例えば年末年始、大人数での忘年会や新年会の予約を飲食店にしたことはないだろうか?

その予約を、どうしても仕事の都合でキャンセルしなければいけなくなった時、普通ならば予約店舗の定めるキャンセル規定に沿ってキャンセルの連絡をするだろう。場合によってはキャンセル料が発生することもあるはずだ。

しかし、昨今そのキャンセル連絡をせずに“ドタキャン”をしてしまう消費者が多い、というニュースが耳に入ることも多い。その場合、飲食店側が被害を被ってしまうが、その被害を防ぐため、“ドタキャン”から飲食店を守ろうという新しいサービスが登場した。

全国の個人飲食店オーナーが集まって運営する「全日本飲食店協会(東京都港区)」は、2018年2月19日より、予約の無断キャンセル・ドタキャンによる被害を減らすための新しいサービス「ドタキャン防止システム」を利用料金永久無料にてリリースする。

ドタキャンに長年悩まされてきた飲食店オーナー達が開発

「ドタキャン、求人問題、顧客管理」は飲食業界では3大問題とされ、店舗経営の存続に関わる事態も招きかねない業界の課題だ。

その中でもドタキャンに対して、飲食店は泣き寝入りを余儀なくされてきた。ドタキャンによって売上は減少し、その分の食材費と時間帯分の人件費支出は利益を圧迫する。

さらには、選び抜いた食材を破棄しなければならない生産者への申し訳なさ、仕込みにかけた時間と労力の無駄、飲食業を愛する者にとって堪え難い状況を引き起こしている。

このシステムは、ドタキャンに長年悩まされてきた飲食店オーナー達のアイデアにより開発したもので、過去にドタキャン前歴のある電話番号をデータベースに登録し、新規の団体予約の電話を受けた際、その場でデータベースに照合することができる。

個人情報保護法に抵触しない範囲でデータを収集

ドタキャン防止システムのデータベースは「電話番号」「ドタキャン日時」「予約人数」のデータのみを収集。これは個人情報保護法に抵触しない範囲として弁護士事務所にも確認を取っており、データベース照合によって個人が特定できる可能性はないという。

データ照合時に店舗が確認できる内容は、

  • ドタキャン歴の有無
  • ドタキャン日時
  • ドタキャン時の予約人数
  • データ登録をした店舗の電話番号の一部

店舗はこれらの情報を得ることにより、あまりにドタキャン回数が多い相手は予約の断りを入れる、団体でのドタキャンが過去にあった場合は前金制での案内をする、同一店舗ばかりでドタキャンが相次いでいるなどの不自然な状況であれば、データの信憑性は低いと判断して対応するなど、ある程度の予測をしながら利用することができる。

「自分たちの店は、自分たちで守る」

より信ぴょう性の高いデータベースを構築するためには、利用登録者による情報提供が不可欠だ。

日々の営業で多忙な飲食店経営者にとって、これらの協力に割く時間の確保は容易ではない。しかし、自分たちの業界の問題解決のために協力の呼びかけを行うことが運営側の責任でもある。

このため、月額利用料金を永久無料とし、できる限り多くの飲食店に協力を呼びかける方針だ。

ドタキャン防止システムの利用者には、今後提供予定の飲食店向け有料サービスに関する情報を発信していくという。

例えば、顧客管理システムや求人問題への対策、産地直送の仕入れ、集客や経営勉強会など。すべてのサービスは同協会所属の飲食店オーナーによるアイデアを実現させるものであり、外食産業の現場が最も必要な内容・機能を盛り込み、開発される予定だ。

ミレニアル・Z世代にとって個人情報は「資産」である

このようなデータを扱うシステムでは、とかく個人情報の問題がからんでくる。このため、この新サービスでは、個人情報保護法に抵触しないということをウリの一つにしている。

ではこれからの社会を担い、このような飲食店を利用することも多くなるだろうミレニアル・Z世代は個人情報をどうとらえており、このようなサービスが彼らの目にはどう映るのだろうか。

アナリティクス専門のSAS社が実施した調査で、これらの世代における興味深い傾向が明らかになった。この調査は英国在住の16〜34歳のミレニアル・Z世代2000人を対象にしたものだ。

調査結果では、2000人のうち69%が「パーソナルデータを自分の生活を向上させるために活用するもの」と捉えていることが明らかになった。つまり、個人情報を企業などに提供はするものの、「それには何らかのリターン/ベネフィットが伴うべき」と考えているのだ。

つまり、彼らは個人情報を「資産」として有効活用しようと考えている。実際、この新しいニーズを反映したサービス・プロダクトも登場している。

飲食店と利用者、お互いへのメリットをもたらせるか

今回のサービスによってドタキャンをどれだけ防げるのかは未知数であるが、飲食店に対するメリットであることには違いない。

この先、今まで以上にビッグデータを利用することによって事業者、ユーザーともに新しい体験を提供・享受していくことだろう。その中で、パーソナルデータは悪用されてしまうことも多くあるため、サービスの向上とともにセキュリティー面の向上も行なっていかなければならない。

ブロックチェーンやAIの発達によって事業者もユーザーも安心できるサービスが生まれてくることを期待していきたい。