未来を創る13の企業!オーディエンスと登壇者をつなぐ新たなピッチイベントの形「NEW PITCH β」が開催

株式会社電通が、2017年12月7日にピッチイベント「NEW PITCH β(ニューピッチベータ)」を開催した。会場は大阪府にある電通関西支社のJAM CAFEだ。

このイベントの運営は、電通が提供するサービスの一つ「TANTEKI(タンテキ)」である。TANTEKIは、スタートアップをはじめ、大企業の事業創発活動、VC、アクセラレーターに向けて、コミュニケーション領域での業務支援を展開している。

スタートアップが登壇するのは、自社サービスを投資家やユーザーにアピールすることはもちろん、資金調達への布石、大企業と接点を持つきっかけ、人材の呼び込みなど全方向でのメリットがある。

今回の「NEW PITCH β」には関西に拠点やゆかりのあるスタートアップなどを中心に13チームが登壇し、各サービスの特徴やそのビジネス形態、社会における意義などが熱くプレゼンされた。

各社の取り組みはもちろん、そこから感じられる展望などを中心にNEW PITCH βの概要をレポートする。

スタートアップへの興味を可視化「Cheer Button(チアーボタン)」

NEW PITCH βでは、「Cheer Button(チアーボタン)」という電通が開発したプレゼンや事業内容に対して“オーディエンス(聴衆)がどれだけ関心や興味を持っているのか”を属性別に可視化するツールが導入された。

属性は、

の5つのジャンルに分かれている。

参加者はプレゼン中に拍手の形をしたシェアボタンを押すだけで、自分が興味や関心を持っていることを登壇者にアピールすることができるのだ。

そして登壇者は、専用サイトから“プレゼンのどこで参加者が反応を示しているか”を確認することが可能となっている。これにより自身のピッチに関心が集まったタイミングやその内容、関心を寄せている属性が可視化されるのだ。

今回は、このような新たな取り組みもみられた「NEW PITCH β」の全容を登壇者のプレゼン内容ごとにレポートしていきたいと思う。

NEW PITCH βに登壇した全13チームの内容を公開!

繊維・ファッション業界フリマサイト「SMASELL(スマセル)」
–株式会社ウィファブリック / 福屋 剛

私たちがいつも身につけている衣服、また様々な繊維によって作られる生活用品、それに使用されている繊維などの廃棄量をご存知だろうか?

世界中で実に年間8,000万トンもの繊維・ファッション関連の品物が廃棄されるているのだ。そして企業は廃棄に対して「コスト」「事業リソースの低下」「環境」という3つの問題に直面する。こうした繊維・ファッションが抱える問題に立ち向かうのが、SMASELLだ。

SMASELLのモデルは在庫のある企業と特価商品が欲しい企業とのマッチングだ。卸業者を挟まないことで、通常流通以下の価格で提供することが可能となった。またサンプル取り寄せや条件交渉という機能も実装している。三井住友のエスクローサービスを取り入れたことで、口座開設の手間削減にも成功した。

新規市場創設は80兆円規模と予想されてはいるが、業界では未だにFAXが使用されているなど、IT化の遅れが目立つ。SMASELLはこうした繊維・ファッション業界に変化をもたらそうとしており、どれだけ加速度的に市場を構成していけるかが今後の鍵となりそうだ。

SMASELL(スマセル)

子供のためのロボット制作&プログラミング教室「ロボ団」
–夢見る株式会社 / 重見 彰則

「世界でも勝負できる子供を育てる」をミッションに、好きを学びに変え、理数・ITに強い子供たちを育てる大阪初の教育スクールが「ロボ団」だ。

ロボ団では“プログラミング“を特に重要視しており、ロボットを通してその技術や考え方を学ばせる。ここでロボットを使うのは、子供が学ぶ上でトライアンドエラーを行いやすく、そこに対して目に見える形でのフィードバックがわかりやすいためだ。

