価格や機能では戦わない。海外人気ブランドたちが提示する新たな商品訴求の戦略

ミレニアルズの消費行動が変わってきている。商品の価格や機能だけで勝負をしても、そうそう買ってくれない時代になっているのだ。

例えば、60%のミレニアルズはブランドロイヤリティを感じるものを買い、75%は商品購入を通じて社会に対して何らかの貢献するものを積極的に買いたいと感じているという。

価格や機能以外の価値も備えていなければ、ミレニアルズには受け入れられない。今回は製品やサービス訴求をするために価格や機能で勝負をしない企業を紹介していきたい。

Airbnbは文化交流を、Hipcampは環境保全を軸にコミュニティ形成

最初に紹介する企業はキャンプ版Airbnb「Hipcamp(ヒップキャンプ)」だ。「Hipcamp」はキャンプ地を簡単に予約できるサービス。

個人で山や牧場を持っているホストたちがリスティングされており、ゲストは気に入ったキャンプ地を持っているホストに連絡して、予約する。

特徴的なのは、ホスト数を増やすための施策だ。「Hipcamp」ではボランティアスタッフを募り、整備されていない土地を持っているホスト候補の場所へ送り出し、無料で環境整備の仕事を請け負う。土地はあるけれど整備されていないから使えない、というホストの課題を解決することでホスト数を増やしている。

なぜ、ボランティアで土地の整備を行うことができているのだろうか。アメリカでは環境保全意識の高い若い世代も多く、荒れ果てた環境を整備したいと行動する人たちが積極的に「Hipcamp」のボランティアとして参加しているという。

さらに、彼らはただ土地の整備をするだけではない。ボランティアは、自分たちが参加した「Hipcamp」のコミュニティに対して愛着が湧き、周りの友達を誘って積極的に利用してくれるコアファンになるわけだ。

Airbnbが文化交流を軸に作られたコミュニティを持つのならば、「Hipcamp」は環境保全の輪を皮切りに強いコミュニティを発生させている。

単純なマーケットプレイス運用を行なっているのではなく、「キャンプ」というキーワードを基に、人と人を繋いでいる点は他社と大きく異なるユニークポイントだ。

アクティビティ体験を通じて、ミレニアルズはブランドの世界観に浸る

「Hipcamp」と似たように、環境を軸にコミュニティを作っている企業に「Cotopaxi (コトパクシ)」がいる。

「Cotopaxi」はアウトドア用のバッグやジャケットを作っているスタートアップだ。L.L.BeanやPatagoniaに代表される競合他社と違い実店舗を持たないが、オンラインだけで商品訴求をするわけではない。

彼らは、自社イベント「24時間アドベンチャーレース」を通じて、ターゲットであるミレニアルズを虜にしている。

イベントに申し込んだ人は、5人ほどのチームの中にランダムで編成される。彼らは専用アプリをダウンロードした後、アプリ内に表示されている幾つかのアウトドア・アクティビティをチームで選び、実行していく。

各アクティビティには難易度によってポイントが付けられており、難易度が高いほど獲得できるポイントも上がる。ポイントの高いアクティビティを24時間以内に仲間とどれだけ回れたかを競うポイント獲得レースだ。

参加者は全員「Cotopaxi」の製品を支給され、同社が体現したいアウトドアの世界観を体験させるレースでもある。商品訴求を価格や質ではなく、オンラインでも実店舗でも味わえない体験を通じた売り込みや、コミュニティを作る仕組みを通じて気に入ってもらうのだ。

「Cotopaxi」は世界の貧困対策や環境保全をミッションに掲げており、収益の2%を貧困国へ還元している。「Gear For Good(ギア・フォー・グッド)」と呼んでいる取り組みに顧客を参加させ「Cotopaxi」の伝えたいストーリーを体感してもらうきっかけにもなる。

顧客が「Cotopaxi」の目指す社会貢献の世界観に浸ることで共感が生まれ、ロイヤリティが発生し、LTV(顧客生涯価値)が上がる仕組みだ。

社会貢献に重きを置いたスタートアップは投資家から敬遠されがちだが、体験を通じたコミュニティ形成に魅力を感じ、2,200万ドルもの資金を調達した点が、「Cotopaxi」のビジネスが上手くいっている証拠だ。

体験とストーリー、ミレニアルズへ訴求するための非言語マーケティング

「商品はどのような経緯や目的で消費者に届くのか」ーー。そのストーリーを伝えることでミレニアルズに対して強いロイヤリティを発生させる。これが21世紀の新たな購買動機と言えるかもしれない。

小売市場にも同じく価格や機能で勝負しないスタートアップがいる。「Everlane(エバーレーン)」はニューヨークとサンフランシスコに店舗を持つ新興ファッションブランド。

中間業者を省き、自社企画の商品をメーカー直送で販売するD2Cモデルの代表企業として語られる「Everlane」は価格の内訳を公開している。

販売する洋服の原価から輸送コストまで、価格を透明化させることで顧客に安心感と納得感を提供しているのだ。

このようにスペースマーケットからアパレルまで、ミレニアルズへの商品提案は体験やストーリー、コミュニティといった新たな価値の訴求へ移行しつつあると言えるだろう。

Img: UBC Learning Commons, Hipcamp, Cotopaxi, Everlane

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