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ニューヨーク州、経済活性化取り組みの一環で「ドローン・コリドー」設置
ロボティクスや人工知能における研究開発で世界をリードする米国。産業ドローンの発展・普及でも、その役割に期待が寄せられているが、これまでは法規制の整備不足等の理由で真価が発揮できていなかった。
しかし、ここに来て状況は少しずつ好転しているように見える。ニューヨーク州ではこのほど、ドローンの研究開発に特化した「ドローン・コリドー」の設置を発表。
ニューヨークのグリフィス国際空港から西に約80キロメートルに及ぶ地帯を、ドローン研究開発向けに整備する予定だ。これまで米国内で難しかった目視外飛行を許可することで、多くの人工知能やロボティクス、そしてドローン関連のテクノロジー企業を誘致する狙いがある。
この「ドローン・コリドー」プロジェクトは、2015年に発表された総額5億ドル(約550億円)の予算が投じられる、ニューヨーク中部活性化イニシアチブの一環で実施されるもの。コリドープロジェクトには約3000万ドル(約33億円)の予算が配分されるという。
コリドーにはセンサーやレーダーが設置され、試験飛行する企業が研究開発に向けてデータを取得しやすい環境を整える計画だという。
2018年第3四半期から本格的な施工が開始される予定だが、2017年9月にはすでにコリドーの一部で第1段階利用が開始されている。
ニューヨークのドローン・コリドー第1段階利用(syracuse.comYouTubeチャンネル動画より)
グリフィス国際空港でセンサーやレーダーを運用するのは、ニューヨークを拠点とするドローン業界団体NUAIRだ。NUAIRは、ニューヨーク、マサチューセッツ、ミシガン領域における無人機システムの運用・監督を担っている。
グリフィス国際空港は、米連邦航空局(FAA)が指定する全米に7つあるドローン試験飛行場のうちの1つ。ニューヨークのほかには、バージニア、ノースダコタ、ニューメキシコ、テキサス、ネバダ、アラスカにある。
現在はまだFAAの目視飛行規定により、コリドーでは半径5マイル(約8キロメートル)の飛行に限定されるが、ルール整備が進められており目視外飛行が許可される日も近いという。
これまで米国では目視外飛行が難しく、アマゾンやウォルマートなどが計画しているドローンデリバリー・プロジェクトの大きな阻害要因となってきた。しかし、その状況が一変する可能性が出てきたのだ。
ニューヨークだけでない、連邦政府も本格始動
ニューヨークの「ドローン・コリドー」など、州レベルでのドローン普及の取り組みが進むなかで、連邦レベルでもドローン活用を加速させようとする動きがある。
米国では州レベルと連邦レベルで、それぞれドローン関連の規制が異なる場合があり、このことがドローン開発・普及を拒む壁となってきた。
たとえば、FAAの許可を得て家屋被害状況を空撮するときに、住人の許可なく近隣の家が写ってしまうと、州政府のプライバシー保護条例に違反してしまうなどだ。
こうした課題により、米国内ではドローンテスト飛行が難しく、アマゾンなどは比較的規制の緩い英国やオーストラリアなどで試験を実施せざるを得ない状況が続いていた。
こうした課題を解決するために連邦政府はこのほど、これらの齟齬を取り払い、連邦政府、州政府、部族政府、企業などが連携してドローン活用を進めるためのプログラムを明らかにした。
このプログラムをもとに、夜間飛行や目視外飛行について規制緩和を進める計画だ。詳細はまだ明らかにされていないが、今後3年ほどを目処に連携できる環境を整備していく方針という。
ドローン市場の活性化に寄与する法整備
このように現在、米国では遅れを取り戻すべく、国内における産業ドローン開発を法規制の面からバックアップする動きが活発化している。
夜間飛行や目視外飛行の研究開発がしやすい環境が整えば、海外ドローン企業の誘致や国内ドローン企業の事業化スピードアップなど、市場の活性化が見込まれる。
アマゾン、グーグル、ウーバーなどが計画している注目のドローンプロジェクトが実用化される日もそう遠くはないのかもしれない。