またタブレット教育が導入されており、ユーザーの動向はもちろん、講師の品質フィードバックやペアラーニングなどにも活用されている。

日本でも2020年からのプログラミング教育が必修になるように、現在世界でもプログラミングは子供の学びであり“遊び”にもなりつつある。今後の社会を乗り切る力をつけることもそうだが、その社会自体を築いていく力としてもプログラミングは大きく期待されている。

だからこそロボ団は子供向けのプログラミングだけではなく、キャリアを築けるような事業も目指している。今後は、優秀なエンジニアを排出していけるよう、横だけでなく、縦にも強い事業を展開していきたいと構想している。

ロボ団

脱・腰痛アプリ「ポケットセラピスト」
–株式会社バックテック / 福谷 直人

ITの進化に伴い、仕事の形態も変化してきており、仕事の時間もデスクでPCに向かうことに費やすことが多くなってきていることは、社会人なら実感していることだろう。その弊害として腰痛や肩こりといった身体的な課題も大きくなってきている。

京都大学大学院医学研究科発スタートアップとして、企業の健康経営の支援に取り組んでいるのが「ポケットセラピスト」だ。このサービスの目的は、企業が健康増進のために社員にコストをかけることをうながし、社員一人ひとりの生産性を高めることにある。

健康増進のためにコストを割く、ということは企業の考え方としては推進しづらいのではないかと思うかもしれないが、業務による健康の損失が与える生産性の低下と比較すると、そのコストは大きいものではないようだ。

ポケットセラピストでは“腰痛のタイプを判定するアルゴリズム”によって痛みの可視化ができるようになり、今後は肩こり版も登場する予定となっている。また、登録企業の生産性を可視化するサービスも提供しており、現在導入している企業では、19%の生産性向上などの実例が報告されている。

腰痛などの体の痛みは、欠勤などの社員の働く機会や意欲を損失させる原因だ。ポケットセラピストを通して、痛みの原因を知ることやその体験を共有することは、社員のモチベーションアップやメンタルヘルスの改善にも繋がっていく。

ポケットセラピストによって「医療 ✕ テクノロジーで、人生に希望というエッセンスを。」という理念をバックテックは実現しようとしている。

ポケットセラピスト

スポーツがうまくなるアプリ「スポとも」
–株式会社だんきち / 与島 大樹

もっといい練習法が知りたい、いいコーチに巡り会いたいと思うのは、スポーツで上を目指す人にとっては当たり前の希望だろう。ただし、地方であればあるほどその解決は難しく、都心であったとしても簡単に叶う希望ではない。

そんなスポーツレッスンの課題である“時間と場所の制約”を解決しようとしているのが、オンラインでスポーツ指導が受けられるアプリ「スポとも」だ。“コーチ不足で指導を受けられない子供”と“指導を行いたくても場所や生徒が居ないコーチ”のマッチングを可能とする。

スポともでは、スマホで自分のプレーを撮影した動画を送ると、プロ選手からアドバイスが返ってくるというシステムをとっている。IT技術を用いることで、遠隔地であってもリアルタイムでのカウンセリングやフィードバック、過去動画を用いることで成長の見える化を可能としているのだ。

現在対象スポーツは、野球、ゴルフ、テニスを中心に10種目で、所属するコーチは450名弱だ。地域によるスポーツ教育の格差解消を目指し、スポーツを学ぶ機会損失を減らすような仕組みが実現できることに期待したい。

スポとも

誰でも簡単!モバイルスタンプラリー「RALLY(ラリー)」
–株式会社フェイスクリエイツ / 大山 雄輝

どんな形であれ、スタンプラリーというイベントに参加したことがある人は多いはずだ。企業イベントや自治体のイベントまでその形態は幅広く採用されており、集客や送客の1つの形として利用されている。

従来では紙の台紙を持ち、その名の通り“スタンプ”をその台紙に押して回るという形態であったが、2人に1人がスマートフォンを持つ時代において、スタンプラリーの電子化は進み、多くのサービスが世に出ている。

