新年を迎え、日本では福袋の売出しなど、リアル店舗もオンライン店舗も、初売りの賑わいをみせている。

2月には、中国が春節(旧正月)を迎え、日本への中国人観光客による“爆買い”が話題になることだろう。

その一方で、インターネットの発達により時間と距離の制約をなくし、市場を世界に押し広げてきたEC(eコマース)が、この“爆買い”に取って代わろうとする動きが出始めた。

日本伝統の「モノづくり」をグローバルに展開する「越境EC」の登場

2018年1月9日、Inagora(インアゴーラ)株式会社は、「100年100社プロジェクト」を昨年12月28日より開始した、と発表した。Inagora(インアゴーラ)は、日本商品特化型越境ECプラットフォームの「豌豆(ワンドウ)プラットフォーム」を運営する企業。その「豌豆(ワンドウ)」が、約100年以上の歴史を持つ日本企業100社を集め、商品を中国消費者向けに販売するのが 「100年100社プロジェクト」だ。

これまで、中国消費者の日本商品の購買対象は、炊飯器・温水洗浄便座・医薬品・化粧品などいわゆる「爆買い」商品に集中されがちだった。しかし、訪日中国人が増加し、日本の老舗企業が手がける商品の品質の高さや信頼力がソーシャルメディアなどを通じて周知され、新しいニーズが目立ち始めている。

「100年100社プロジェクト」では、「爆買い」商品に留まらない日本の商品の奥深い魅力を伝える新しい取り組みとして、中国消費者の新しいニーズに応え、約100年以上の歴史を持つ日本の老舗企業を「豌豆(ワンドウ)」に集め、各社の歴史や概要、モノづくりにかける思いなどを中国消費者により丁寧に紹介した上で販売するという。

日本のそうめんの発祥地といわれる奈良県の「三輪そうめん」や、400年以上の歴史を持つ和菓子の老舗「本家菊屋」の「御城之口餅」などが、取扱商品として挙げられている。

「豌豆(ワンドウ)」は、日本の企業と中国消費者を結ぶ、ワンストップソリューション型のBtoBtoC越境ECプラットフォームだ。商品の翻訳、物流、決済、マーケティング、顧客対応、多チャンネル展開など、「情報の越境」「物流の越境」「決済の越境」のすべてを解決。日本の企業はインアゴーラの日本国内倉庫に商品を配送するだけで、巨大な中国市場に進出することがでる。

では越境先となる、中国のEC市場の現状はどうなっているのだろうか。

中国EC市場の現状

中国では近年、政府によるインターネット取引健全化の取り組みや、キャッシュレス決済市場の拡大を背景に、EC市場の成長が目覚ましい。

2017年に発表された、三菱東京UFJ銀行(中国)有限公司のレポートによると、2016年度の中国EC市場の規模は約23兆元(368兆円)だった。これは、対前年比25.5%増となる数字で、成長力の高さがうかがえる。

また、経済産業省のレポートでは、2016年における中国国内から日本製品を購入する越境ECの規模は、約10兆円。2020年には、倍の20兆円に達することが予測されている。

中国ECサイト最大手のアリババでは、マイクロソフトが開発したAIである「シャオアイス」を活用したチャット問い合わせを導入したり、独自のスマートスピーカー「Tmall Genie」が、ECに対応するなど新しい動きも活発だ。

また、中国では、インターネット上でインフルエンサーがストリーミング配信で商品を紹介し、視聴者が質問等をコメントし、リアルタイムにコミュニケーションしながら商品を購入できるサービスである「ライブコマース」が社会現象となり、1人で年間50億円売り上げるものが現れるほどの盛り上がりを見せた。

この巨大なEC市場をもつ中国に、日本の企業は越境ECによって進出を始める。

中国市場への「越境EC」が観光客による“爆買い”をリプレイスするか

外国人旅行者を自国へ誘致するインバウンド推進の取り組みで、日本では中国人観光客による“爆買い”が盛んになった。デパートやドラッグストア、家電量販店は、売上の増大に沸いた。その対象は、化粧品、医療品、家電製品などだった。

観光などを通した、日本への理解が進むに連れ、日本特有の老舗企業による伝統の「モノづくり」への理解が深まり、中国の消費者に新しいニーズが生まれ始めた。さらに、日本の企業が簡単に越境ECに参入できるプラットフォームも登場し、変化の兆しがあらわれている。

これからは、中国人消費者の新しいニーズに対応する「越境EC」が、中国人観光客による“爆買い”をリプレイスしていく動きが進むことになるのかもしれない。

img: PR TIMES , 1688.com