アプリは多数の市場での重要性を増す!世界のアプリ市場データから読み解く2017年とは

スマホを持っていないという人はすでに少数派であり、おそらくスマホを持っている人でアプリを開かない日がある、という人も少数だろう。というように、もはや私たちの生活のなかではアプリを使用して情報を発信/獲得したり、なにかしらのクリエイティブを作ったり、コミュニケーションをとったりということが当たり前になっている。

アプリ市場データを提供するApp Annieは、2017年を振り返る調査レポート「2017年アプリ市場総括レポート」を発表した。ここでは、各カテゴリごとのポイントを抜粋し、App Annie Japan代表滝澤氏や利用企業からのコメントを交えながら紹介する。

2017年の消費支出数は130億ドルを突破


2017年のユーザーのアプリダウンロード数は、2015年に比べて60%増えた。ユーザー単位で換算すると、1人のユーザーが毎月新しいアプリを2本以上ダウンロードしたことになる。

また、Google Play、iOS App Store、サードパーティのAndroidストアを合計した消費支出は、2年前から2倍以上増えて 860億ドルを突破した。これは、世界の映画興行収入の195%以上の数値であり、大きな躍進を遂げていることが分かるとしている。

発展途上国におけるスマートフォンおよびアプリの力強い普及と、成熟市場におけるアプリの収益力の向上に牽引され、消費支出は今後も増加すると予測している。

日本全体で見てみると、2017年度消費支出は13億ドルを突破し、2015年度に比べ60%増加した。

App Annie Japan代表の滝澤氏は

「現在大きなシェアを占めるゲームも大きく伸びたことに加え、コミックやソーシャル、音楽や動画などのエンタメ系などの非ゲーム系分野も伸びている。これは、アプリが消費行動に根付いたということのあらわれだろう。」

とコメント。

Fintechサービスの影響力が拡大

モバイルがチャネルとして存在感を増したことで、モバイルに特化したFintechサービスの影響力が拡大している

便利で使いやすいサービスを提供することは、銀行にとって大きな課題だ。フィンテック業者はすでにアプリを通じてこれを実現し、口座情報の集約、決済、投資などのサービスをカバーしている。Appleも「iMessages」、「Siri」、「Apple Pay」アプリなどを通じて利用可能な個人間送金サービスを開始している。

こうしたFintech業者の集合が、フルサービス型のリテールバンクを脅かす存在となっているという。Fintech業者が提供するサービスはいずれ業界標準となり、対応の遅いリテールバンクは取り残されることになるとしている。

Lloyds Banking Group モバイルインサイトおよびストラテジー責任者マーティン・ローバトム氏は

「Lloydsにとって、アプリは変化するユーザーニーズに対応するための戦略的資産であり、よりパーソナライズされた適切なバンキング体験の提供を可能にするもの。ゆくゆくは、あらゆる取り組みをモバイルファーストにしたいと考えている。」

とコメントしている。

仮想通貨市場の盛り上がりで関連するアプリの利用が急増

仮想通貨市場が盛り上がるにつれて、関連するアプリの利用が急増している。仮想通貨をいつでもどこでも監視、保管、売買できるこの種のアプリは、トレーダーには欠かせないツールになった。

これら仮想通貨アプリは、仮想通貨の価格と消費者の熱狂の高まりに合わせて急速にユーザーを獲得している。

滝澤氏は

「仮想通貨は2017年を通してニュースを賑わせた。仮想通貨の取引においては、手軽に素早く価格をチェックし、取引を行うというニーズが強く、ユーザーの間では、アプリが使いやすいかどうか、が取引所選びの1つの基準にもなっているようだ。」

とコメントしている。

Instagramの平均MAUはこの2年間で30%増加


ソーシャルは、Facebookのアプリが世界各国の市場を席巻する中、日本ではLINEが第1位となった。

Instagramは2017年第4四半期、米国のAndroidフォンにおける総利用時間が2年前と比べて70%増加した。これを牽引したのは、月間アクティブユーザー数(MAU)とユーザーあたり利用時間の安定した成長だ。Instagramの平均MAUは、iPhoneとAndroidフォンを合わせ、この2年間で30%増加している。

すでに成熟したアプリであるInstagramがこのレベルの成長を維持できたのは、2016年と2017年を通じ、適切な機能追加をタイミングよく行ったためだとしている。

Telegramはメッセージの暗号化に加え、アプリの使いやすさと非営利企業であり続けるという同社の姿勢が、重要な価値としてユーザーの共感を呼んでいる。

ソーシャルメディアとメッセージングは競争相手がひしめくカテゴリーかもしれないが、消費者が求めている重要な機能を提供して差別化することで、今からでも大きなユーザー基盤を獲得できるだろうとしている。

