医療現場では円滑なコミュニケーションと、その迅速さが求められる。その実現のために様々なサービスが開発されているが、“医療”という分野には個人情報がつきもののため、セキュリティーの重要度も高い。

これを受け、藤光樹脂株式会社では、セキュリティーの重要度に特化した医療・介護・福祉向け専用コミュニケーションアプリをリリースする。

同社の「D-talk(ディートーク)」(iOS/Android向け)は、スマートフォンの「いつでも、どこでも」の利便性と、医療現場、特に訪問医療や介護福祉など病院外との情報のやりとりにもふさわしい守秘性・セキュリティー強度を実現するという。

医療現場でのスマホ導入の大きな課題を解決

高齢化が進み医療・介護サービスの需要が増している。それにつれて、院外での在宅医療・介護サービス展開が加速している。

あわせて、医療介護従事者間のスムーズかつ安心安全な連絡手段が求められているが、今のところ一般病院内での連絡手段はPHS・携帯電話(ガラケー)を主としている。

特にPHSは今後廃止予定にも関わらず、手軽さとコストメリットから未だに内線電話に利用している病院が多いのが実情だ。しかし、院内の閉域網ならまだしも、地域連携(院外)で使用するにはPHS・ガラケーが最適とは言えない。

このため、スマホ普及率が72%(平成29年版 情報通信白書より)と毎年増え続ける中、医療現場の連絡手段もスマホを使用するケースが徐々に浸透しているが、患者の個人情報取扱いに個人のスマホを使用することは望ましくない。

また、本来は業務用スマホの活用が望ましいが、医院側には高額なコスト負担が発生し、使用者には個人用と業務用の端末2台持ち(使い分け)の煩わしさがあるといった理由から、業務用スマホの普及は十分に進んでいないのが実情だ。

これらの課題を解決すべく、D-talkは、病院内、病院外、様々な医療シーンでの利用を想定している。

<病院内の利用シーン>
事務局から院内業務連絡、看護師のスケジュールの調整、事務局・医師間の業務連絡 清掃業者等外注委託業者への連絡、他。

<病院外の利用シーン>
院内から院外への連絡(外出中の医師など)、医師退勤後の急患対応連絡、薬局・製薬会社との連携、医師会・学会との連絡を想定している。

特徴は、以下の通り。

  1. 組織に合わせ、情報共有の範囲を管理機能で設定可能
    – 組織で使うチャット選択
    ・一般チャット
    ・プライバシーモードチャット(消えるチャット)
    ・リアルタイムトーク(文字電話)
    – 掲示板、メッセージへの写真やファイル添付
    – チャットメッセージの既読・未読表示(任意設定可能)
  2. 組織構成図を登録し、部門単位でチャットルームや掲示板を設定
  3. 一般チャットはテキスト出力・議事録保管も可能(PC Webアプリのみ)
  4. スマートフォン、タブレットでの基本アプリとパソコン用Webアプリ
  5. チャットルーム(チーム)のみ参加のチームゲスト登録機能
  6. クラウドの容量は契約ユーザ数×2GB
  7. 写真は非圧縮でそのまま送信
  8. 簡易グループウェア機能(一斉お知らせ、共有スケジュール、掲示板)

医療現場でセキュリティーを徹底保護

また、D-talkは医療現場でのセキュリティー保護のために以下の3つの特徴を備えている。

  1. 海外の金融機関が採用するIVR(自動音声)電話認証方式を日本のSNSで初めて採用
    多くのビジネスコミュニケーションアプリがショートメッセージやメールによる「文字」での本人認証を行うのに対し、D-talkでは、海外の金融機関でも採用されるIVR電話認証方式を日本で初めて採用。
    アカウント登録やログイン時に、本人認証として電話による自動音声で認証番号を聞き、電話端末に入力することで完結する。自動音声によるワンタイム認証で、文字データのようにインターネットでの盗み見によるなりすましなどの不正なアクセスを防ぐことができる。
  2. 携帯端末の置き忘れ、落とした時でも安全
    端末にメッセージのやりとりの履歴を残さないプライバシーモードチャット(消えるチャット)とリアルタイムトーク(文字電話)の選択や、掲示板やチャットへの添付ファイル、共有範囲などを組織ポリシーとして管理者機能で設定することができ、また管理機能でユーザIDを一時停止にできる。
  3. 完全クローズ(構築型)も選べる
    通常のビジネスコミュニケーションアプリの多くはオープン型のパブリッククラウド・サーバーを使用するが、徹底したセキュリティーが求められる医療業務には不向きだ。

D-talkではクラウド版だけでなく、自社サーバー指定の完全クローズでの構築もできるという。

パーソナルデータは「資産」である

一方、医療業界以外に目を向けてみると、最近ではスマホやパソコンの使用から生み出される様々な個人のデータ(情報)、つまりパーソナルデータを「資産」として捉える傾向にある。この傾向は、特にミレニアル・Z世代が強い。そして、この資産のオーナーシップを持ち、運用したいというニーズが多いようだ。

このニーズに応え、新たなサービス・プロダクトが生まれている。

英国拠点のスタートアップ Ctrlio は、ユーザーが自分のモバイルやブロードバンドの利用データを共有することで、通信プロバイダー各社からそのユーザーのデータ利用量に最適化された通信プランをオファーしてもらえるプラットフォームを提供している。

米国のスタートアップ Datacoup は「パーソナルデータ・マーケットプレイス」を提供している。マーケットプレイスでは、個人がフェイスブックなどのソーシャルメディア情報やクレジットカードの利用データを共有し、その対価として現金を受け取ることができる。共有するデータの種類によるが、最大で月額10ドルの報酬になるという。

また、ファッションブランドのブルガリがローンチしたデジタルアセット金庫アプリ「BVLGARI VAULT」をみると、個人情報が「資産」として認識されつつあることがわかる。

このアプリは、ブルガリがサイバーセキュリティ会社 WISekey と共同で開発したアプリで、ユーザーのパスワード、銀行データ、デジタルフォト、テキストメッセージなどのパーソナルデータをクラウドセキュアに保存することができるのだ。

医療現場でのスマホ導入促進の起爆剤に

総務省によると、2017年の我が国の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は27.7%と過去最高を記録した(「統計からみた我が国の高齢者(65歳以上)-「敬老の日」にちなんで-」)。この割合は今後もますます上がっていくだろう。

冒頭でも述べたように、医療、特に介護分野では、円滑なコミュニケーションや迅速さが求められる。

これまでは、個人情報の問題から現場の連絡手段は、PHSやガラケーが多かったが、もはやスマホでないと対応できない時代となった。D-talkは果たして、医療現場におけるスマホ導入促進の起爆剤になれるだろうか。

img : @PRESS