しかし、スタンプラリーにかかるコストは思った以上に高額であることも多く、費用対効果を考えた時に導入を断念している団体も少なくないのが実情だ。

そこで、地域観光のIT導入ハードルを下げようとしているのが「RALLY(ラリー)」だ。高額な開発費などをかけずに、モバイルスタンプラリーを誰にでも簡単に作ることを実現したサービスとなっている。

スタンプラリーはテーマ性とゲーム要素を併せ持つことから、観光客がその地域を訪問するきっかけを作ることができる。観光事業によって集客を狙う地域には高い親和性を持つのだ。自治体にとっては悩みのタネである、アプリ開発費用などもRALLYのサービスを利用すれば、安価に抑えることが可能である。データ集計も簡単なため、ユーザーがどのような動きをしているのかを地域活性化のヒントにすることもできる。

2020年までには多言語化した訪日外国人向けサービスや、プログラミング教育での活用に向けた事業展開をRALLYは目指している。

Rally

スマホで演劇を見るアプリ「観劇三昧」
–株式会社ネクステージ

映画を自宅で視聴することはすでに当たり前のこととなっており、近年では定額動画配信サービスの広まりによって、その視聴形態は隙間時間にも楽しめるものとなっている。

しかし、それが演劇となるとどうだろうか?動画として提供される機会は決して多いとはいえないし、まずもって演劇をみたことがない人も多いことだろう。

そんな演劇が、生活に身近な社会を作るために運営されているのが「観劇三昧」である。今までになかった機会創出でもあり、ユーザーを獲得していくことで表現者の未来を作るための道としても期待されるサービスだ。

観劇三昧では月額980円の演劇配信サービスを実施しており、約240劇団800作品を現在配信中である。会員数は、現在約11万名だ。みた人に楽しんでもらえるようにと最前列観劇モード(好きな俳優・シーンを画面上でズームしたまま自由に追いかけることができる、舞台映像の新しい視聴スタイル)というものを実装しており、今後はVRにも進出を予定している。

システムデータベースを使ってユーザーの利用状況を把握しているため、劇団に対して新規顧客獲得に向けた有益な情報提供も可能となる。自社が持つ強みをどれだけITと縁遠い劇団に対して魅力的に見せられるかが、手腕の試されるところになってくるだろう。

観劇三昧

レジ待ちのない決済を、楽しく選ぶ購買体験「レジカート」
–株式会社Remmo / 粥川 直人

「大手スーパーやECに負けないサービス」を提供したいと考える実店舗を持つ小売に向けたサービス、それが「レジカート」だ。

そのビジョンは

というものだ。

レジとカートを一体化させた特殊なカートを買い物に使用することで、レジ待ちの削減と同時に、袋詰めがない買い物を実現しようとしている。心配される万引き対策も、重量管理システム(中国の企業との独占契約を行なっている)によってぬかりはないようだ。

リアル小売の強みは、消費者がお店にいくことで、初めて“欲しい”という感覚に気づくことがある点だとしており、このサービスでは消費者が足を運びやすいきっかけを作り出すことでリアルな場での小売に勝機を見出そうとしている。

またこのサービスには、メーカーが実店舗で商品をアピールするきっかけを提供する働きもある。自社販促が上手くいかないと感じているメーカーと、消費者の流入に繋げたいと考える小売の協力関係を築くことにも一役買ってくれるのではないだろうか。

レジカート

保証書をスマホで管理「Warrantee」
–株式会社Warrantee(ワランティ)

購入後の家電の使い方や、修理依頼から破棄までをクラウド上で一括して管理することを可能としたのが「Warrantee」だ。現在までに約65万件の家電のデータを持っており、利用者を支えている。

