医療保険破綻の可能性がささやかれる2025年問題、超少子高齢化社会がわたしたちの目の前に迫ってきている。こうした時代の動きに併せて盛り上がってきたのが「ヘルステック」市場だ。
ヘルステックは、「ヘルスケア」と「テクノロジー」を掛け合わせたものを指す。近年、拡大し続ける医療問題に最新のIT技術やサービスを駆使して挑もうとする企業が業界を問わず出てきており、近年さまざまなヘルスケアサービスが登場した。
保険とITの相乗効果、「アクサ生命×KDDI」の連携によるヘルステック研究とそのサービスとは?
アクサ生命保険株式会社(以下・アクサ生命)とKDDI株式会社(以下・KDDI)は、医療分野における課題解決を目的に、ITと医療を組み合わせたヘルステックの共同研究ならびにヘルスケアサービスの協業を開始した。
共同研究では、以下の2つが重点的に進められる予定だ。
【ヘルステックの共同研究】
- 医療分野における課題解決やIT化を推進するためのサービスプラットフォームの構想・企画・開発
- ヘルスケアサービスの協業で得られた知見やデータに基づく新規事業、商品・サービスの開発
医療保障分野で40年以上にわたる実績、グローバル企業としての知見やノウハウを持つアクサ生命と通信分野における豊富な技術、顧客から集めたビックデータなど、さまざまなデータ分析に関する知見を持つKDDIがタッグを組むことがこの連携を可能とした。
ヘルスケアサービスの協業では、アクサ生命が提供している「アクサ メディカルコーディネーションサービス」にKDDIが提供する、自宅でできる血液検査サービス「スマホdeドック」を組み込むことが発表されている。
この2つのサービスを合わせることで、自宅など病院以外の場所での健康診断の実施から各種病気の予防、体の状態に合わせたサービスの提供を実現した。
最新テクノロジーや型破りなビジネスモデルも登場
ヘルステックには他にも様々な企業が挑戦している。ここでは、その一例を紹介しよう。
まずは、病院という固定概念を壊すことに挑んでいるサンフランシスコのヘルスケアスタートアップForwardの取り組みだ。
・これからは病院も移動式。GoogleとUberの遺伝子が「次代の病院」作りに挑戦
彼らは患者が病院を受診するのではなく、病院が患者を訪問するスタイルを打ち出した。トレーラーに医師と最先端の医療技術や機器を乗せた「トレーラークリニック」というサービスを運用している。
日本の医療系スタートアップ株式会社Kids Publicは「小児科オンライン」というサービスを提供している。
平日夜に、現役の小児科医がオンラインで子を持つ家族のお悩み相談に乗ってくれるのだ。病院まで時間のかかる医療過疎地域に住む人はもちろん、海外に住む日本人も利用している。
最後に世界的な製薬会社大手であるノバルティスファーマがはじめた、治療薬が効いた患者にのみ支払いを求める「成功報酬型」のビジネスモデルを紹介する。
・効いた薬にだけ支払いを。医薬品業界に見る「成功報酬型ビジネス」の可能性
対象薬は同社が提供する小児・若年者の急性リンパ性白血病の新薬「キムリア」だ。2017年8月に米国で一部の患者に向けて、この成功報酬型の適用が承認された。
なお、日本ではこのような制度が適応された薬は存在しない。米国同様の販売が行えるよう、現在日本政府にも働きかけている。
“IT×ヘルスケア×〇〇”がヘルスケアテックの可能性を広げる
ITとの掛け合わせによって医療分野の進化は目覚ましく、今まで制約を受けていたサービスやビジネスモデルが提供されるようになった。
将来的にはユーザーから必要性が訴えられているサービスやインフラが実現していく可能性も高い。
現在は“IT×ヘルスケア”という組み合わせが主流だが、今後は3つ目の要素が組み合わさることで、よりヘルスケア業界やヘルスケアテックの可能性に広がりと深みが出ることに期待していきたい。