最近は「自動運転」という言葉を耳にすることが多くなってきた。TVや動画サービスを閲覧していると、盛んにこのワードが出てくる。自動車の新製品も自動停止機能を取りいれたものが増えてきている。

このような中ライドシェアリング サービスを提供する Uberは、自社の自動運転車両に搭載するAIコンピューティング システムに NVIDIAの技術を採用したと発表した。

UberのAI 搭載自動運転車両/トラックの走行距離はすでに200 万マイル超え

Uberは、米国をはじめ世界各国で利用されている配車サービスを運営していることで有名。このサービスは携帯アプリから今いる場所にハイヤーを呼ぶことができるというもの。これまでに利用回数は50億回を超えている。

Uberは2015年の初めに自動運転技術への取り組みを開始した。2016年秋にピッツバーグで初の公道走行実験を行い、2017年のはじめには、フェニックスで 2 回目の実験を開始している。この間に Uberの自動運転車は5万回を超える乗客輸送を行い、200万マイル超の走行距離を記録しているという。

一方、Uberが自動運転車両のAIシステムに採用した「AIコンピューティングカンパニー」であるNVIDIAは、1999年に開発したGPUによって並列コンピューティングを一変させた。最近では、GPUディープラーニングが最新AIの新時代の火付け役となっている。

自動運転/配車車両と自動運転の貨物トラックに最新のAI技術を投入

今回の提携では、Uber Advanced Technologies Groupの自動運転車両と自動運転トラックでNVIDIAの技術を利用し、渋滞など複雑な環境においても各車両が世界を認識し、次に起こることを予測し、最善の方策をすばやく選択できるようになることを目指す。

具体的には、高精細の360度サラウンドカメラとライダーを通して世界を知覚する。そして、cm単位の精度で自車の位置を認識して、他の車両や人を検出および追跡し、目的地までの安全で快適な経路を計画する。

Volvo XC90 SUV を使いテストがスタート

Uberは、Volvo XC90 SUVを使った最初のテスト車両でNVIDIA GPUコンピューティング テクノロジーの使用を開始した。現在では高性能のNVIDIA プロセッサーを使用して、自動運転/配車車両と自動運転の貨物トラックの両方でディープニューラルネットワークを稼働させている。

Uber車両の開発ペースは急激に加速しており、直近では100万マイルの自動走行を100日間で達成しているという。

今回の提携についてNVIDIAの創業者兼CEO、ジェンスン・フアン氏は

「交通輸送の将来はモビリティサービスによって変革される。便利で手頃な MaaSが都市や社会を作り変え、今後10年間で予想される10億人規模の世界人口の増加に対処できるようになる。自動運転車両はモビリティ サービスの普及にとって必要不可欠な技術である」

とコメントしている。

自動運転車の市場規模は2050年には7兆ドルに

米国のIntelと米調査会社Strategy Analyticsの「Passenger Economy(パッセンジャーエコノミー)」に関するレポートによると、自動運転車が実用化された場合、2035年には8,000億ドル(およそ88兆円)、2050年には7兆ドル(およそ770兆円)の市場規模に達するという。

また、同レポートによると消費者向けのMaaSとしては、自動運転車のカーシェアリングサービスが拡大し、オンデマンドで移動手段を利用するサービスの登場が予測されるという。

移動手段を提供するサービスの需要が高まれば、自動車会社は車体を製造するだけではなく、移動サービス全体を提供する“プロバイダー”として、ビジネスの幅を広げていく可能性を示唆している。

残りの市場を構成するのは、自動運転車を応用した新たなサービス、例えばAmazonによる自動制御ドローンを使った配達などだという。

自動運転は2050年に”7兆ドル超え”の経済効果に――Intelが「パッセンジャーエコノミー(乗客経済)」を発表

自動運転によるパッセンジャーエコノミーの拡大

同レポートでは自動運転車が生み出す経済効果をパッセンジャーエコノミー(乗客経済)と名付け、その影響についても考察している。

それによると、通勤時間の短縮によって新たな需要が生み出されるとされており、特に、車内では大きな画面で映像を楽しめるようになるため、新たなコンテンツなどによる広告ビジネスなどへの影響が大きいと予測している。

ただし、ドライバーの失業など、雇用へのマイナスな影響も指摘されており、これらの課題対策を含めた新たな価値の創造や取り組みが必要となるだろう。

現実味を帯びてきた自動運転への取り組みは、国をあげてのプロジェクトへと成長する可能性は大きい。私たちが子供の頃に描いていた、無人で自動車が走る世界が目の前までせまってきているのかもしれない。

img; PR TIMES