フライト時間は半分に? JALも出資した超音速旅客機が実現する未来

北米やヨーロッパに行ったことがある人は、一度はフライト時間の長さにウンザリした経験がないだろうか。だが、そのフライト時間が「半分になるかもしれない」と言われたらどうだろう。

かつて、イギリスとフランスの企業が開発した超音速旅客機「コンコルド」が空を舞った。しかし現在、その誰もが実現してほしいと願うであろう夢は途絶えたままとなっている。

超音速旅客機の夢、再び実現となるか

「超音速旅客機の実現なんて夢物語」と思う人も多いかもしれないが、今でも開発に取り組むスタートアップがいる。米国企業のBoom Technology(ブーム・テクノロジー)だ。

Boom Technologyが開発する超音速旅客機は、洋上飛行時で速度マッハ2.2(時給換算で2335km)を実現する。現行の航空機の速度は時速800~900kmのため、2倍以上の速度だ。

例えば東京-ロンドン間のフライト時間は6時間45分、東京-サンフランシスコ間だと5時間半。航続距離は8334km、ビジネスクラス仕様で45~55席の座席数になるという。

今後は2018年にデモ機の飛行、2020年に実機で飛行試験を行う予定。FAA(連邦航空局)やEASA(欧州航空安全機関)の承認を取得し、2023年ころに就航開始を予定している。

そのBoom Technologyが2017年12月、日本航空(JAL)とパートナーシップ契約の締結を発表した。JALから1000万ドル(約11億円)の資金提供を受けるだけでなく、技術サポートやプロモーション協力を得る。これにより、JALは20機分の優先発注権を得た。

超音速旅客機の実現が、私たちにとっても身近な存在のように思えてこないだろうか。

Boom Technologyの超音速旅客機イメージ

Boom Technologyのブログには、JALと約1年前から協力関係にあったことが記載されている。それに対して、JALの広報は「まだ両社による具体的な取り組みは行われておらず、移動時間の短縮に向けて協力して何ができるか、意見交換を重ねてきた」と語っている。

また、JALは20機分の優先発注権を得ているが「超音速旅客機を事業機として活用するかはまだ決まっていない。これからの開発次第で変わるだろう」(JAL広報)とした。

NASAやJAXAも超音速旅客機を開発

人類はこれまでにも、いかに移動速度を上げられるかに挑戦し続けてきた。超音速旅客機といえば、冒頭で挙げたコンコルドの存在を思い出す方も多いだろう。

世界で初めて定期国際路線として出航し、マッハ2.0で飛行する超音速旅客機として注目を浴びたが、2003年に姿を消した。その理由について『SankeiBiz』の記事では、コンコルドが抱えていた欠点について「ソニックブーム」と呼ばれる騒音問題や、燃費の悪さによる高い運賃を挙げている。

2000年に離陸直後のコンコルドが墜落して113人が亡くなったこと、2001年に発生したアメリカ同時多発テロによる世界的な航空不況も、運航停止への決定打となった。

こうして一度は夢破れた超音速旅客機の夢を、Boom Technology以外だけでなく宇宙航空研究開発機構(JAXA)や、米航空宇宙局(NASA)なども叶えようとしている。ソニックブーム低減に向けた技術開発が進み、少しずつ実現に向けた見通しが見えてきたからだ。

例えばJAXAでは、2002年から2005年にかけて「NEXST-1飛行実験」を行い、空気抵抗を下げて燃費を良くする技術を実証。2011年からは「D-SENDプロジェクト」で、ソニックブームを低減させる機体設計技術のコンセプトの実証を推進してきた

JAXAが公開している小型超音速旅客機のイメージ

NASAなどが開発しているのは、ソニックブームとは無縁な「静かな」超音速ジェット機だ。『Engadget日本版』の記事によると、コンコルドが90dBAの騒音を出していたのに対して、60~65dBAまで低騒音化することを目標にしている。このジェット機は、2020年までに飛行予定だという。

米国Aerion Corporation(アエリオン・コーポレーション)は、米国Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)などと共に、超音速旅客機「AS2」を開発している。最大12人の小型ジェット機となっており、最速マッハ1.6の実現を目指す。

超音速旅客機の実現に向けて多くの企業・機関の取り組みが活発化している。音の速さを超えて、私たちは海外旅行に行ける日が再びやってくるだろうか。一度は失敗に終わってしまった夢の実現に、多くの人々の期待が集まっている――。

img:JALJAXA

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