IBMは12月18日、IBM Q早期アクセス版商用量子コンピューティング・システムを活用する最初の企業、研究機関、研究所を発表した。
今回のユーザーは、JPMorgan Chase、Daimler AG、Samsung、JSR、Barclays、日立金属、本田技術研究所、長瀬産業、慶應義塾大学、オークリッジ国立研究所、オックスフォード大学、メルボルン大学をはじめとする企業・大学・研究機関である。
世界有数のFortune 500企業、学術研究機関、国立研究所がコラボ
初期12メンバーは、新しく設立されたIBM Q Network(US)に参加する。
このネットワークは、世界有数のFortune 500企業、学術研究機関、国立研究所のコラボレーションであり、IBMと直接連携し、量子コンピューティングを進化させるのが目的だ。
また、IBM Q Networkは、IBMのオープン・ソースの量子ソフトウェアと開発者ツールに基づく量子コンピューティング・エコシステムの拡大も推進するという。
20量子ビットの汎用量子コンピューティング・システム「IBM Qシステム」とは
IBM Qはビジネスおよび科学アプリケーション向けの商用汎用量子コンピューティング・システムの構築に向けた業界初のイニシアチブである。
IBM Q Networkは、量子コンピューティングの専門知識および開発リソースと、現在最も高度で拡張可能な20量子ビットの汎用量子コンピューティング・システム「IBM Qシステム」をクラウド・ベースで提供する。
またIBMは、実働する初の50量子ビットのプロトタイプ・プロセッサーを構築し、性能評価も行った。IBM Q Network参加メンバーには、次世代IBM Qシステムであるこのプロトタイプへのアクセスがオファーされる予定である。
IBMのサイエンティストおよびエンジニアと直接連携
参加メンバーは、IBMのサイエンティストおよびエンジニアと直接連携し、特定の業界向けに量子コンピューティングの活用分野を開拓を目指す。
また、クラウド・ベースのIBM Qシステムへの直接アクセスを利用する。JPMorgan Chase、Daimler AG、Samsung、JSR、のIBM Q Networkパートナーは、それぞれの業界において、量子コンピューティングの可能性を多岐にわたり検討する。
それは、量子コンピューティングのメリットを得られる可能性があり、従来型コンピューターと比較して、量子コンピューターを利用すると、より迅速に、あるいはより効率的に解決できる、現実世界の問題を示すことであるとしている。
4大陸の5地域拠点にIBM Q Networkハブを開設
機能化学素材のJSRは、量子コンピューティングを活かしたエレクトロニクス、環境、エネルギーの新素材開発の可能性を探索していくという。
さらに、IBM Q Network メンバーのBarclays、日立金属、本田技術研究所、長瀬産業は、量子コンピューティングの一般的なアプローチに関する知識を蓄え、金融、素材、自動車、化学の各業界で見込まれるユースケースについて調査を開始する。
一方、IBMは、IBM Qコンサルティングを導入。これは、コンサルタント、科学者、そして業界の専門家集団が、ユーザーによる量子コンピューティング技術を応用した新たなビジネス価値の実現を支援し、ユーザーがそうした技術に対応できるようカスタマイズされたロードマップを提供するもの。
また、4大陸にわたる5つの地域拠点IBM Q Networkハブを開設していく。IBM Q Networkハブは、量子コンピューティングの学習、スキル開発、そして実装を促進するうえで重要な役割を担う。米国のIBM Research、日本の慶應義塾大学、米国のオークリッジ国立研究所、英国のオックスフォード大学、オーストラリアのメルボルン大学に設けられるという。
AIのさらなる進化に寄与
IBMは、すでにMITと連携し、MIT-IBM Watson AIラボの一環として量子コンピューティングと機械学習の組み合わせの可能性について研究している。今後もIBM Qを用いて最先端の量子計算研究に取り組む方針だ。
スーパーコンピュータよりも3,600万倍速く計算できるという量子コンピュータ。AI分野での活躍を期待されているが、今回のネットワーク構築でAIや機械学習やディープラーニングのさらなる進化に寄与することは間違いないだろう。
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