スマートスピーカー市場が日本でも盛況となってきており、照明の切り替えや鍵の操作など、音声でおこなうことができるスマートハウス化も着実に現実のものとして近づいてきている。
これからの注文住宅をはじめ、建築業界ではこのようなテクノロジーを既存の住宅に付加価値を与える要素として積極的に取り入れられていくことが予想される。
では現在、注文住宅に関する消費者の考え方はどうなっているのか。消費者の動向をアンケート調査から読み解いていきたい。
80%を超える高い新築率と一戸建てへの憧れ
株式会社リクルート住まいカンパニーは、2017年9月に“1年以内に一戸建ての建築をした人”、“今後2年以内に一戸建ての建築を検討している人”を対象に注文住宅に対する意識や行動を調査した。
ここでは、結果が公開された8つの項目について紹介していく。
まず建築費用だが、全国平均は2,775万円だった。前年より24万円減少しているものの、その金額はおおむね横ばいとなっている。首都圏だけでみると、建築費用は平均3,164万円と全国平均よりも約409万円高い。前年より17万円減少しているものの、こちらも横ばいである。なお、いずれの金額にも土地代は含まれていない。
次に新規建築(以下:新築)と建て替えの割合を全国と首都圏別にみていく。まず全国的にみると、新築の割合が85.7%、建て替えの割合が13.7%だった。首都圏は新築の割合が81.8%で、建て替えの割合は17.4%である。なお、全国・首都圏ともに新築の割合が上昇している。
新築を検討している人が家づくりを考えたきっかけで一番多かった理由は、「いつかは一戸建てに住みたいと思っていた」だった。この理由は全体の約3割(28.3%)が回答している。また、「現在の家賃が高い(もったいない)」と答えた人も全体の約2割(19.2%)を占めていた。
実際に依頼先を検討するときには、住宅展示場(モデルハウス)を約3.1社訪問している傾向にある。また、全体の9割近くが5社ほどの企業から依頼先を検討しているのが現状だ。
また将来的な消費税の増税にともない、全体の約7割(71.9%)以上が増税前に建築を間に合わせたいと考えていることが回答から判明した。なお、「10%の消費税増税に伴う住宅に関する経過措置」については約半数(46.9%)の人たちが全く知らない状況である。さらに内容までを理解しているのは14.7%と全体の2割にも満たない。
環境にも人にも優しい家が求められる傾向
ここからは、住宅における機能や設備に関する結果を紹介する。
まず、ZEH(ゼッチ)に対する調査結果から説明する。ZEHというのは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略だ。住宅の性能アップによってエネルギー消費を抑え、そして自分たちでエネルギーを作り出すことにより、年間のエネルギーをプラスマイナスゼロにしようという考え方である。
一戸建てを検討している人がこのZEHを認知している割合は64.0%だった。なお、この1年で一戸建てを建てた人の中でZEHを導入したのは17.7%、2年連続で導入率は上昇傾向にある。国内でもエネルギー問題に対して、意識が高まっている傾向にあるのではないだろうか。
次に省エネ基準適合住宅の義務化とBELSの認知についてみていこう。2020年の省エネ基準適合住宅の義務化の名称認知率は60.7%に対して、内容認知率は30.0%である。 また、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の名称認知率は51.2%に対して、内容認知率は24.0%だった。どちらも名称認知に対して、内容認知の割合は半分以下という結果である。
最後に、宅配ボックスに関する設置意向とその理由について紹介する。
昨今、ECの爆発的な普及によって荷物量や再配達件数が増加している。宅配業界はもちろん、不在配達などの観点からも消費者側としては無視できない問題となってきている。
宅配便に対する消費者の意識的な変化もあってか、一戸建てを検討している人の中でも約7割近くの67.4%が「新しい家には宅配ボックスを置きたい」と検討している結果となった。なお、設置理由の中で一番多かったのは、「配達の時間を気にすることなく外出できるから」だった。
宅配便というのは、便利なサービスである反面、届ける宅配作業員にも、受け取る住民にも時間的な縛りが負担となっているのが現状だ。
米国ではAmazonが宅配ボックス設置サービス「Hub」をリリースしている。この宅配ボックスはAmazon以外の商品にも使用できることから、宅配作業員にも、消費者にも双方に優しいシステムといえる。国内においても、一日でも早く同様のサービスが登場することが望ましいのはいうまでもないだろう。
時代と技術に合わせて進化していく住宅
シェアハウスやタイニーハウスなど、「住」の形は様々な変化を遂げている。特に、ものに対する消費に強い魅力を感じないミレニアルズ世代以下では、家を買うという行為自体にメリットを感じていない人も多いかもしれない。
しかし、住宅事情も建築業界も時代と技術に併せて日々進歩しているのは事実だ。地球環境にも、働く人にも優しい家にリプレイスするという経験に価値を見出せるのは、今を生きるミレニアルズ世代にしかできないことではないだろうか。