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今やモノは「保有する」から「利用する」へとその形態変遷が起こっている。日々シェアリングサービスの話題には事欠かないし、サブスクリプションサービスも大きな盛り上がりをみせている。
これらのサービス分野は多岐に渡っているが、今回はなんとビジネスウェアのシェアリングサービスが登場した。
株式会社AOKIは、2018年4月30日より、日本で初めて「スーツ・シャツ・ネクタイ」をフルセットで届けるシェアリングサービス「suitsbox」のサービス運用を開始する。
現在、suitsbox専用サイトを通じて事前会員の募集ならびにサービス内容の情報発信を開始している。
クラウドファウンディングで目標額の2倍以上を達成
suitsboxはユーザーのサイズ・要望に合わせたビジネスウェア(スーツ・シャツ・ネクタイ)のフルセットを専門のスタイリストがトータルコーディネートし、自宅に宅配する国内初の月額定額制サービスだ。
この事業にあたり、同社は株式会社マクアケが運営するクラウドファンディングサイト、「Makuake」で資金調達を行っている。目標金額 1,000,000円に対し、2018年2月22日時点で、2,236,000円と2倍以上の資金を集めることに成功している。
平均年齢29.5歳の4名のAOKI若手社員がプロジェクトメンバーとして事業企画をスタートさせ、Googleベンチャーズが採用する「デザインスプリント(新規アイデアを短期間で検討・検証を行なう方法)」を実践した。
サービス検討のために、消費者心理の調査(デプスインタビュー・自宅訪問)を行い、ターゲット層であるミレニアル世代の都市部ビジネスパーソンのリアルな意見を引き出してきたそうだ。
調査を行うなかでは、「住居にモノが溢れている」「趣味の時間を重要視したい」というライフスタイルと、「ビジネスウェアは高い、クリーニングなどメンテナンスが手間、保管場所を取る」といったビジネスウェアに対して、ターゲット層であるミレニアル世代が抱いている課題を表面化させた。
その解決のために、「サブスクリプション」「シェアリング」「出会い」をキーにしたsuitsboxを企画し、「Makuake」に挑戦、支援者を募集し、目標金額を達成したことでサービスの事業化が決定した。
「着れば始まる」がコンセプト。10,000名のユーザー獲得を目指す
suitsboxはAOKIの既存の業態ではリーチ出来ていなかった世代へのサービスだ。今後は「Living Service(消費者の暮らし全体を包み込むサービス)」として、季節に応じたビジネス&カジュアルウェア、パーティーウェア・コーディネートアイテム、より便利なサービスへと進化させるという。
そして 「着れば始まる」という新しいコンセプトのもと、ビジネスウェア市場の活性化と10,000名のユーザーを獲得を目指す方針だ。
具体的なサービス内容は、同社がこれまで専門店として蓄積したスーツやビジネスウェアのサイジングデータと独自のロジックを活用。WEBでの申し込み時に簡単なQ&Aで最適なサイズを分析して、スーツ・シャツ・ネクタイのビジネスアイテムをまるごと提供する。
提供可能な商品サイズは、身長160cm〜180cm、ウェスト74cm〜90cmの範囲(2018年2月現在)。
また、ライフスタイルに合わせて選べる3つのコース「お試しライトコース」「スタンダードコース」「アドバンスドコース+」を用意している。
■お試しライトコース(価格:7,800円)スーツ(ジャケット/スラックス)1着、シャツ1枚、ネクタイ1本
■スタンダードコース(価格:15,800円)スーツ(ジャケット/スラックス)2着、シャツ3枚、ネクタイ2本
■アドバンスドコース+(価格:24,800円)スーツ(ジャケット/スラックス)3着、シャツ5枚、ネクタイ3本
到着した商品が好みでなかった場合は月1回無料で交換が可能。また交換や返却時のクリーニングは不要だ。
さらに、オプションで1カ月に何度も交換できる借り放題を用意している。
時代の変化に伴う「サブスクリプション型ビジネス」の台頭
冒頭でも述べたが、モノは「保有する」から「利用する」へとその形態変遷が起こっている。これに伴い、ビジネスも変化が起こっている。従来の顧客が欲しいと思われるモノを作り、売るという「プロダクト販売型」から、必要に応じて必要な量だけのサービスを提供するという「サブスクリプション型」への移行である。
「サブスクリプション型」とは、継続課金型のビジネスモデルのこと。もともとはソフトウエアや音楽、動画などデジタル系のサービスでこのモデルが主流だった。
しかし、近年では自動車、洋服、コスメなど従来は「プロダクト販売型」であったモノにもこのスタイルが取り入れられるようになってきた。
従来から慣れ親しんだ大量生産型モデルが、デジタルトランスフォーメーションの波を受けて、大きく変わろうとしている。
ビジネスを左右する「ビジネススーツ」の選び方
ビジネスマンにとって、ビジネススーツは最重要アイテムともいえる。人の価値は見た目で全て決まるものではないが、貧相なものや不潔なものを身に付けていれば、その人のビジネス価値や評価は低くなってしまうというのが実情だろう。
しかし、その管理は意外と難しい。もともとが高価なものであるし、クリーニングなど維持コストもかかる。また、着こなしや流行への対応も必要だ。
今回のsuitsboxのターゲット層はミレニアル世代のため、これからのビジネスの核を担う彼らの価値観に、まさにピッタリなサービスといえるだろう。私服での出社が可能な企業が増える中、スーツへの需要は下がりつつあるかもしれない。その状況を、suitsboxが「安価で自分にぴったりなスーツを利用すること」をどれだけライフスタイルに浸透させていけるか、今後の広がりに注目したい。