大企業に入れば一生安泰、という時代ではなくなってきていることは、おそらく多くの人が感じていることだろう。キャリアの選択肢は広がり、働き方も多様化してきている。

それに加え、これからはデジタルネイティブの価値観を持ったミレニアル世代が働き手として中心になる時代がやってくる。政府も働き方改革を推し進めており、35歳以上のミドル世代はこれまでと違った働き方や生き方に対応しなければならなくなってきている。

人材採用・入社後活躍のエン・ジャパン株式会社は、同社が運営するミドル世代のための転職サイト「ミドルの転職」上で、サイトを利用している35歳以上のユーザーを対象に「リカレント教育」についてアンケートを行い、2,204名から回答を得た。以下、今回はその概要をご紹介する。

35歳以上のビジネスパーソンがどんなリカレント教育を望んでいるのかを知れば、今後のビジネスのヒントがあるのかもしれない。

ミドルの90%が「今後リカレント教育を受けたい」

まず、リカレント教育とは、安倍政権が掲げる「人づくり革命」の柱の一つ。教育機関を卒業した社会人が生涯にわたり、学び直しを行なう教育システムのことだ。

「ミドルの転職」を利用している35歳以上のユーザーに、リカレント教育への関心度をきいたところ、90%が「今後リカレント教育を受けたい」と回答した。

次に、「今後リカレント教育を受けたい」との回答者に、関心を持ったきっかけを問うと、第1位「今後の人生を有意義にするため」(67%)、同率で第2位「教養を深めるため」、「就職や転職のために必要性を感じたため」(51%)だった。

社会人になったら定年まで働き、そのあとは老後を楽しむ。そんな今までの日本的な生き方はもう現代のビジネスパーソンには当てはまらないのかもしれない。自分の人生を豊かにするための働き方とは一体どんなものなのかを考え、そのためにはキャリアにどう向かい合っていけばいいのかをしっかり悩んでいるのだろう。

学びたいことトップ3は「語学」「経営・ビジネス知識」「専門資格」

「今後リカレント教育を受けたい」と答えた回答者に学びたいことをきくと、第1位「英語などの語学力」(58%)、第2位「経営・ビジネスに必要な知識や能力」(57%)、第3位「専門的な資格の取得」(48%)だった。

現代のグローバル化しているビジネスの現場や今後のキャリアを考えた場合、語学力を身につける必要性を感じているビジネスパーソンが多いようだ。また、経営に関しての能力を学びたいということはどうみて取れるのだろうか?

副業を推奨する世間の風潮や、副業を解禁する企業が出てきていることによって、自身の本業以外でのビジネスを行いたいと思っているビジネスパーソンも多くいることだろう。そうなってくると、クラウドソーシングなどの手軽な副業ももちろん選択肢として入るだろうが、それ以外にも自身で会社を立ち上げるということも視野に入れる人が多いのかもしれない。

そして、リカレント教育を通じて実現したいことについて、回答者は下記のようなコメントをしている。

「現在管理部門としてバックオフィス業務を担当しているが今後は学び直しをすることで、よりアカデミックに裏付けられたマネジメント業務に移行していきたい。今後の世界、及び仕事の不確実性が高まる中で、自身の価値を高めることに役立つと考える」(40歳男性)

「自分自身の成長を継続させる。仕事以外の分野を学ぶことで、仕事に良い影響を及ぼす。仕事で成果をあげ、収入を増加させる。収入増加により、さらなる学びに投資する。前向きなサイクルをつくる。ライフタイムエンパワーメントの実現」(40歳男性)

「新たな物事に対して、インターネットやIoTなど今まで無かったことは学んでいかないと対応も理解も出来ない。取り残されるだけになる。しかし、常に会社での業務はあり、教育に避ける時間は無く、業界や会社が時代に取り残されていると思っている」(44歳男性)

「以前から興味のあったコンプライアンスを大学院で学び直し、1年以上の転職活動の末、明日から新しい会社のCSR部門で働けることになった。年収は大幅減だが、仕事の内容には満足している」(45歳男性)

「実社会で通用する経営能力をつけ、これまでに気付いた社会的な課題の解決と自身の豊かさを同時に実現してゆきたい。健康年齢のみならず社会貢献年齢の長寿化も実現する必要がある。リカレント教育は、科目の暗記や練習ではなく、実際に実業で活躍する人物へのインタビュー番組など、50分程度の時間の中で気づきを得て、それを積上げてゆくようなカリキュラム構成が必要」(46歳男性)

「似たような境遇で同じように受験勉強を頑張っている仲間と知り合えた。生涯の友人と呼べるような人間関係が、こんなに歳を取ってから築けた。全員合格までやり遂げて、たまには集まって親睦を深めてゆきたい」(52歳男性)

そして、リカレント教育を受ける上での課題をきくと、第1位「学費や受講料の負担が大きい」(73%)、第2位「勤務時間が長くて十分な時間がない」(48%)、第3位「職を離れることによるキャリアの断絶が怖い」(24%)だった。

リカレント教育を提供するビジネスを考えていくのであれば、このような課題を解決できるようなソリューションを展開する必要があるかもしれない。もちろん事業提供者だけではなく、リカレント教育を必要とするビジネスパーソンを要する企業側も、キャリアを築く新しい選択肢としてリカレント教育を受ける機会をビジネスパーソンに提供する必要もあるだろう。

今後の人生を有意義にする新しい働き方とは?

先述した課題のように、学び直しには費用や時間の面、そして今の仕事への配慮をを考えると大変なものだ。しかし、今回の調査からはミドル世代の実に9割がリカレント教育を受けたいと回答している。また、そのきっかけとなったことの第1位は「今後の人生を有意義にするため」だった。

企業やビジネスで、ある程度の地位を築いているミドル世代は、世の中の動きが変化しており、働き方が今まで通りでは通用しないという状況をひしひしと感じているのかもしれない。ミレニアル世代を指導する立場になるであろうこの世代にとって、部下の価値観が多様化しているからこそ、そのマネジメントも難しくなってきていることだろう。さらには自身の能力も高めていかなければ、今後のキャリアが不安だとも感じている。

リカレント教育が当たり前のものとして認められることになれば、人生を豊かにするための働き方を実現していくきっかけになるだろう。

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