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「コールセンター」と言えば、大規模な空間にオペレーターが並び、ひっきりなしにかかってくる電話に出て、ずっと顧客対応を行う空間というイメージがある。
そんなコールセンターも、そろそろアップデートされそうだ。Eコマースの巨人、Amazonがコールセンターの変革に乗り出した。
とはいえ、Amazonが土地を買って、大量の人員を雇って、コールセンター開設を代行するわけではない。コールセンターの機能をクラウド化するサービス「Amazon Connect」をリリースしたのだ。
コールセンターにかけるコストを最小限に抑える「Amazon Connect」
Amazonはクラウドコンピューティングサービス「AWS(Amazon Web Service)」の一環として、コールセンター向けのソリューション「Amazon Connect」の提供を開始した。
これまでコールセンターを設置するためには、多額な費用をかけて、複雑なインフラを構築する必要があった。だが、Amazon Connectがあれば、コールセンターの機能をクラウド化することで、物理的な設備投資は最小限で済む。
同サービスは、着信呼自動分配(ACD)や自動音声応答(IVR)の機能を活用することで、オペレーターのコスト削減も目指す。
Amazonが提供する文章読み上げサービス「Amazon Polly」や、Chatbot構築サービス「Amazon Lex」と連携することで、自動応答システムの構築も可能だ。
Amazon Connectは従量課金制のため、小規模事業者や期間限定での利用といったニーズに応えてくれる。従来型のコールセンターのシステムに欠けていた「柔軟性」が、コールセンター導入の敷居を下げてくれる。
人工知能による自動応答で、コールセンター業務の効率化を目指す
Amazon Connectを筆頭に、コールセンターのあり方を変える動きは始まっている。中でも、保険や銀行などの金融業界では、先進的な取り組みが行われている。
損保ジャパン日本興亜は、コールセンターに音声認識技術と深層学習機能を備えた人工知能を導入。オペレーターと顧客の会話を分析し、問い合わせへ最適な回答の候補をパソコンに示すシステムを取り入れている。
これまでは問い合わせで不明な点があると、マニュアルやパンフレットなどを調べていたが、システムを導入したことで1人当たり平均15~20分程度の応対時間を2~3分短縮できているそうだ。
韓国のAIA生命では、韓国保険業界としては初めて、IBMの人工知能「ワトソン」をベースに韓国語を取得したAIコールセンタースタッフ「AIA ON」を導入した。
顧客の問い合わせに対してチャット形式で答えるタイプと、電話形式で問い合わせに対応したり、新たに発売された保険の説明や営業を行ったりするタイプがあるという。
悪質なクレーマーによる精神的なストレスから、離職率が高いコールセンター業界に対して、ひとつのソリューションを提供できるかもしれない。
Amazon Connectはどのように進化していくか
コールセンターのサービスを単体で提供するプレイヤーよりも、Amazonのほうが新しい機能の実装やアップデートに取り組むインセンティブが働きやすい。
Amazonは自社で開発し、使用しているツールを外部に公開することで、自社の事業の改善や効率化を図ってきた。AWSは元々、社内利用のために開発していたサービスを外部に公開したものだ。
市場の競争にさらされることで、プロダクトが改善される。Amazon Connectも、Amazonが自社の顧客対応のために構築したコールセンターシステムを外部向けに提供したものだと考えられる。
Amazon Connectがユーザーからのフィードバックを受けて改善されることでサービスの質は向上し、Amazon内のコールセンターに実装される新機能なども、Amazon Connectに反映されやすい構造になるだろう。
人工知能やChatbotの導入などで、コールセンターをより良いものに変えていく動きは始まっている。Amazonが動くことで、その動きはさらに加速していくことになりそうだ。
img: Amazon Connect, Mike Seyfang, IBM