままでは女性活躍促進の効果はいずれ尽きてしまうだろうと指摘。女性活躍促進は次のステップへと進む時期に差し掛かっている、としている。
拡大する男女格差をどう解決するか
また、同氏はグラス・シーリングの問題も指摘している。グラス・シーリングとは、女性が昇進する際に立ちはだかる障壁のこと。
このグラス・シーリングの問題は、キャリアステージが高まってもなお付きまとうという。厚生労働省「賃金構造基本調査 1」によると、2016年時点で中堅企業の部長級労働者の年収は男性が1,055万円であるのに対し、女性は786万円。水準は男性の74.5%にとどまるという。
さらに男女格差はアベノミクス以降縮まっていないどころか、2012年(89.2%)から拡大したとしている。
このような男女の賃金格差は米国でも存在するそうだ。今回の調査では米国の中堅企業における経営幹部の女性比率は21%と、日本よりは大幅に高いものの、EU平均(27%)や世界35ヶ国平均(24%)に届かなかった。
米国では女性の管理職登用が進んでいるイメージがあるが、実はその多くは中間管理職であるという。2017年時点の米国のChief executives(最高責任者)の週給は、男性の2,415ドルに対し、女性は1,920ドルと格差が存在している(一般管理職でも男性1,573ドル、女性1,173ドル)という。
世界最低クラスにある日本女性の社会進出
OECD(経済協力開発機構)の「雇用アウトルック2017 女性就業率ランキング」の25〜54歳の女性就業率ランキングによると、日本は41カ国中26位。
また、世界経済フォーラムが世界144か国を対象に「経済活動への参加と機会」「教育達成」「健康と生存率」「政治的発言力」の4項目からジェンダーギャップ(男女の差)を数値化したランキングでは、日本はなんと114位だった。
このランキングでは、日本は、2015年が101位、2016年が111、2017年が114位とどんどん順位を落としているのだ。日本は、読み書き能力、初等教育、中等教育(中学校・高校)、平均余命の分野では、男女間に不平等は見られないという評価では世界1位だった。
ところが、一方、労働賃金、政治家・経営管理職、教授・専門職、高等教育(大学・大学院)、国会議員数では、男女間に差が大きいとの評価で世界ランクがいずれも100位以下なのだ。
今回の調査でもわかるように、日本女性の社会進出は世界最低クラスにある。
尾畠氏によると、役員女性が働く最大の目的は「社会の一員の務めを果たすため(35.7%)」で、「お金を得るため(32.1%)」を超えるという。日本には、女性をただの労働力として扱うだけではなく、障害なくキャリアアップできるような仕組み作りが求められている。
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