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外に出ると、雨が降っていた。
スーパーの入り口から、車を停めた場所までは100m以上。躊躇している間にも、食材を詰め込んだバッグの重みが左肩を痛めつけていく。意を決して外に飛び出し、車まで一直線に走った。運転席に乗り込み、助手席に荷物を乗せると思わずため息が出る。雨の日の買い物は、どうしても好きになれない。
ここ数年で、レシピ検索や献立作りは、豊富なレシピサイトの登場によりぐっと楽になった。ネットスーパーなるものも誕生し、今では食料品の購入も便利な仕組みになってきている。
しかし、もっと欲を言うのであれば、レシピの検索から必要な食材の購入までをもっと手軽にというのが本音だったりする。そんな夢のような本音を叶えてくれたのは、神様でも魔法使いでもない。私たちにとっては、身近な存在であるAmazonだった。
「Amazon Fresh」が求める、生鮮食品事業のさらなる可能性
Amazonが、生鮮食品配送事業「Amazon Fresh」をスタートしたのは、2007年。アメリカの一部地域から始まり、日本で展開されたのは2017年4月。現時点では東京の一部地域のみの対応だ。
Amazon Freshでは、野菜・果物・鮮魚・精肉・乳製品など1万7,000点以上の食料品のほか、キッチン用品や健康用品といった日用雑貨も取り扱っており合計10万点以上の商品をオンラインで購入できる。
そんな「Amazon Fresh」が、複数のレシピサイトとの提携を進めてきているという。昨年の11月にはフードメディア「Fexy(フェクシー)」を始め、世界最大のフードコミュニティサイト「Allrecipes(オールレシピ)」や「Eat Love(イートラブ)」との協業が決まっている。
提携したレシピサイトには「Prime Now」ボタンを設置。ユーザーはワンクリックでレシピに必要な食材をAmazon Freshから購入できるという。注文した商品は、最短4時間で家まで配達されるそうだ。
レシピサイトとの連携が、社会に与える希望と未来
共働きも珍しくない現代社会では、夫婦が家事に割ける時間は減少傾向にあり、仕事で疲れたあとに買い物に行くのが億劫だと感じるひとも少なくないだろう。また女性が働いていないケースでも、子育てや介護などで、一人では買い物に行くのが難しい主婦もいる。
Amazon Freshとレシピサイトの提携は、食事の献立作りから食材購入までが一括して行えるため、かなりの時間短縮に繋がる。複雑な作業はなく、ボタン1つで注文できるため労力もかからない。
たとえば、会社のお昼休みの時間にレシピサイトを見ながら好みの料理を見つけ、Amazon Fresh経由で材料を注文する。仕事が終わるタイミングに合わせて配達時間を設定すれば、帰宅後すぐに調理に取り掛かることも可能だ。
このような食材一括購入の流れはミールキットと似ているが、レシピの選択肢の幅や配達の早さという観点では、Amazon Freshのほうがより柔軟性が高い。
今回のレシピサイトとの提携は、Amazon Freshにとっては単なる序章に過ぎないだろう。彼らはすでに次の物語の展開を見据えているはずだ。
例えば、同社が開発したAI搭載のスマートスピーカー「Amazon Echo」との連携が期待できるかも知れない。ユーザーがAmazon Echoに呼びかけることで、レシピの検索から材料の購入までを一括で行うことができれば、手間は大幅にカットされる。調理時にはレシピを読み上げてくれる機能もあると、いちいちスマートフォンを見ながら料理する手間も減るだろう。
事業拡大への取り組みと立ちはだかる壁
2017年8月、Amazonはアメリカで約450店舗を展開する食品小売企業「Whole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)」を買収した。WSJが報じたところによると、買収前と買収後の4ヶ月を比較すると、米国内におけるAmazon Freshの売上高は35%増加しているという。
その要因には「365 Everyday Value」というWhole Foods Marketの食品を使ったプライベートブランドの展開などが考えられると言われている。見事に事業としてはシナジーが生まれはじめている。
しかし、12月1日からはアメリカの一部地域でAmazon Freshのサービスが停止。積極的な取り組みとは裏腹に、生鮮食品の消費の流れを変えることの壁は想像以上に高いようだ。
Amazonの生鮮食品事業はすべて順調というわけでもない。だが、トライアンドエラーを重ねながら、着実にユーザーの暮らしを便利にするための一歩を踏み出している。
料理の準備は、もっと手軽にもっと楽しく、オンライン一つで完結する時代へ。2007年に始まったAmazonの生鮮食品事業への挑戦は、10年の時を経て大きな一歩を今踏み出そうとしている。