自己実現を行うために多様な感性を持っているミレニアル世代にとって、今までの画一的な働き方は退屈なものに映っているのかもしれない。

企業側からみれば、今後の働き手となる若年層をどうやって取り入れていくのかという問題は大きなものでもあり、そのボリュームゾーンにあたるミレニアル世代はフレキシブルな働き方を求めている。

それを受けるとともに、働き方の変化を求める世間の潮流もあり、リモートワークのできる環境を整える企業も増え、それを実現するためのサービスも整い始めている。

株式会社リクルートマネジメントソリューションズは、リクルートホールディングスの主催する「2018年のトレンド予測」発表会にて、人材マネジメント領域における2018年予測「ボス充」について発表した。今回はこの予測を中心にミレニアル世代の職業意識を紹介していこう。

2018年のトレンドは「ボス充」

「ボス充」とは生活を楽しみ、社外活動が充実しているマネジャーのことを指す。

会社に限らず、趣味や学業、副業、家庭といったさまざまな場での活動を通して、多元的な自己を持つ若手世代の傾向は年々強まっている。このため、そのような生き方の指針として、すでに生活を楽しんでいる上司は、楽しんでいることをオープンにすることによって、若手の部下から信頼される傾向が見られた。

また、働き方改革における残業削減により、各社が「余剰の時間をどう使うのか」という新たな課題がある中で、社外での活動を充実させて仕事に還元していく「ボス充」の動きは、会社からも歓迎される傾向が見られた。

「ボス充」は、「社外経験は仕事でいかすことができる。一方で、仕事経験は社外でいかすことができる。」として、ワークとライフの相乗効果における実態を表しており、そのことが部下からの信頼につながるというこれからの従業員の考え方を反映させたトレンドと言えるとしている。

理想の上司とは人間の幅が広く、社外活動が充実している人

では部下から見た「ボス充」とは具体的にどのようなものなのか。

まず、「仕事人間」「会社人間」な上司よりも社外活動が充実しているほうが、人間的に魅力があると思うかという点について、20代一般社員と、40~50代管理職の回答を比較した。その結果、20代一般社員は40.2%、40~50代管理職は32.2%とミレニアル世代とそれ以上の世代での差異がみられた。

また、「理想的な上司(管理職)」を考えた際に、各項目において、A / Bのどちらの特徴を持つ人物が当てはまるか、という点について20代一般社員と、40~50代管理職の回答を比較した。

まずAが「人間的な幅が広い」、Bが「専門性が高い」という項目の場合、20代一般社員がA60.8%と高い結果に対し、40~50代管理職はBが54.8%という結果に。また、Aが「早く帰る」、Bが「遅くまで仕事」という項目の場合、20代一般社員がA75.3%、40~50代管理職もAが58.0%とBを上回る結果ではあったが、AとBの項目の数値の差はミレニアル世代と比べると明らかであった。

つまり、若い部下にとって、

・社外活動が充実している上司

が若い部下には魅力的に映っており、

・人間的な幅が広く
・早く帰る

といった人物が理想の上司像であることがわかった。

さらに、「社外活動での学びを、職場でも共有してほしいと思うか」という点について20代一般社員の回答を集計したところ、61.9%が肯定的な回答だったということも注目すべき点だろう。

ミレニアル世代は、仕事の関係上のみで生まれる画一的なアイディアやコミュニケーションだけではなく、外の世界から刺激を受けた「体験」や「学び」から生まれるビジネスコミュニケーションを好む傾向にあるのではないか。

「ボス充」が求められる理由とは

リクルートマネジメントソリューションズ「長時間労働実態調査」(2017 N=528名)では、今の50代、60代とは労働時間や働き方に関する考え方が違うという問いに対し、78.8%の若者が肯定的な回答を示した。

そこで、実際にどう違うのか聞いてみると、

  • 50代の人は仕事の比重が重すぎる
  • 自己実現の場は、仕事以外にもあるはず
  • 家族を大事にできない人が部下を大事にできないのでは?

などの声が聞かれた。

これらの回答をみると、前述のミレニアル世代の回答が裏付けられる。若者は「ボス充」を満たす条件を実行している上司を求めているのだろう。

企業側も求める「ボス充」

一方、企業側でも「ボス充」を求めていることもわかった。その理由は3つある。

  1. 働き方改革の促進による新たな課題
    働き方改革も第2フェーズへ。リクルートマネジメントソリューションズ「『働き方改革』の推進に関する実態調査 2017」では、労働時間の上限規制により、85.7%の企業が残業削減実施を行ったことが明らかになっている。これにより、「余剰の時間をどう使うのか」という新たな課題がある中で、社外での活動を充実させていく「ボス充」の動きは歓迎される傾向にある。
  2. 教育研修現場の活発化
    学びは、社内から社外へ移りつつあり、近年ではさまざまな社外研修が生まれ、企業が取り入れる動きも活発化している。その中でも特に、異業種、異文化、異次元の研修現場が求められている傾向にある。
  3. 世界の経営学者の論調
    ワーク・ライフ・エンリッチメント(充実)の研究が増加傾向にあり、2000年では1.4万件であった論文などの学術成果物が2015年では3.2万件に増加している。これらの傾向により、ワークとライフの相乗効果について、今後一層注目されることが期待されるとしている。

ミレニアル世代の職業意識は「柔軟に働きたい」

では、ボス充を求めるミレニアル世代の職業意識はどのようなものなのか。

デロイト・トウシュ・トーマツがミレニアル世代の動向を調査した「デロイト ミレニアル年次調査 2017」によると、ミレニアル世代の84%が「自分たちの所属する企業では何らかの形で柔軟な勤務形態を導入している」と回答しているという。

さらに、柔軟な働き方の影響を問うと、「生産性」「モチベーション」「健全な生活、健康、幸福度」などに影響していると8割前後が回答した。

「ボス充」に左右される柔軟な働き方

このように、ミレニアル世代は「柔軟な働き方」を求めている。仕事においてこれを大きく左右するのは、人間関係や組織風土だ。つまりどのような上司を持つか、企業にどんな働き方を求められ、企業がどんな働き方を提供できるのかも要因として大きいだろう。

かつて、高度成長期の日本は会社のために「個」を捨て、やみくもに働くことが美徳とされていた。しかし、現在の若者は会社員であっても「個」を重視する。それとともに、上司に対しても同じく「個」を重要視する人物を評価するようだ。

当たり前のことだが、時が経つにつれミレニアル世代が「上司」の立場になっていくことだろう。そうなってくると、今まで以上に「個」を尊重した働き方が当たり前になってくることは目に見えている。

ただし、ミレニアル世代とその上の世代の考え方に溝があるように、ミレニアル世代とZ世代の間にも溝があるかもしれないため、その時その時によって働きかたや、ビジネスコミュニケーションの形は変化していくのだろう。

重要なのは、その変化に気づき、「柔軟な」思考と働き方によって時代にマッチした動きを取れる人物や企業となっていけるかなのだろう。

img; PR TIMES