Amazonへの最強の対抗策?10年連続世界1位の小売企業“ウォルマート”と“楽天”が業務提携を発表

PCやスマホが普及し、人々のネットリテラシーが高まるにつれ、EC(eコマース)の利用が年々増加している。購買行動は、リアルからWebを介したものへと移行が進んでいる。

経済産業省の発表では、国内の消費者向けEC市場における「物販系EC」の規模は、前年比10.4%増の8兆43億円とされている。日本貿易振興機構(JETRO)の調査では、日本国内のEC市場におけるシェアは、Amazonが20.2%、楽天が20.1%、Yahoo!ショッピングが8.9%となり、合計で50%を占めている。

今回、僅差で2位につけている楽天が、ウォルマートとの戦略的提携を発表した。ウォルマートも米国でAmazonと、オンラインとオフライン両面での戦いを繰り広げている。

楽天とウォルマートが戦略的提携。日本ではネットスーパー事業を展開

2018年1月26日、楽天株式会社とウォルマート・ストアーズ・インクは、日本と米国における戦略的提携を発表した。両社の強みを活かしたユーザーへのリーチ拡大と、サービス向上を目的とする。

提携の一環としてまず行われるのは、日本におけるネットスーパー事業「楽天西友ネットスーパー」の協働運営、そして、米国での電子書籍サービス「楽天Kobo」の展開だ。どちらも年内のスタートを予定している。

西友は、ウォルマート社の日本子会社だ。今回の提携で、新サービスのネットスーパー事業である「楽天西友ネットスーパー」の提供を開始する。

この提携で見込むのは、配送面と品揃え、利便性での強化だ。配送については、西友の実店舗からの配送に加え、2018年内にネットスーパー専用の配送センターを設け、配送件数を大幅に拡大。品揃えでは、生鮮食品や日用品だけでなく、半調理食品やミールキット、楽天ならではのお取り寄せグルメも加わる。

利便性の面では、楽天が培ってきたECノウハウを活用し、ユーザーにとって利便性の高いサイト構築、ビッグデータやAIを活用した最適な商品の提案、ポイントプログラムの導入を行う。

また今回の提携で、電子書籍サービス「楽天Kobo」を、米国における量販店として、ウォルマート社が独占販売する。「Walmart.com」で、「楽天Kobo」が取り扱う電子書籍やオーディオブック約600万作品を提供。ウォルマートの4,000を超える実店舗で、デジタルブックカードを販売できるようになる。

このように、配送面と品揃え、利便性での強化を目的とする提携となっている。この提携は、アメリカでのウォルマートとAmazonの戦いを知れば、その位置づけがより分かりやすいかもしれない。

アメリカにおいて、ECや物流、実店舗でAmazonと競うウォルマート

EC事業においては、Amazonが、米国のオンラインショッピングの売上額全体の43%を占めている(2016年)。Walmart(ウォルマート)は、米国の大手小売チェーンであり、「世界の小売業ランキング2017」で10年以上1位の座をキープしている。

小売りの世界では、ECサイトと実店舗の境界が薄れつつあるなか、この2つの企業の戦いが、さまざまな方面で展開されているのだ。

Walmartは2000年にオンラインストア「Walmart.com」を開設している。品揃えの面でAmazonに追いつくために、オンラインショッピングサイト「Jet.com」、女性向けのアパレル商品を扱う「ModCloth」やアウトドア製品の「Moosejaw」など、の買収を進めた。一方、Amazonは自然食材やオーガニック食品を扱う「Whole Foods Market」を買収し、実店舗販売の強化を狙う。

またAmazonは自社が開発するスマートスピーカー「Echo」と「Echo dot」により、音声ショッピングを展開している。ウォルマートは、対抗策としてGoogleとの提携を発表。同じくスマートスピーカーのGoogle HomeからWalmartの製品を注文できるようにするという。

配送面では、4,700箇所にも上る実店舗をもつウォルマートに強みがある。商品の店舗受け取りに活用する。また、アソシエイトと呼ばれる100万人以上の従業員による、仕事帰りの配達も行っている。対抗するAmazonは、クラウドサービス事業での収益を活用し、自社貨物航空機「Amazon One」やドローン配送システム「Amazon Prime Air」によって空輸網の構築を目指す。

Amazonによるリアル店舗の展開として、レジを使わない「Amazon Go」が話題になった。新たなショッピング体験を創出しようと試みの1つだが、ウォルマートも、レジ無しで買い物が完了する「Walmart Scan & Go」を24の店舗で導入している。

ドライブスルーで商品を受け取る、というサービス分野も戦いの舞台だ。Amazonは、2017年3月にはドライブスルー型の食料品店「AmazonFresh Pickup」をオープンしている。オンラインで注文すると最短15分で商品を受け取れるサービスだ。ウォルマートの「Walmart Online Grocery Pickup」は、2014年9月から開始されている。アプリで事前に商品を注文すると、4時間後には、受け取り拠点に車で向かうと、スタッフが商品の積み込みを行ってくれる。

アメリカ発のサービスが日本で広がるかも?

日本のEC市場では、Amazonと楽天が2大企業としてシェアを争っている。アメリカにおいては、ECとリアル店舗の垣根を超えた、Amazonとウォルマートの激しい戦いを見ることができる。

Amazonとウォルマートの戦いでは、音声ショッピング、ドライブスルー、レジなし店舗、ドローン配送など、新しい分野が舞台となっている。

今回の楽天とウォルマートの提携では、品揃え・配送・利便性の面での拡充が発表された。アメリカでのAmazonとウォルマートの戦いが、日本に持ち込まれることになれば、さらに新しいサービスの導入も期待できることになるかもしれない。

img: walmart , 楽天

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