なぜ「Slack」はここまで評価される?その強さを示す7つの事実

ほんの数年前までは、仕事に関するオンラインコミュニケーションツールといえばメール一択だった。

それがプライベートでLINEのようなメッセンジャーが爆発的に普及することにともなって、仕事の現場でも「ビジネスメッセンジャーツール」がメールを代替する手段として、年々その存在感を増している。

急拡大するこの市場には複数の企業が参入し、しのぎを削っているが、中でもひときわ目立つのが「Slack」を提供するSlack Technologiesだろう。

毎日600万人以上が使うビジネスチャット、Slack

もともと、開発会社が自社内で使うためのツールとして、Slackは開発された。2013年に正式なサービスとして外部へ解放されると急激にユーザー数を増やし、現在では毎日600万人以上が使うビジネスチャットツールへと成長を遂げた。

全ユーザーによる年間の課金額は2億ドルを超え、収益の面でもスタートアップでは稀に見る勢いで成長を続けている。2017年の9月にはソフトバンクが運営するSoftbank Vision Fundなどから総額2億5000万ドル(280億円近く)を調達し、大きな話題となった。

なぜSlackはそこまで注目を集めるのか? ここからはその要因といえるSlackの強さを示す事実を紹介しよう。

1. Fortune 100企業の43%が活用

50,000社以上が有料で活用しているSlack。その中にはIBMやOracleをはじめ、Fortune100にランクインする企業のうち43社も含まれているという。

Slackは今年に入って大企業をターゲットとした「Enterprise Grid」をローンチ。セキュリティ面やコンプライアンス面の強化に加え、部門やプロジェクトを超えた共通チャンネルや異なる組織間でのダイレクトメッセージ機能を提供している。

2. Amazonが過去最大規模の90億ドルで買収を検討

今年の6月にAmazonがSlackの買収を検討しているというBloombergの報道が話題を呼んだ。提示された金額は約90億ドル。

それまでAmazonにとって最大の買収はZapposに投じた12億ドルであったため、実現していればそれを大きく上回るAmazon史上最大の買収となる可能性もあった。

結果的には実現に至らず、偶然なのかBloombergの報道の翌日にAmazonはWhole Foodsを137億ドルで買収したことを明かした。

3. 創業者は過去にFlickrを手がけたシリアルアントレプレナー

Slackの創業者であるStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏は2004年に写真共有サービス「Flickr」を生み出した人物。2005年にFlickrをYahoo!に売却した後、再度起業している。

4. 優秀な人材を登用したTech企業ランキングで21位、前年度からの上昇率では1位

AIを用いて企業ごとの給料や職種のトレンドを分析するPaysaは、過去15年以上に渡って約19.8万社の転職情報や求人情報を元に独自のCompany Rankを公表している。このスコアは自社より高いランクの企業から人材を登用できればランクが上がり、逆の場合はダウンする仕組みだ。

上位にはUberやAirbnbといった今をときめく企業や、GoogleやFacebookといった大手IT企業が並ぶ中でSlackは21位にランクイン。2016年4月から1年間のスコアの上昇率に限っては1位となっている。これはすなわち、Slackがこの1年でトップクラスのTech企業から優秀な人材を多く採用できていることを示している。

5. Forbesの「Cloud 100」では2016年にDropboxを抑えて1位

Forbesが売上や資金調達額といった経営指標なども踏まえ、有望なクラウド分野の非上場企業を選定する「Cloud 100」。Slackは初回となる2016年にDropboxなどを抑えて1位を獲得。2回目となる2017年にもStripeやDropboxに次ぐ3位にランクインしている。

6. 著名VCと共同でファンドを設立、32社に投資

2015年にはAccel PartnersやAndreessen Horowitzをはじめとする有力VCと共同で8,000万ドル規模のファンド「Slack Fund」を設立した。Slackと統合できるアプリを中心にこれまで32社へ投資を実行。

1から自社で複数のサービスを立ち上げるのではなく、関連する企業に出資をすることでより手早くSlack経済圏を広げようという戦略だ。

7. Slackの導入支援を専門に行うコンサルティング会社がある

たとえば世界最大のクラウド型CRMツールSalesforceなどの場合、同製品の導入や運用を支援するパートナー企業が存在する。Slackはリリースからわずか4年と新しいアプリではあるが、すでに米国ではSlackの導入支援を専門に行うコンサルティング会社も登場している。

経済圏を広げるSlackはビジネスメッセンジャーの覇権を握るか

サービス開始から約4年、驚くべきスピードで成長を遂げてきたSlack。Slack Fundやサードパーティアプリのプラットフォーム「App Directory」を通して、その経済圏は今後もさらに広がっていくだろう。

とはいえビジネスメッセンジャー市場は強力なライバルも多い。そのひとつが今年3月に正式にリリースされた「Microsoft Teams」だ。発表時からSlack対抗として注目を集めたが、Office 365アプリとの統合を武器に今後シェアを取りに行く。

同様にGoogleも3月に「Hangouts Chat」を発表し、企業向けメッセンジャーツールの本格展開を始めた。若干デザイン面や機能面で違いはあれど、Facebookの「Work Place」もライバルと言える。

SlackはIT界の巨人たちとの戦いを制し、覇権を握ることができるのか。今後もビジネスメッセンジャー市場の戦いから目が離せない。

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