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18世紀イギリスにおいて起こった蒸気機関によって牽引された第一次産業革命。そこから電力が一般化し、エネルギーの消費の形が変わることで大量生産/大量消費を可能にした第二次産業革命。そしてパーソナルコンピューターが登場し、デジタルテクノロジーを活かして最適解を導き出すことを可能にした第三次産業革命を経て、今、第四次産業革命の時代にさしかかっている。
デロイトトーマツグループは、デロイトグローバルが実施した「第四次産業革命への対応準備調査」について、日本企業の調査結果を発表した。
IoT及びビッグデータやAIがコアとなる技術革新
内閣府によると、第四次産業革命とはオートメーション化である第三次産業革命に続く、IoT及びビッグデータやAIがコアとなる技術革新を指す。
IoT及びビッグデータについては、工場の機械の稼働状況から、交通、気象、個人の健康状況まで様々な情報がデータ化され、それらをネットワークでつなげてまとめ、これを解析・利用することで、新たな付加価値が生まれている。
AIについては、人間がコンピューターに対してあらかじめ分析上注目すべき要素を全て与えなくとも、コンピューター自らが学習し、一定の判断を行うことが可能となっている。加えて、従来のロボット技術も、更に複雑な作業が可能となっているほか、3Dプリンターの発展により、省スペースで複雑な工作物の製造も可能となっている。
こうした技術革新により、
- 大量生産・画一的サービス提供から個々にカスタマイズされた生産・サービスの提供
- 既に存在している資源・資産の効率的な活用
- AIやロボットによる、従来人間によって行われていた労働の補助・代替
などが可能となる。
把握困難だったメンタル状態の可視化とデータ化を進める
今回の調査結果には、従来からのビジネスの延長線上で第四次産業革命を捉える姿勢が表れており、特に日本企業はその傾向が顕著に見られた。
企業は、より能動的にビジネスと社会ニーズの関係を見つめ、最新技術によるブレイクスルーで、顧客、人材、市場、社会へと恩恵をもたらす変革を主導していくことが求められる。それが、自社の成長だけでなく、第四次産業革命による、より平等で安定した世界の創造にもつながると考えられるからだとしている。
【日本企業の主な調査結果】
- 第四次産業革命の機会を十分に活用することに「大変自信がある」はわずか(日本:3%、全世界:14%)
- 第四次産業革命に期待する割合は高い(日本:91%、全世界:87%)
- 第四次産業革命を自社が市場変革、開拓する機会と捉えていない
- 最新技術を競争上の差別化要因と考えていない
- テクノロジーを効率化に活用しているが、「労働力の変化」に注目した本質的な議論は尽くされていない
自社が市場変革、開拓する機会と捉えていない
日本及び世界の経営幹部の大多数は「第四次産業革命が社会により多くの平等と安定をもたらす」と考え(日本:91%、全世界:87%)、また、企業は、社会に最も大きな影響を与えうると考えている(日本:公開企業70%、非公開企業64%、全世界:公開企業74%、非公開企業67%)。
自社が多大な影響を与えうる課題領域は、「顧客への最良の製品/サービスの提供」、「短期的または、長期的な財務成績の向上」といった企業の従来からの役割に回答が多く集まっており、市場、教育、環境などの社会的課題に大きな影響を及ぼすと考える経営者は少数にとどまっている。
特に日本の経営幹部はこの傾向が強く、「公正で開かれた市場の実現に向けた改革の推進」(日本:9%、全世界:24%)、「商品・サービスへのアクセス向上や低価格化などを通じた未充足ニーズへの対応」(日本:14%、全世界:19%)といった、市場環境の改善への影響についても他国企業よりも低い認識となった。
日本の経営幹部の78%は「どちらでもない」と様子見の姿勢
また、「最新技術は競争上の主要な差別化要因と考えるか」と尋ねたところ、日本の経営幹部の回答は「強くそう思う」5%、「そう思う」17%となり、全世界の回答(「強くそう思う」20%、「そう思う」37%)と比べて低い割合だった。
最新技術に対する考え方は、第四次産業革命に備えるために、必要な投資に対する意欲の高さを表すが、日本の経営幹部の78%は「どちらでもない」と様子見の姿勢で、グローバル市場での成長に大きく水をあけられるリスクが浮かびあがった。
また、日本の経営幹部が最も頻繁に議論したテーマを尋ねたところ、全世界と比較した日本の特徴が表れた。
- 「市場変化への迅速対応」(日本:76%、全世界:49%)
- 「生産性向上」(日本:70%、全世界:56%)
- 「新製品・サービスの開発」(日本:51%、全世界:57%)
といった従来の事業モデルの延長線上にあるテーマに多くの注意が払われる一方で、「他社の優位性の攪乱・無効化」を議論している日本の経営幹部はわずか12%であり、全世界の24%と比べて低い割合になっている。
全体として、第四次産業革命を見据えて根本的な変革や新たな競争を主導しようとする発想・姿勢が相対的に乏しい様子がうかがわれた。
75%以上がロボットなどのテクノロジーが人に代わる未来を予測
高齢化や働き方改革を背景に、日本の経営幹部は調査対象国で最も多い85%が、従業員との関係が、契約による一時的、臨時的な雇用に変わる方向にあると見ている(全世界:61%)。また、実に75%以上がロボットなどの自律的なテクノロジーが人に代わる未来を予測している(全世界:50%以下)。
しかし、人材採用・育成については他のテーマの後回しにされ、経営幹部が議論することは少なく、最新テクノロジーの活用についても、技術主導型の変化が組織構造と従業員に及ぼす影響について、計画し対処できると考えている経営幹部はわずか3%(全世界:7%)だった。
他方、最新テクノロジーについては専ら従業員の効率性向上での活用に関心が向けられており、この点に関して組織として「高い能力がある」とした回答者が78%にのぼった(全世界:47%)。
期待は大きいものの準備の遅れが明らかに
今回の調査により、世界的に見ても第四次産業革命による機会をフルに活用しうる企業は、現時点においてごく一握りであることが示された。特に日本企業はその準備の遅れが明らかになっている。
しかし、第四次産業革命に期待する日本企業の割合は91%と高い。これからますますビジネスもグローバル化がすすんでくる。第四次産業革命で他国に水をあけられないように日本企業それぞれの経営者が意識改革し、自信を持つことが大切だろう。