ここ数年の、ノートパソコン、スマートフォンやタブレット端末の普及により、私たちは動画を持ち歩くことができるようになった。

通勤通学中、食事中、待ち合わせの合間などの隙間時間に動画を視聴して過ごす人も多いことだろう。

さらに近年ではNetflix、Amazonプライム・ビデオ、Huluなどに代表されるサブスクリプションサービスが、続々とオリジナル作品の提供をしており、今後は一般家庭の中でもその視聴時間は益々増えることが予想される。

年々増え続ける有料動画配信サービスの利用者

株式会社ICT総研が行った「2017年 有料動画配信サービス利用動向に関する調査」によると、ここ数年で有料動画配信サービスの利用者は急速に増加している。

かつては、1本あたり数百円程度で視聴できるペイパービュー(PPV)方式が中心の動画配信サービスであったが、動画コンテンツを定額制で利用できるサブスクリプションサービスによって価格が下がったことにより、気軽にサービスを利用できるようになったことが要因といえるだろう。

同社が2017年11月に4,405人のインターネットユーザーに対して実施したアンケートによれば、何らかの有料動画配信サービスを利用している人は全体の15.2%であり、無料動画配信サービスを利用している人は66.6%であった。

現在、無料動画配信サービスしか利用していない人が有料サービスに移行する可能性は大いにあり、有料動画配信サービスの潜在市場は引き続き大きいものと想定される。

2015年末(12月末)時点の有料動画配信サービス利用者は980万人で、このうち定額制サービスの利用者数は全体の65%の640万人であったのに対し、2016年末には1,160万人の利用者のうち定額制サービス利用者は約77%の890万人へと急増し、さらに2017年末には約83%の1,190万人へと拡大している。

有料動画配信サービス利用者はさらに増え続け、2020年にはPPVも合わせて2,010万人、そのうち定額制サービスの利用者は約90%の1,810万人に達する見通しだとされており、定額制サービス市場は、拡大の一途をたどることが予想される。

多様化するサービス利用形態

アンケート調査の結果では、パソコン端末上で何かしらの動画配信サービスを利用していると回答したユーザーは67%で、昨年の74%から7ポイント低下したことがわかった。

一方、スマートフォン端末上で動画配信サービスを利用すると回答したスマートフォンユーザーは61%で、こちらは昨年の54%から7ポイント上昇している。これは、動画配信サービスの利用端末がパソコンからスマートフォンへと移行しつつあることを示している。

タブレット端末による利用率は26%、テレビによる利用率は13%と共に低いが、いずれも昨年の利用率を上回っており、映画などの動画配信コンテンツの拡充に伴い、大画面で楽しむ利用形態も徐々に進んでいることがうかがえる。

最も選ばれている定額動画配信サービス

定額動画配信サービスを利用していると回答した人の中で、主に利用する動画配信サービス名を聞いたところ、68%がAmazon プライム・ビデオを利用していると回答した。

プライム・ビデオは、年間3,900円(税込)で加入することができ、配送料無料や音楽コンテンツの聴き放題サービス(Prime Music)など、多様なサービスが含まれることからコストパフォーマンスが高いと認識され、利用者拡大につながっているものと思われる。

次いで利用者数が多かったのがHuluで、25%の人が利用していると回答した。Huluは、月額1,007円(税込)でHuluに登録されている全てのコンテンツが見放題となるサービスである。
日本ではAmazon プライム・ビデオやNetflixに先駆けて認知されていた動画配信サービスだったこともあり、その利用者数の確保ができていると予想される。

そして、話題になることも多いNetflixだが、その利用者数の割合は14%で、4番目という結果になっている。ただし、オリジナルコンテンツの充実などにより、今後ユーザー数の増加が期待される。

Netflixによる2017年の振り返り

このように様々な定額動画配信サービスが登場し、いつでもどこでも好きな動画を見ることができるようになったことにより、自身の大切な人と一緒にみていた作品なのに、そのパートナーに黙って作品の続きを見てしまった、といった経験はないだろうか。
そのような行動は「抜け駆けウォッチ」と呼ばれている。

Netflixの日本法人であるNetflix株式会社は、この度2017年を振り返り、最も「抜け駆けウォッチ」をされた作品のランキングを発表した。

日本で最も抜け駆けウォッチされた作品 TOP10

日本のNetflixメンバー(有料会員)は「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」や「フラーハウス」を含むコメディドラマの続きが気になる傾向にあるようだ。

1. ナルコス
2. テラスハウス Aloha State
3. ストレンジャー・シングス 未知の世界
4. 亜人
5. スター・トレック: ディスカバリー
6. 深夜食堂 – Tokyo Stories –
7. オレンジ・イズ・ニュー・ブラック
8. ベター・コール・ソウル
9. フラーハウス
10. 13の理由

パートナーなどにも黙って続きを見てしまうという一風変わった切り口のランキングだが、それほどに一度見始めてしまったら止まらないBinge-watching(イッキ見)が加速してしまう作品たちなのかもしれない。

日本で最も家族で観られた作品 TOP10

また、動画を大画面で楽しむ利用形態も増えていることから、家族で動画を視聴するNetflixメンバーも増えてきているという。

1. ストレンジャー・シングス 未知の世界
2. フラーハウス
3. スター・トレック: ディスカバリー
4. 13の理由
5. レモニー・スニケットの世にも不幸なできごと
6. アンという名の少女
7. シェフのテーブル
8. ミルドレッドの魔女学校
9. リバーデイル
10. グッド・プレイス

日本のNetflixメンバーは「フラーハウス」や「スター・トレック: ディスカバリー」を含むノスタルジーを掻き立てる作品を家族と視聴する傾向にあるようだ。

今後のサービスに期待すること

動画配信サービスが一般的なものとなった今、今後はそのコンテンツの拡充と、サービス内容のユーザビリティーの充実が行われていくことだろう。

現状では新作やレコメンドなどでのカテゴライズはされているものの、ランキング(Huluはあり)や年代別、出演者別などのユーザーがソートしたい形での提供はまだまだ満たされていないのではないだろうか。

ユーザーは見たい作品へのたどり着きやすさや、その時のユーザーの感情に響くような切り口のソート方法(例えば「悲しい時に元気をくれる」や、「ノスタルジックに浸りたい」など)などがあることを喜ぶことは多いだろう。それによって視聴回数や視聴時間の増加が見込まれるかもしれない。

今後各サービスがどのような戦略でユーザーの拡大と囲い込みを仕掛けてくるか、注目していきたい。

img; PR TIMES , ICT総研