選択肢が多いと、ついつい悩んでしまう。安いものにしようか、高性能なものにしようか、判断基準はさまざまだ。しかし、迷ったときの指針としては、コストパフォーマンス(コスパ)で判断することが多いだろう。

あらゆる情報が手に入る環境にいる僕たちは、フラットで合理的な判断を好む。本質的な価値や目的に対して、コスパが良い選択をしたい。必要以上に素材が良い高い服を着るよりも、それなりの品質で低価格のファストファッションを選択することなどもその一例だ。

そんな中、お酒を飲んで酔うことも、コスパ重視で選ばれることが増えるかもしれない。酒類市場に、高アルコール商品が続々と投入されている。

高アルコールRTDは成長市場

調査(インテージ:SRI拡大推計-全国)によると、高アルコール/ストロングRTD市場は2013年から2016年にかけて3年連続で2ケタ成長している。ここでの高アルコール/ストロングの基準はALC.7%以上をさしている。RTDはReady to drinkの略語で、「割ったり混ぜたりする必要がなく、栓をあけてすぐ飲めるアルコール飲料」をさす。缶チューハイなどをイメージしてもらえるとよいだろう。

また、同調査によるとRTD市場の容量シェアでは、高アルコール/ストロングRTDが56%のシェアまで伸長した。高アルコールへのニーズが高まっていることがうかがえる。この数年でじわじわと盛り上がりを見せる高アルコールRTD市場だが、この市場に合わせた商品が続々と登場している。

2017年9月には、キリンからALC.9%の 氷結(R)ストロング 巨峰が発売。また、チョーヤ梅酒からはALC.7%のザ・チョーヤ ハイボールが発売された。そして、この高アルコール領域のトレンドは広がりをみせており、ビール類カテゴリからも高アルコール商品が登場している。

2017年7月にサントリーからALC.7%の新ジャンルアルコール飲料、頂(いただき)が発売された。これまでビールや発泡酒はALC.4.5%~5%程度が多かったが、ALC.7%のビール類が登場した点が話題を呼んだ。2017年10月には、サントリーとセブンホールディングスの共同開発でザ・ブリュー・ストロングが発売されており、こちらもALC.7%となっている。

そして昨日11月20日、キリンからALC.7%の新商品「のどごしSTRONG」が発表された(2018年1月23日より発売)。ビール類市場への高アルコール商品投入の背景をキリンビール株式会社マーケティング部長の山形光晴氏が語った。

ビール類でもしっかりと酔いたいというニーズ

山形氏「いろいろなアンケートや調査を行いました。少しずつですが、ビール類でもしっかりと酔いたいというニーズが増加傾向にあることがわかりました。その背景の声としては、1本の満足度が高いものが飲みたい、ビールは好きだけど5%ではもの足りない、1缶でもしっかりと酔いたい、などの意見がありました」

同社の調査によりユーザーニーズがあると判断した。さらに山形氏は市場についても説明した。

山形氏「RTD市場が約3000億円に対して、ビール類市場は約1.8兆円と、約6倍の大きさになっています。しかし、ビール類市場におけるALC.7%以上のシェアは、1%未満となっています。こういったニーズがあるところに取り組むことは、我々としてチャンスがあるのではないかと思いました。ビール類市場に、ストロングという領域を切り拓くために意図をもって商品を発売し、プロモーションをしかけていきたいと思います」

ビール類市場でのストロング領域開拓に向けた商品ということだ。しかし、商品開発については難しい点もあったようだ。高アルコール類でも“ビールとしてのうまさ”が期待されている点である。

山形氏「単にアルコールを強めただけでは味が落ちてしまいます。アルコールが高くなっても、ビールのおいしい味は残さなくてはなりません。そこで、高発酵技術を駆使することで、キレのある後味を残しつつ、高アルコールを実現しました」

コスパの良いビールはトレンドとなるか

お酒が好きな人にとって、一缶で酔いを感じることができるのは、価格的にも時間的にもコスパが良く、経済的だ。ここ数年の高アルコール市場の成長は、コスパ重視の選択がお酒に対しても向けられてきたからであろう。

コスパ重視の選択が増えるなか、RTDに続きビール類にも高アルコールという新たな選択肢が増えた。このビール類市場においても、高アルコールのトレンドがやってくるかもしれない。