ライドシェア(相乗り)サービスは、2017年の収益が世界全体で450億ドルに達するなど、高い収益性を維持しているが、競争もきわめて厳しい市場だ。世界を見渡すと、市場は細分化が続いており、ユーザーとドライバーを確保するためにし烈な価格競争が繰り広げられている。

相乗りサービスは、フードデリバリーや宅配から金融サービス(UberやGrabの決済サービスなど)に至るまで、収益機会の拡大を進めている。

滝澤氏は

「日本ではライドシェアは普及していないが、サービス開始を望む声は少なくない。都心も地方もタクシーがなかなか捕まらない状況があり、そこを補完できるのではないか。自転車シェアサービスの動きも活発だ。中国の大手サービスのmobikeやofoは国外展開を進めており、LINEとmobikeの提携も話題になった。」

とコメントしている。

国外パブリッシャーが大きな存在感を放ったゲーム市場

ゲームは、ユーザー基盤の拡大が続いている。日本は2年で60%成長した。

滝澤氏は

「2017年は国外パブリッシャーが大きな存在感を放った1年だった。従来、国外パブリッシャーが苦戦してきた日本市場だが、リネージュ、アズールレーン、崩壊3rdなど、中国や韓国のパブリッシャーによるゲームは国内タイトルに引けをとらない成功を収めたと言える。
また、任天堂の各種IPやみんなのゴルフなど、コンソール機で人気を博したIPがアプリにも参入してた。年末には、ほのぼのとしたどうぶつタワーバトルが話題になる一方、ハードコアなバトルロワイヤル系シューティングゲームが人気を博すなど、話題に尽きない1年だった。」

とコメントしている。

Pokémon GOは、2016年にリリースされ、ARに対する一般消費者の関心を高めた。Nianticが次にリリースを予定しているHarry PotterのARゲームは、Pokémon GOに続くだろう。

Appleが開発者向けにARKitをリリースしたが 、ゲームの分野では「AR」ブームは起きていない。今はまだ、魅力的な体験を提供するための取り組みを開発者が続けているところである。

現在はエンターテイメントをはじめとするゲーム以外のカテゴリーのほうが、ARの採用が進んでいる。とはいえ、アプリストアのアプリ全体からみると、ARアプリは今もごく小さな割合にすぎないとしている。

2017年は人気MMORPGシリーズのLineageが、Lineage 2 Revolution(Netmarble)とLineage M(NCSOFT)でモバイル進出を果たした。

2本とも、App Annieによる2017年のゲーム収益ランキングトップ10に入った。新しくリリースされたゲームでランク入りしたのはこの2本だけ。

Lineage 2 Revolutionは2016年12月末に韓国でリリースされた。世界リリースは2017年11月のため、各国で新規オーディエンスを増やし2018年はさらなる成功を収めるだろうとしている。

Lineage Mは第2四半期末に世界でリリースされた。たちまち成功を収め、iOSとGoogle Playの両ストアで、2017年第3四半期は2位以下に大差をつけて収益トップに立った。

小売関係のアプリは着実にユーザーが積み上がる

中国発のショッピングイベントである独身の日は2017年、世界への影響力を著しく拡大した。

ショッピングイベントのグローバル化が進んでいる例として、AliExpressが独身の日(2017年11月11日)に、iPhoneでは69カ国、Androidフォンでは38カ国で「ショッピング」アプリのダウンロード数1位を記録した。

「ショッピング」アプリのダウンロード数が最も多かった日は、中国、イギリス、米国、および全世界のいずれのランキングでも、独身の日またはその前後だった。

2017年11月は、「Black Friday(ブラックフライデー)」の検索ボリュームが3カ月前と比べて115%増加した。これは、ブラックフライデーのショッピングニーズを満たすためのアプリを検索するユーザーが増えているということ。一方、このキーワードのランク難易度も2017年8月から185%上昇した。このキーワードを活用しようとするアプリが多いということである。

ホリデーシーズンにおけるモバイルマーケティングはかつてないほど重要になってきている。

アプリが競争力を維持するには、ASO対策と有料のアプリストア検索広告の両方に取り組む必要があるとしている。

滝澤氏は

「App Annieのデータを見ると、小売関係のアプリは着実にユーザーが積み上がっていることがわかる。日本ではマクドナルドやユニクロ、無印良品が良いアプリ活用事例だ。海外は、商戦のタイミングで小売アプリがミニゲームを提供したりするなど、アプリならではの工夫が見られる。日本でも今後もさまざまな施策が生まれてくると思う。」

とコメントしている。

アプリに対する消費者の関心は高まる一方に

こうしてみると、アプリに対する消費者の関心は高まり続けているのがわかる。アプリは顧客との関係を構築するための最も重要なチャネルとなってきている。

今後はアプリを経由した消費者行動が当たり前の時代になり、よりアプリの重要度は高まっていくだろう。

img: PR TIMES

モバイルバージョンを終了