保証書や製品情報などをアプリで表示することができるため、今までのように説明書の管理など煩雑な作業から解放される。また、アプリから修理依頼や中古査定依頼まで完了することができるため、自宅の家電の購入から販売にいたるまでの全ステップをワンストップで行えるサービスといってよい。

2017年の秋には「Warrantee Now」という国内初のインステックサービスを運営している。Warrantee Nowは、“必要なモノに必要な時間分だけ保険をかける”サービスであり、1日わずか10円台から、アプリ経由で一眼レフなどの製品に対して24時間いつでも保険加入および解約が可能となっている。

詳細は下記記事でも紹介している
これからは保険も“オンデマンド”!1日19円から入れる若者向け保険アプリ

Warrantee

オープンイノベーション・ファーム「フィラメント」
–株式会社フィラメント / 角 勝

「フィラメント」は共創イベントの企画運営や共創ビジネスメディアをはじめ、ビジネスサイドのコンサルティングなどを行なっている。

フィラメントはこれまでにアイディアソン、ハッカソンを多数開催しており、その活動の一環として、新潟県燕(つばめ)市のものづくりの活性化を目的としたツバメハックを運営し、コミュニティーの形成やビジネス開発に向けたアクセラレーションプログラムを実施。

ものづくりの当事者や活動に興味を持つ人はもちろん、地域社会全体を巻き込むような仕組みを作ることで、社会全体をリフレームするような活動にも貢献することが目的の一つだ。

彼らは共創イベントを行い、さらにアクセラレーションプログラムとメディアの力によって、チェンジエージェント(社内の組織風土を変えることで社会全体をリフレームしていくこと)を目指し、「21世紀の生存戦略」として企業の変革を行おうとしている。

働き方改革が声高に叫ばれる今だからこそ、フィラメントの活動によって新しい組織風土の形が形成されていくことを期待したい。

フィラメント

これ以外にも以下の企業がピッチに参加した。

UFOを呼ぶバンド「エンバーン」(株式会社電通)
UFOを音楽と愛とユーモアによって呼ぶバンド。電通の日下氏を中心に運営されている。イベント時には多くの人数によってUFOを呼ぶというパフォーマンスを行なった。

オープンイノベーション・スペース「Osaka Mix Leap」(Yahoo!株式会社)
Yahoo!が大阪で運営するオープンイノベーション・スペースである。毎週木曜日には学生向けLT(ライトニングトーク)イベントを開催するなど、様々なイベントが実施されている。

世界最大のプロフェッショナルネットワーク「LinkedIn」(LinkedIn Inc.)
世界で使用されているビジネスソーシャルネットワーキングサイトツールの一つ。海外のビジネスマンの間では身近な交流のきっかけとしても活用されている。転職のマッチングと考えられることも多いが、ビジネス上での素晴らしい出会いを提供するプラットフォームであり、人脈作りや新たなビジネスチャンスを創造する場としてユーザーには使って欲しいとプレゼンを行なった。

起業家と投資家を繋ぐメディア「THE BRIDGE」(株式会社THE BRIDGE)
国内スタートアップを中心としたテクノロジー系ニュースを毎日配信するブログメディアである。海外に向けて日本のスタートアップ情報を発信するため、英語版の配信も行なっている。

一人ひとりの熱量が高まるピッチイベントの開催に期待!

今回のイベントは最初から最後まで、登壇者そして会場の熱量が高いイベントだった。NEW PITCH βは独自のシステムを利用してオーディエンスを巻き込んだが、今後も様々なイベントで巻き込み型のピッチが増えることが予想される。

このように起業家と観客が一体となれるピッチイベントでは、起業家のプレゼンやサービスに対する熱量を観客が“リアルなもの”として感じられる機会が増えるのではないだろうか。

企業側はそのフィードバックを意見や数値といった形で受け取ることで、事業のブラッシュアップや新しい気付きを実現できることだろう。今後のイベントの多様性と、今回参加した企業の成長と発展による、社会に対する新たなソリューションが生まれていくことに期待したい。

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