ここ数年、仮想通貨であるビットコインに注目が集まっている。
取引参加者が増え、価格も上昇し、ビットコインによる決済が可能なお店が増えるなど話題になることが増え、興味を持った人も多いだろう。
このビットコインのような仮想通貨を支えるのが、「ブロックチェーン」と呼ばれるイノベーティブな技術だ。仮想通貨と「ブロックチェーン」の関係は密接であるが、「ブロックチェーン」の技術は応用範囲が広く、現在、仮想通貨以外にもさまざまな研究や取り組みがなされている。
まず、「ブロックチェーン」とは何なのか確認したい。
「ブロックチェーン」とは何か
ブロックチェーン(Blockchain)は、分散型台帳技術を意味する。
ビットコインの場合、ひとつひとつのブロックに、通貨をどのアドレスからどのアドレスに送ったかという「取引記録(トランザクション)」を格納する。そのブロックを繋いだものが、「ブロックチェーン」となる。
ブロック間は、「ハッシュ値」を共有することで結び付けられ、データの改ざんを防ぐ。「ハッシュ値」は、元データをハッシュ関数に入力すると得られる値。元データを改ざんすると、他のブロックのハッシュ値まで変わってしまうため、すぐに改ざんが発覚する。
また、ブロックチェーンのデータは、中央のサーバーに保存されるのではなく、P2Pでビットコインのネットワークに参加する多くのコンピュータに保存する、という形を取っている。マイナーと呼ばれる参加者による「Proof of Work(プルーフ・オブ・ワーク)」という作業が存在し、これもブロックチェーンの安全性を高めている。
このブロックチェーンの安全性が、今さまざまな分野で注目されている。
「エストニア国家インフラ技術」とブロックチェーン技術を保険金支払業務へ応用
2018年1月15日、Planetway Corporation(以下・Planetway)は、東京海上日動火災保険株式会社(以下・東京海上日動)との間で行っていた、医療情報連携の実証実験が完了したことを発表した。Planetway(プラネットウェイ )は、米国カリフォルニア・エストニア・東京に拠点を持ち、「グローバル通信・IoT・データ」をキーワードとした事業をおこなう企業。
今回の実証実験では、Planetwayの「avenue-cross」と従来のブロックチェーン技術を組み合わせて、東京海上日動がかかわる、保険金請求業務の効率化を検証した。「avenue-cross」は、エストニアの国民番号制度を支える、高いセキュリティ技術を適用したデータ連携基盤だ。
実験では、東京海上日動の顧客の保険金請求に関わる医療情報を、ブロックチェーンを通じて医療機関に要求。データ連携基盤「avenue-cross」を通じてデータを受領することで、セキュリティを確保しつつ、保険金支払業務の迅速化が可能かを検証した。
これまで郵送で行っていた、診断書のやりとりなどを簡略化し、保険金請求から保険金支払までの期間を1ヶ月程度短縮することが可能となるようだ。ブロックチェーンには、プライバシー保護についての弱点があったが、「avenue-cross」との組み合わせで解決されたという。
ブロックチェーン技術の応用は、仮想通貨・保険をこえて自動運転・ドローンの領域にも応用される。
自動運転・ドローン管制の分野に応用されるブロックチェーン技術
ドローンの分野においては、ブロックチェーンの技術が管制システムの構築に応用される。米連邦航空局の推計では、2021年までに米国内でのドローンの台数が、500万台を超える可能性がある可能性があるといわれている。
ドローンが飛行する際には、ドローン・パイロット・自動飛行システムなどの間で、データ通信が行われている。台数が増えると、データ通信量も増加し、安全性を保つための技術が必要となる。
ここへ、ブロックチェーン技術を導入し、セキュアな国際的ドローン管制システムを構築しようというわけだ。国際非営利組織「Distributed Sky」や、NASAなどが取り組みを進めている。
また、コネクテッドカー・自動運転車の分野では、トヨタ自動車株式会社が、TRI(Toyota Research Institute)とMIT(マサチューセッツ工科大学)のメディア・ラボとの協力により、ブロックチェーンを次世代自動車開発に適用する研究をすすめる。
自動運転では、個人の自動車オーナー・企業の運行管理者・自動車メーカーのあいだでの、安全な情報共有が必要だ。
ほかにも、ブロックチェーン分野で有力なスタートアップとの連携を進め、カーシェアリング、走行距離ベースの自動車保険など、自動車が蓄積するデータを活用したサービスの開発を目指す。
「ブロックチェーン」の安全性が、デジタルデータの適用範囲を広げる
ビットコインなど仮想通貨の安全性を支える技術として、「ブロックチェーン」というイノベーティブな技術が登場した。
今、仮想通貨だけでなく、保険・ドローン・自動運転などの分野で、大量のデジタルデータをセキュアにやり取りする技術へのニーズが高まり、「ブロックチェーン」の適用範囲が広がっている。
安全性に関する懸念が残っていた、世界のデジタル化が、「ブロックチェーン」の登場により、加速する可能性が高まっている。
img: PR TIMES