フリーランスたちを孤独から救う?WeWorkがジムを開設する意義は思ったより大切なのだ

「ただ生きるためではなく、豊かな人生を送るために働ける世界を創造する」

2017年11月現在、世界16カ国56都市に155カ所以上もの拠点を持つコワーキングスペース『WeWork(ウィーワーク)』のミッションだ。

世界15万人もの会員が利用する各拠点は、設備の整った快適なオフィスであり、会員同士のコミュニティを育む場としても機能している。会員が情報交換を行うミートアップやネットワーキングイベントに加え、瞑想やキックボクシングなどのセッションも盛んだ。

冒頭のミッションに従い、WeWorkはコワーキングスペースを軸に「豊かな人生」を支える領域で事業を広げてきた。2016年にはニューヨーク本社の近くに賃貸アパートメント『WeLive』を建設。家具やランドリールーム、ヨガスタジオも完備された施設内では入居者同士の交流も頻繁に行われている。さらに、2018年には本社内に私立の小学校『WeGrow』を開設予定だという。

WeWorkが手がけるフィットネスジム『Rise by We』

WeWorkの進出は仕事場、家、学校に留まらない。先日、同社はマンハッタンの金融街にフィットネスジム『Rise by We』をオープンした。

Rise by Weは、有酸素運動や筋トレ用マシン、ヨガスペース、格闘技トレーニングの部屋も完備した本格的なフィットネス施設だ。サウナやマッサージを堪能できるスパや、休憩用のカフェスペースも併設されている。

現在の利用料金は月額180ドルだが、近々250ドルに上がる予定だという。コワーキングスペースの会員でなくても登録でき、WeWork会員限定サービスの一部を特典として受けられる。

Rise by Weは身体を鍛えるだけでなく「自分と対話する機会」と「社会的な繋がり」を提供する場と位置づけられている

とくに後者はWeWorkが当初から重要視してきたコンセプトだ。共同設立者Adam Neuman氏は2015年のインタビューで、「好きなことに取り組み、刺激を与え合うクリエイターのコミュニティを生む場づくりが自分たちの役割だ」と語っている。

WeWorkのコミュニティ(彼らは「We Community」と呼ぶ)価値を高める上で、コワーキングスペースの会員以外も出入りさせるメリットは大きいだろう。これまでコワーキングスペースに馴染みのない層との接点を増やし、彼らの重要視する「コミュニティ間の交流」を促せるからだ。


2015年に登壇したカンファレンスでコミュニティーの重要性を繰り返し説くAdam Neuman氏

WeWorkのコミュニティを充実させるアプリの役割

WeWorkは今年1月に、コワーキングスペースで行われるフィットネスクラスを予約できるアプリ「WeWork Wellness」をローンチした。クラスの内容はヨガやキックボクシング、瞑想など多種多様。WeWorkの利用者ではなくとも登録できる。

これまでWeWorkは施設ごとにアプリを提供し、コミュニケーションの活性化に取り組んできた。コワーキングスペース会員用アプリでは、ニュースフィードやイベントへの参加、求人用の掲示板を提供している。WeLiveの入居者用アプリにはアパート内でイベントを企画し、参加を呼びかけるためのチャット機能が搭載された。

前述のNeuman氏は2016年のインタビューにおいて、「WeWorkはオフィスではなくコミュニティ、ネットワークだ」と強調した。その顕著な例として「世界中の利用者と繋がれるアプリ」を挙げている。

アプリが重要な施策として位置付けられている一方、WeWork Wellnessの開発はフィットネス事業者向けにアプリ制作のクラウドサービスを提供する『Mindbody』が担ってきた。今後。フィットネス事業が拡大すれば、WeWork Wellnessのアプリも自社開発に移行していくのかもしれない。

WeWorkでヴァイス・チェアマンを務めるMichael Gross氏は「いずれは暮らす場所、運動する場所、仕事終わりに友達と飲みに集まる場所まで網羅したい」と展望を語っている。しばらくはWeWorkのコミュニティー拡大に向けた動きは続きそうだ。

その波は日本にも訪れようとしている。今年ソフトバンクとの合弁で日本法人を立ち上げ、2018年の本格始動に向けて準備中だ。7月に開かれた東京のオープニングイベントは開場前から行列ができ、注目度の高さが伺えた。

コミュニティーによって「豊かな人生のために働く」を実現しようとする彼らは、働き方改革の最中にある日本にどのような変化をもたらすだろうか。本格展開が待ち遠しい。

img:WeWork

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