現代ではデータの重要性が増し、その改ざんなどへのリスクヘッジが今までにも増して重要視されてきている。その中で、昨今話題である仮想通貨の基盤技術となるブロックチェーンを利用した技術が次々に開発されている。

今回、GMOインターネット株式会社は、ブロックチェーンを活用した新しいビジネスの実現を迅速な立ち上げから支援するプラットフォーム「Z.com Cloud ブロックチェーン」の正式版を提供開始した。

PaaS型のブロックチェーンプラットフォーム

ブロックチェーンとは、データを複数のコンピューター(ノード)に 分散して記録・保持する技術。「改ざん」「データ消失」「停止」が非常に発生しにくいという特徴を持つ。

「Z.com Cloud ブロックチェーン」は、仮想通貨「イーサ(ETH)」での取引を行えるブロックチェーンプラットフォームであるイーサリアムを利用して、ブロックチェーン上に分散型のアプリケーション(DApps)を構築できる、PaaS型のブロックチェーンプラットフォームだ。

イーサリアムの活用には「記録データが全てオープンになる」「利用ユーザーは仮想通貨(ETH)による手数料が必要」といった障壁があるが、「Z.com Cloudブロックチェーン」では、こうした障壁を取り除く特長を備えているため、ブロックチェーンを活用したビジネスを迅速に立ち上げることが可能だ。

「Z.com Cloud ブロックチェーン」の4つの特長とは

「Z.com Cloudブロックチェーン」の具体的な特長は以下の通り。

  1. データのアクセスコントロールが可能

    ブロックチェーンは、P2P方式という特性上、透明性の高さにより改ざんといった不正を防止できる一方で、記録データが全てのコンピューター(ノード)にオープンになるという課題があった。

    「Z.com Cloud ブロックチェーン」では、ブロックチェーンと並列して機密情報を保管するデータストア(データ格納領域)を設置し、データストア内に保存したデータのアクセスコントロールを実現している。(特許出願中)。

    これにより、データストアに保存された機密情報などのデータファイルは、権限を与えられたユーザーだけが呼び出して閲覧することが可能となる。

  2. トランザクション手数料(Gas)の代払い機能

    イーサリアムを利用したブロックチェーン上でプログラムが実行される際、使用者(ユーザー)は「Gas」と呼ばれるトランザクション手数料を仮想通貨(ETH)で支払う必要がある。しかし、ユーザーが仮想通貨を常時保有することはまだ一般的とは言えず、サービスの利用が敬遠されかねない。

    そこで「Z.com Cloud ブロックチェーン」では、この手数料をサービス運営者がユーザーの代わりに代払いできる機能を導入。これにより、ユーザーは仮想通貨を保有する必要なく気軽に利用できるため、ブロックチェーンを活用したサービスの普及が図れる。

  3. 冗長化による高い耐障害性

    「Z.com Cloud ブロックチェーン」では、プライベート・ブロックチェーン環境を構築している。

    プライベート・ブロックチェーンのネットワークは、管理主体となる特定の組織・団体が運用するインフラ環境(クラウドやサーバー)内に形成されることが多いため、世界中に点在するネットワーク参加者(ノード)で分散してデータを補完し合うパブリック・ブロックチェーンに比べると、可用性が低いと言える。

    「Z.com Cloud ブロックチェーン」では、世界各地のインフラ環境にブロックチェーンネットワークを配置しているため、冗長化による高い耐障害性を実現している。

    これにより、例えば災害などで一部のノードが損害を受けても、他の拠点に保管されたデータをもとにサービスを継続することができる。(近日対応予定)

  4. ブロックチェーン基盤をAPIでラッピング

    上記の特長的な機能を付帯したブロックチェーン基盤を、クラウドサービス「Z.com Cloud」上にAPIでラッピングして提供。

    複雑なブロックチェーン技術をAPIで包括的にコントロールできるため、サービスをより簡単に構築することができる。

また、「Z.com Cloud ブロックチェーン」では、ユーザーが効率的にブロックチェーンを活用したサービスシステムを構築できるよう、以下6種類のプロダクトモデルを無料のオープンソース(改変可能・商用可能ライセンス)で用意している。ユーザーのビジネス形態に合わせて自由にカスタマイズが可能だ。

  1. 「医療機関カルテ共有システム」:医療カルテの情報共有を可能にするシステム
  2. 「トークントレーダー」:取引所構築システム
  3. 「地域トークン」:地域ポイントの発行・運用ができるシステム
  4. 「転売抑止チケット」:不正転売の抑止とチケットレス化を実現するシステム
  5. 「KYC」:本人確認を簡単・スピーディーに行えるシステム
  6. 「Pay@Table」:店員を呼ばずにテーブル会計ができるシステム

今後「Z.com Cloud ブロックチェーン」は、高速取引プロトコル「SWAP」など、イーサリアムの仕様に合わせてさらなる機能の拡充を図る方針だ。

ブロックチェーンビジネスの立ち上げに大きなメリットとなるか

同社では実証実験として、本人のみ受け取り可能な宅配ボックスやベトナムサッカー協会のオンラインチケット販売に応用して成果を上げているという。

データのアクセスコントロールが可能なことやトランザクション手数料(Gas)の代払い機能、6種類のプロダクトモデルをオープンソースで提供といった特長は、ブロックチェーンを利用したビジネスの立ち上げにとってかなりのメリットとなる。今後の動向に注目したい。

img: PR TIMES